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三度目の正直のはずだったのに、ループしたヒロイン(自称)は墓穴を掘る!  作者: 悠木 源基


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第27章 知らなかったー1(マーラ教会長視点)  

 

「お姉さんばっかりズルい!

 

 お姉さんばっかり魔力がたくさんあってズルい!

 お姉さんばっかりみんなに愛されてズルい!

 お姉さんばっかりみんなに感謝されてズルい!

 お姉さんばっかり王子さまの恋人になってズルい!

 お姉さんばっかり王妃様になってズルい!

 お姉さんばっかりヒロインみたいでズルい!

 ズルい、ズルい、ズルい……」

 


 ✽✽✽✽✽✽✽

 


 いつからでしょう。スピアのズルい攻撃が始まったのは……

 

 

 スピアが最初に教会にやって来たのは彼女が十歳の時だった。母親が病死して親類もいなかったので、近所の人が教会に連れてきたのだ。

 

 彼女は女手一つで育てられてきたので、さぞかし苦労をしてきたのだろうと、私を含めて教会の者達は、最初のうちは皆スピアに同情していた。

 ところが確かに彼女は貧しい生活をしてきたのではあろうが、まるで苦労知らずのお嬢様のような振る舞いをした。そのためにスピアは、教会でも孤児院でも浮いてしまい、周りの者から避けられる存在になっていった。

 

「私は本当は貴族の娘なのよ。私をあなた達と一緒だと思わないで。

 それに私は女神に選ばれたヒロインなの。いずれは王妃になるのよ」

 

 これがスピアの口癖だった。仕事に忙しくてあまり側にいられなかった母親が、子守り代わりに与えていた流行り本の影響らしく、完全に自分は本の中に出てくるヒロインだと思い込んでいた。

 

 私も他の者達と同じ様に、スピアを頭のおかしい子だ、困ったものだと思っていた。

 そんなある日、教会長室の床下にある執務室で、私がその日の業務日誌を書き終えた時のことだった。一番古い業務日誌がふと目に入った。それは初代教会長のマラエラ聖女様が綴ったものだった。

 

 その一番最後のページを何気なくと、そこには業務日誌というよりも、私的な日記のようなものが記されてあった。

 しかもあのスピアがいつも口にしている台詞が綴られてあった。

 

 

 

『ズルいズルいと絶えず言い続ける妹に辟易している。

 

 妹とはずっと一緒に行動をしてきたのに、私にたまたま特殊能力があったために、私だけが人々に感謝されて崇められきた。

 その上私は高貴な王族の血を引き、優しくて優秀な夫に愛されて結婚をし、子供にも恵まれた。

 それに対して妹は未だ伴侶どころか婚約者もいない。そのことにも申し訳無さがあったから、妹に何も言わなかったのかも知れない。

 

 しかしそれは過ちであった。

 人々のために尽力した者達が全てそれに見合う賛辞や褒賞を得られるわけではない。いや、それを得られる方が圧倒的に少ないのだ。

 それにその名誉を得られた者達が皆幸せなのか、と言えばそうではない。得られた分だけそれに見合う責任を負わされるからだ。

 私だって王妃だけではなく、教会長としてもその重責を負うことになったのだから。


 鑑みれば、あの悪い疫病が流行する以前は、何一つ能力の無い妹のカーラの方が、異能者の集団の中においては異端な存在だったのだ。

 それなのに両親や私、仲間達が哀れに思って優しく接していた。

 本当は異能があろうがなかろうが、それぞれ自分のできることを精一杯頑張ることこそ、集団生活では大事なことだったのだ。

 それなのにあの子にはどうせ無理、できるはずがないと勝手に判断して何も任せてこなかった。

 

 あなたは私達にとって特別大切な存在なのだから、何もしなくてもいいのよ。あなたはここにいるだけで価値があるのよと常日頃囁いて、カーラに役割を与えなかった。そのせいで彼女はすっかり思い上がってしまったのだ。

 自分は真っ当な人間で、この異端な異能持ちとは違うのだと。しかも、特別な存在で、崇められて当然なのだと。

 

 そして私達が年頃になった頃、国中で疫病が蔓延し始めた。しかし対岸の火事だとただそれを眺めてたところに、一人の若者が助けを求めて私達の隔離された共同体へとやって来た。

 彼は私の前で膝をついてこの国を救って欲しいと懇願してきた。何故私なのかといえば、この国で強力な癒やしの力を持っていたのは、私だけだと教えられたからだ。

 

 両親や仲間達には反対をされた。しかしこの村の閉鎖を解くことを条件に、私は協力することに決めて、若者と共に王都へ向かうことにした。

 しかし美丈夫な若者に一目惚れしたカーラまでが私達に付いてきたのだ。いくら疫病にかかる恐れがあると言っても、妹は聞く耳を持たなかった。

 自分は特別な存在なのだからいるだけで人々の役に立つはずだと。

 

 そして案の定妹は何の役にも立たないばかりか邪魔にしかならなかった。それまで何もしてこなかったのだから当然だった。

 しかもしっかり感染予防するようにいくら注意しても妹はそれを守らなかった。

 それ故に妹が罹患しては、私がそれを治癒魔法を使って治す……を繰り返した。

 

 その後感染がようやく終息すると、私は光魔法であっという間に人々の病を治した女神として、国民から崇められてしまった。

 しかも私が国王までも治療して治したことで酷く感謝され、王太子と結婚して城に留まるようにと依頼された。

 しかし、私ははっきりとその申し出を断った。

 

 自分達を王都から追い払って隔離した、そんな王族と結婚するなんてごめんだったからだ。

 ところが王族がそんな貴重な人材である私をみすみす手放すわけもなく、捕まりかけたが、一人の若者が、私達を連れて逃げてくれた。

 その人は病人を助けてくれと依頼に来た若者であり、この数か月ずっと側で守ってくれていた王城の騎士だった。

 こうして私は妹カーラやその若い騎士と共に、王都を脱出して共同体へと戻ったのだった。

 

 その後王都には、女神様がいなくなったせいで再び病が蔓延するというデマが流れた。

 そのせいで生き残った人々は、我先にと王都を出て行った。そして、女神の住むと有名になった村に、どっと押し寄せてきた。

 

 こうして私の村に大きな集落ができて、それがあっという間に村から町、都市となっていった。

 私は夫となった元騎士と共に、自分達の住む場所を王都とし、住んでいた共同体の建物を新たな王城だと定めた。

 そして私達二人が新しい国王と王妃になったことを宣言した。

 

 私の夫となったその元騎士は、公爵へ養子に出されていた国王の庶子だったので、私達の即位を反対する者などほとんどいなかった。そう。妹カーラ以外には。

 

 妹は自分の行いが評価されないことに不満を抱いた。姉ばかりが褒め称えられて自分が蔑ろにされることに苛立った。

 そしてなによりも許せなかったのは、自分の初恋の相手である元騎士の王子が、姉である私と結婚したことだった。

 

 結婚が決まってからカーラはまるで呪文のように『ズルい! ズルい!』という言葉を連呼するようになった。

 

 もうこれ以上あの子を甘やかしてはいけない。

 

 

 しかし、みんなでどんなに説得し、教育をしてもあの子は全く変わらない。疲れた。

 もしもう一度人生のやり直しができたなら、今度は同じ過ちはしないのに』

 

 

 ✽✽✽

 

 

「マーラ教会長、貴女はこのマラエラ聖女様の業務日誌を読んで、ご自分がマラエラ聖女様の生まれ変わりだと思い込んでしまったのですね?

 そしてあのスピア嬢がカーラ様の生まれ変わりだと……」

 

 久しぶりに会った聖女ミクティナから業務日誌を見せられ、私は目を見張った。何故彼女があの日誌を。

 教会の地下にある教会長の執務室へ続く床下の扉には、私が魔法をかけておいた筈なのに。

 

「扉の封印魔法なら私が解きました。私は貴女同様に、微力ながらも色々と魔法が使えるんですよ。癒やし魔法以外にもね」

 

 彼女の言葉に私は目を見張った。

 かつて教会には癒やし魔法を使える聖女が数人いたが、それ以外の魔法を使える聖女がいたなんて知らなかった。

 ここ何代かの教会長はただの聖女だった。だから久しぶりに誕生した魔力持ちの聖女だった私が、あっさりと教会長に選ばれたのだ。


 自分を特別な聖女だと思っていた私は、あの業務日誌を読んだ時、マラエラ聖女様の気持ちが手に取るようにわかった。そのことで理解したのだ。私は初代王妃になったあの伝説の聖女マラエラの生まれ変わりなのだと。

 

「聖女マラエラ様の気持ちが手に取るようにわかったですって? とんだ勘違いだわ。貴女もスピア嬢と同じくらい思い込みが激しいのですね」

 

 私の心の中を読んだかのような聖女ミクティナの言葉に、私は思わず息を呑んだ。

 

「常々何故貴女のような浅慮な方が教会長なのだろうと、私達は不満に思っていたのですよ、マーラ教会長!

 

 わずかばかりの魔力持ちだとしても、聖女として不勉強で向上心もなく、この国の民の幸福のことなど全く考えず、ご自分の役目も弁えていらっしゃらない方がどうして教会長なんだろうって」

 

 聖女ミクティナの暴言に私はカッとなった。大聖女マラエラ様の生まれ変わりである私になんて無礼な物言い。天罰が下るわ!

 私がそう思った瞬間、彼女は眉間にシワを寄せてこう言った。

 

「ですから、貴女は聖女マラエラ様の生まれ変わりなどではありませんよ」

 

 何故私の思考が彼女に読めるの? 確かに彼女は昔から勘が良くて、他人の気持ちを察するのが上手かったけれど……

 

 読んで下さってありがとうございました!

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