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三度目の正直のはずだったのに、ループしたヒロイン(自称)は墓穴を掘る!  作者: 悠木 源基


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第28章 知らなかったー2(マーラ教会長視点)

 

「貴女が教会長としての当たり前の勉強をしていたら、自分が大聖女マラエラ様の生まれ変わりだなんて思い込むことはなかったんですよ。それが本当に残念で、腹立たしいです」

 

 勉強不足?

 

「歴代の業務日誌を読むことは教会長の最低限の義務ですよね? それを貴女はしてこなかったですよね?

 していたら、こんな思い込みをする筈がないもの」

 

 どういう意味?

 

「貴女は過去の業務日誌を最初の一冊しか読んでいませんよね?

 だってせめて貴女が二冊目を読んでいたら、自分がマラエラ様の生まれ変わりだなんて思うわけがないもの」

 

 聖女ミクティナは二冊目の業務日誌を私に見せながら言葉を続けた。

 

「確かに一冊目の業務日誌の最後には『疲れた。もしもう一度人生のやり直しができたなら、同じ過ちはしないのに』と書かれてあります。

 しかし、二冊目の文頭には、カーラ様の再教育は決して諦めない。これは姉として聖女として教会長としての務めだからと、その強い意志が記されているんです。

 

 そして、その五年後の業務日誌には、時間はかかったけれどカーラ様が無事更生されて、騎士の方と結婚して幸せな家庭を築いたという記述がありましたよ」

 

 えっ? そんな馬鹿な! マラエラ様はカーラ様のズルいズルい攻撃に辟易として、絶望されていたではないですか!

 

「大体やり直し魔法は禁忌魔法なんですよ。大聖女マラエラ様がそんな禁忌を犯す筈がありません!」

 

 聖女ミクティナの言葉に私は反論した。そもそも使えもしない魔法を禁忌魔法と称して、法典に記す意味がわからないと。使う意味や必要性があるから後世に残したのだろうと。

 

 すると彼女は深いため息をつき、憐れむような目で私を見た。

 

「大聖女マラエラ様は、それこそ女神の生まれ変わりだと言われていた、隣国の大聖女様からあのやり直しの大魔術を伝授されたんです。

 あの疫病の蔓延を一国だけで止めて、他国まで広げなかった礼だと言って。

 

 あの疫病はかなり強いものだったので、もし近隣諸国まで広まってしまったら、癒やしの魔力持ちがいない隣国では防ぎようがなく、滅亡するところだったのだそうですよ。

 そしてもしそんな事態になっていたら、大聖女様は人々を救うために、きっとやり直しの魔術を使っていただろうとおっしゃっていたそうです。

 だからこそ、それを使わずに済んだことを心から感謝していると。

 

 やり直し魔術は禁術です。人々の意志や思いなどは関係なく全てをリセットしてしまうのですから、それを使うということは、ある意味殺人と匹敵するほどの大罪だと。

 

 しかしそれでは何故そんな危険な禁術を伝承させているのかといえば、先程も述べた通り、それは多くの民が絶滅の危機に陥った時のためだそうですよ。

 それこそ、特効薬がない上に致死率が高かった、過去のあの疫病が蔓延した時のような。

 

『今の貴女には必要はないと思うけれど、今後はどうなるかわからないから、授けておきましょう』

 

 そう隣国の大聖女様はおっしゃったそうですよ。このお言葉があったからこそ、マラエラ様は『やり直し魔法』の術式を残されました。しかし大聖女マラエラ様はその魔法の恐ろしさを認識されていたのでそれを禁術とし、本気で()()()()をお考えになったことは一度もなかったんです。

 

 確かにカーラ様のことでつい愚痴をこぼされたのでしょうが、それは仕方のないことでしょう。大聖女とはいえ全能の神ではないのですから。

 彼女は業務日誌に素直な気持ちを記した上で、気持ちを新たにして、前向きに色々なことに尽力していったのですよ。

 

 人は誰でも失敗する。でもそれを糧にして私達は前を向いて進むことができる。

 自分の後継者が自分の在り方で悩んだ時の一助となればと、マラエラ様は毎日欠かさずにこの業務日誌を書かれていたのでしょう。

 教会長は人の悩みや苦しみを聞いて相談を受ける立場であり、己の相談をできる人はあまりいないだろうからと。

 

 そしてそれは次代の後継者となる教会長へと脈々と引き継がれて行ったのです。貴女も前教会長からそのことを教わったのではないですか?

 いいえ、教わった筈です。

 だって前任の教会長の業務日誌の最後のページには、貴方への業務日誌の引き継ぎが完了したと記載されてありますもの」

 

 確かに業務日誌についての説明はあった。とても重要なことで一日たりと忘れてはいけないと。書けなくなったら引退しなければいけないと。

 しかし業務日誌の記入や経典や魔術書の解読だけで手一杯で、過去の業務日誌を読む余裕なんてなかったのだから仕方無いじゃないの。

 

 業務日誌を書くだけではなく読む必要があったなんて、そんなことは知らない。

 大聖女マラエラ様がやり直しを望んだことが一度もなかったなんて知らない。

 やり直しが禁術だったなんて知らない。

 やり直しが殺人と匹敵するほどの大罪だなんて知らない。

 

 知らない、知らない、知らない……

 


「フッ……

 貴女の頭の中はスピア嬢と同レベルなんですね。知らないと連呼すれば済むと思っているのですか?

 知らないで行った行為でも、それが違法なら罪なんですよ」

 

 わかってるわよ、そんなこと。何を偉そうにこの小娘は!

 確かに私はやり直しを計画しようとしていたわ。だけどそれはまだ思っていただけよ。未遂ですらないのだから罪じゃないわ。

 私がそう思った時だった。

 

 聖女ミクティナは私を睥睨した後で、深いため息を漏らしたので、私は思わず彼女を訝しく思った。

 さっきから散々馬鹿にするような目で見つめられてきたが、今度はまるで残念なものを見るような、一種の憐れみを含んだ表情を向けられたからだ。

 

「貴女の最大の過ちは、やはり知ろうとする努力をしなかったことですね。それから過去の教えから学ぼうとする姿勢がなかったことですね。

 

 貴女は、やり直しは心で思っただけで計画も立てていないのだから、未遂とも呼べないと考えていますね?

 確かにこのこの世界ではそうかも知れませんが、実は今現在生きている我々のこの人生は三度目なんですよ。何故なら、貴女が以前の人生でやり直しを二回実行したからです」

 

「何馬鹿なことを言っているの!

 私はやり直しなんて実際にやったことなど一度もないわ!」

 

「それは覚えていないだけですよ。やり直しを希望して教会に集まる者達は、ループすると元の記憶をなくしてしまうから。もちろんその術を発動した者も……」

 

「いい加減なことは言わないで!

 記憶を無くしたら、やり直しをしたくてもやり直せないじゃない。過去を参考にできないのなら……」

 

 驚愕して私はこう叫んだ。

 そんな馬鹿馬鹿しい副作用があるなんて私は知らない。いいえ、これは嘘だわ!

 

「だからこのやり直しは、人類が絶体絶命の時にだけに使うものなんですよ。無闇矢鱈に行ってはいけないんです。しかも、正しく使うにはその術者の力をかなり必要とするのだと。

 以前の貴女が書いたこの二冊の業務日誌を読んでご覧なさい。

 どちらも同じ日付の物でしょう? そして最後のページにはどちらにも、

 

『これからやり直しを実行する。今度こそスピアの願いが叶うようにしてみせる。

 私は大聖女マラエラ様の生まれ変わりなのだから、カーラの生まれ変わりであるスピアの望みを叶えてやらなくてはいけない。

 もうあの子のズルい!は聞きたくないから』

 

 そう書いてあるでしょう?

 これは二冊同時に書かれたというわけではないわ。何故なら、やり直しを希望した者の記載が多少違うから。

 それにやり直しがあったことは、それを希望した本人達にも確認したから間違いないわよ」

 

「本人? 希望した者は記憶をなくしているのではないの?」

 

「ええ。最初のやり直しの時、元々の人生を覚えていたのはたった一人だった。もちろんやり直しを望んだ者じゃなかった。

 元々の人生で不幸な亡くなり方をした彼女は、過去の失敗を活かして人生のやり直しを図ったけれど、一人では到底無理だった。 

 そのために再び殺された挙げ句、望みもしないのに、さらにやり直しの人生を生きることになってしまった。

 でも今度は、多くの仲間の協力を得た上に、二度の失敗を参考にして、ようやく事態を改善させ、やっとその不幸のループから抜け出せたのよ。

 

 マラエラ様の生まれ変わりは貴女じゃなくてその女性だと思うわ。だって過去の失敗を参考に諦めずに努力して、自分だけでなく周りの人々も変えて目的を無事に達成させたのだから。

 彼女の大切な人達だけが今回記憶を取り戻したのも、きっと彼女が無意識に使った聖女の力なのかもね」

 

 私は大聖女マラエラ様の生まれ変わりなんかじゃなかった。そしてスピアもカーラ様の生まれ変わりなんかではなく、ただの我儘で愚かで馬鹿な娘に過ぎなかった。

 

 私が本当にマラエラ様なら、そんな我儘で愚かで馬鹿な少女のことも決して諦めず、きっと立ち直らせていたに違いない。たとえどんなに時間がかかったとしても。

 

 私は二度も無駄なループをして、一体何をしたかったのだろう。私が本当にすべきことは、ヒロイン気取りのあの子に真実を伝え、努力することを教えることだったのに。

 結局私があの子にしたことは、墓穴を掘って自滅させるように後押しをし、失敗したらまたやり直しをさせようとしただけだった。まさしく無限ループ地獄……

 

 

 私が無知だったために、彼女にも大きな罪を犯させてしまった。なんて愚かだったのだろう。

 私が大聖女マラエラ様の生まれ変わりだなんて、なんで思い込んでしまったのだろう。

 

 やっぱりスピアの、あの『ズルい! ズルい! ズルい!』という呪いの言葉を業務日誌の中に見つけてしまったせいかしら?

 

「まあ、今回貴女がやり直しをしたおかげで、この国は大分住みやすい国になりましたから、少しは恩赦が出るかも知れません。

 命がある限り、スピア嬢と共に反省をして、少しはましになって下さいね、マーラ教会長」

 

 最後に聖女ミクティナは私にこう言うと、業務日誌と共に牢獄を去って行ったのだった。

 

 

 

 次章が話の最終話となり、その後に登場人物の紹介文を投稿して完結します。

 なるべく今日のうちに投稿したいと思っています。


 読んで下さってありがとうございました!

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