表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/30

9 明るい未来計画ー聖騎士1

 男尊女卑で腹立たしい内容がありますが、これは異世界の話だからと思って下さると助かります。

  

 私達の、暗い未来を明るい未来へ変えるためのやり直し計画は、思いの外着々と進んだ。

 というのも、ケビン様以外にも強力な助っ人を得られたからである。

 なんと、カナディーク王子の護衛であるロッド卿と側近のアダムズ様のお二人には、とてつもなく素晴らしい人脈があったのだ。

 

 

 ロッド卿はヘンドリックス侯爵のご長男だ。そしてヘンドリックス家は代々騎士団長を務める、王家一の忠臣と呼ばれている名家だった。

 

 こう言ってはなんだが、彼の生まれからすると、本来ならば臣下に下られる予定の第三王子ではなく、王太子の護衛に付くべき方だったと思う。しかし、生まれ年の巡り合せが悪くてこうなったらしい。

 

 でもまあ、カナディーク王子や私達にとっては幸運だった。

 そしてこれは未来を予測できるからこそ言えるのだが、ロッド卿にとってもラッキーだったのではないかと思う。

 

 元々の人生とやり直しの人生のその両方とも、ロッド卿の運命は、私達ほどではないにしても結構悲惨なものだったらしいので。主に女性関係が……

 

 カナディーク王子はロッド卿と想い人との未来について、ずっと思わせぶりな態度をとって誤魔化していた。

 何故そんな意地悪をするのかと尋ねた私に、王子がこっそりロッド卿の凄まじい人生を教えてくれた。そしてその話を聞いて、私は酷く陰鬱な気分になった。

 

 その後王子と私は自分達だけではなく、ロッド卿の未来も明るいものにしようと、密かに誓い合ったのだった。 

 

 

 このロッド卿は、確か私達の元々の人生においては、学園卒業時には既に近衛騎士になっていて、間もなく副団長になるところだった。

 

 そして最初のやり直しの人生では、私の死後にちゃんとその役職に就いたし、私生活は色々と大変だったみたいだけれど、最終的には父親の跡を継いで立派な騎士団長になっていたようだ。

 以前の私はあまり彼とは接点がなかったので、今回初めて彼の詳しい事情を聞いたことになる。ただし彼の兄弟のことならよく知っている。

 

 というのも、ロッド卿の弟はカナディーク王子の同級生で、護衛もしていたオッド様だ。だから元々の人生では、彼はいつも私の近くにいたからだ。

 そして一番上の姉は聖騎士であるニコルお姉様だ。

 

 ニコルお姉様……

 

 ロッド卿の姉のニコル=ヘンドリックス様は、王城の中にある聖堂の司祭長から直々に任命された聖騎士だ。

 ドレス姿は目が眩むほど華やかで美しい。しかし、王妃殿下の護衛として男装しているその姿もまた、それはそれは凛々しくて気品に溢れ、惚れ惚れするほど格好がいいのだ。

 

『ニコルお姉様』

 

 彼女の聖騎士姿を見たことがある者は、自分の年齢や身分など関係なく、ニコル様をそう呼んでいた。全く面識がなくても。

 彼女は当然男性におもてになるが、それ以上に女性からは未婚既婚関係無しに人気が高かった。

 


 この国の貴族達はほとんど政略結婚である。そして男性に限り好きな相手を側室や愛人にすることができた。

 しかし、女性にはもちろんそんなことは許されない。心の中だけで誰かに恋慕していたとしても、その思いを表情に出してしまったら、ふしだらと罵られてしまう。完全な男尊女卑の社会だ。

 

 幼い頃に婚約者を持たされてしまう貴族令嬢は、初恋も知らずに結婚させられてしまう者も多かった。

 しかしこの世に生を受けたのならば、一度くらい燃えるような情熱的な恋をしてみたい、そう思うのが人情というものであろう。

 

 もちろんそれが婚約者や結婚相手だったなら何の問題もない。

 しかし、相手から冷遇されたり虐げられていたとしたら、そんな相手に恋愛感情など持てるはずもない。


 だからご婦人方は格好のいい女性を好きになる。たとえばお芝居に出て来る男装の麗人に。

 同性の女性になら、好きになってどんなに熱をあげたとしても誰にも文句を言われる筋合いはない。

 子供ができる心配はないし、不義でもないのだから。夫達とは違って。

 そうは言っても、同性に対しても焼きもちを焼く男は多かった。

 しかしそのことが他人にばれると、さすがに度量の狭い情けない男だ! という烙印を押されるので文句は言えない。

 

 そのような理由で女性達は、役者だけではなく女性騎士達に熱をあげた。

 そしてその中でも断トツの人気だったのが女性の聖騎士のニコルお姉様だったのだ。

 なんとその彼女の熱狂的ファンの中には、王妃殿下も入っていたそうだ。

 もっとも王妃殿下は夫である国王陛下とは相思相愛で、夫婦仲は円満であったが。

 

 王妃殿下は単に純粋に美しい人が好きだったのだ。そして自分付きの聖騎士がたまたま絶世の美女だっただけなのだが、とにかく彼女はニコルお姉様には甘かった。

 それを利用させてもらおうとカナディーク王子が言い出したのだ。

 つまり、王妃殿下にこちらの要望を聞き届けてもらうために、聖騎士のニコル様を仲間に引き入れる計画を三人で立てたのだ。そして、それが見事に成功したのであった。

 

 私達が二度も人生のやり直しをしている事実を、一体どうやって信じて貰えばいいのかと、私とへラリーは悩んだ。

 しかしカナディーク王子にとっては、それはとても簡単なことだったようだ。

 何故ならロッド卿やアダムズ様を既に信じさせていた実績があったのだから。

 ただし、今回のニコルお姉様には、何もわざわざ事実を教えなくてもいいんじゃないのかとカナディーク王子は言った。味方に付けてこちらに協力してもらえるだけで十分だと。

 

 

「ニコル嬢、貴女は今大きな悩みを抱えていますね? 良ければご相談に乗りますよ」

 

 カナディーク王子の言葉に彼女は一瞬驚いたようだが、すぐにいつも穏やかな笑みを浮かべて言った。

 

「殿下はお優しいですね。

 ですが、ありがたいことに今のところ私は、何の憂いもなく任務を遂行させてもらっております」

 

「僕が言っているのは個人的なことですよ、ニコル嬢。贈り物を何にするかずっと悩んでいるでしょ? 

 でも誕生日までもう日がないですよ。だから相談に乗ってあげようと思ってるんだけど」

 

 王子はあざとくコテッと小首を傾げた。うん。かわいい。中身はお爺さんくらいの経験値があるけど、見た目は天使だ。

 やはり自分達も見習うべきなんだろうな……と私とへラリーは見つめ合って思った。

 いくら恥ずかして悶えたくなっても、計画を上手く進めるためには、恥を忍んで自分達も可愛らしい演技をしなければまずいのでは……? と、私達は改めて思ったのだった。

 

 そしてニコルお姉様は王子の発言に思い当たるものがあるのだろう。彼女は瞠目した後で真っ赤になり、珍しく狼狽えた。

 文章の最後の内容を変更しました。


 読んで下さってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ