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三度目の正直のはずだったのに、ループしたヒロイン(自称)は墓穴を掘る!  作者: 悠木 源基


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第25章 初めての日を二人で……

 

「それにしても今後はどうするつもりなの? 

 昨日の卒業パーティーにあの二人が乱入してきたせいで、予定が狂ってしまったのでしょう?」

 

 思案顔のニコルお姉様にこう尋ねられた。

 最初はオーガス統帥閣下が恐れ多くも、私達の護衛をして下さる手筈になっていた。

 しかし教会長のマーラ聖女とスピア聖女を、王城内の魔力防御シールドに覆われた牢獄に収監することになったので、そちらを担当することになった。

 彼女達の力は未だ未知数であるために、不測の事態に対処するためだ。

 

 そして閣下がご自分の代わりとして、奥方のニコルお姉様を私達に付けて下さったのだ。まだ小さなお子様達がいらっしゃるのに、大変申し訳無い。

 

 

 それにしても、確かにニコルお姉様の言う通りである。

 本来の計画では、私が無事に新しい日を迎えることができたら、すぐ様教会へ出向いて、教会長と直接対決するつもりだったのだ。

 問題の根源を正さないと、何度人生を繰り返しても解決しないと思ったので。

 

 しかし目的の彼女達がいないのでは教会へ行く意味がない。

 やはり、今回の王城乱入と王族に対する不敬罪についての取り調べが終わるまで待つべきなのだろうか……

 私がそう考えた時だった。

 

「予定通りに教会へ行こうと思います。元々教会内部について調べようと思っていたのですから、教会長がいないのはむしろ好都合です」

 

 ミクティナ様がこうおっしゃった。なるほどと私達は思わず頷いていた。

 

「お告げ室や教会長室は信者だけではなく、私達聖女も自由に出入りできません。例外はスピア聖女だけです。ですから、是非調べたいです。

 もちろん捜査は騎士団の皆様が行うのでしょうから、それに随行させて頂きたいのです。できるだけお邪魔はしないように致しますので」

 

「わかりました。ミクティナ聖女様がご一緒の方がむしろ調査も進みやすいでしょう。私の一存では決められないので上へ進言しますが、恐らく許可は下りるでしょう。

 カナディーク殿下とカスタリア様とへラリー様も、ご同行されるおつもりなんですよね?」

 

 ニコルお姉様の言葉に私達はまたもや頷いた。するとお姉様はにっこりと微笑んだ。

 そしてカナディーク王子と私に目を向けてこう言った。

 

「まだまだ興奮は収まらないないでしょうが、明日、いいえ、日付けが変わったのですから今日もですね……忙しくなりそうなので、もうお休み下さいね。

 我がドラドット公爵家とヘンドリックス侯爵家の護衛騎士達が、しっかりとこの屋敷をお守りしますから、どうか安心して()()()()()()()()でお休み下さい。

 

 殿下、いくら卒業式は済んだと言っても、結婚式を挙げるまではご自重下さいね。

 いくら気分がハイになっても、女性にとって初夜は一生に一度の大切なものですからね」

 

 ニコルお姉様は見目麗しい淑女だが、聖騎士といえど騎士なので、言葉の使い方が明け透けだ。

 

「わかってます……」

 

 カナディーク殿下は小さな声で呟いた。何故かとても覇気がなかった。何故かしら?

 

 

 ✽

 

 

 私は無事にあの運命の日を乗り越えることができた。気を緩めてはいけないと思いながらも、二階のテラスで朝日を見た時、ホッとして涙が溢れてきてしまった。

 

 するとカナディーク王子が足早に側に来て、私の肩を抱いてくれた。その手の温もりで、本当に私は今生きているだということを実感した。

 いえ、それはほんの一瞬で、私はまた夢に落ちそうになったけれど。

 

 何故ならカナディーク王子が私にキスをしてきたのだ。しかも今までの軽いキスなどではなく、深くて長い口付けを……

 

 

 今までずっと我慢してきたのが瓦解したのか、私の体のいたる所に触れながら、王子はキスをし続けた。

 昨夜のニコルお姉様の言葉は、私達をからかうために言ったのではなかったことをようやく理解した。

 

 たとえドレスの上からとはいえ、カナディーク王子からこんな風に愛撫されるだなんて思いもしなかったので、私はただただ混乱状態に陥ってわけがわからなくなった。

 もちろん嫌なわけではなかったが、何しろ初めての経験だったので、少々パニック状態になったのだ。

 

 これまで生きてきた時間を単純に合算すれば五十年以上になるけれど、これまでの三回の人生はいずれも十八年だった。だから、大人の女性としての経験は全くの未知数なのだ。

 

 カナディーク王子はいつも理性的で、私をとても大切にしてくれていた。だから、元々の人生でも最初のやり直しの人生の時も、軽い抱擁とキス以上のことはされなかった。

 それなのに結婚直前で私を失ったのだから、どれほど口惜しかったことだろう。

 

 それでも王子は今回の人生でも我慢に我慢を重ねて、私に無体なことは一切してこなかった。けれど、時折拳を固く握りしめてぐっと堪えていたことはわかっている。

 若い男性にとってそれが、どれほどの我慢を強いられることなのか、さすがに私もわかっていた。

 それでも王子が自分の欲望を抑えてくれていたのは、その行為が()()()()を待てずに関係を持ってしまった結果として捉えられ、今回もどうせ運命を変えられないと諦めてしまうことに繋がってしまうと考えたからだと思う。

 

 私はカナディーク王子のその優しさ強さに改めて感謝した。そして彼に対する愛しい想いが一層溢れてきた。

 されるままになっていた私は、一度王子から顔を離すと、愛する人の目を見つめた。そして彼の背に手を回し、今度は自分から顔を近づけたのだった。

 

 

 カナディーク王子にエスコートされて食堂へ行くと、へラリーとケビン様、ヘンドリックス三姉弟、アダムズ様とミクティナ様、王子の側近のモールス様、そしてゾイさんが既に着席されていた。

 

「お待たせしてすみません」

 

 私は皆様に一礼してカナディーク王子と共に席に着いた。

 早起きをしたはずなのに、ドレスにしわが付き、せっかく結った髪も乱れてしまい、再び部屋に戻って身支度をし直した。そのせいで、食堂へ向かうのがすっかり遅くなってしまったのだ。

 

 私達が何をしていたのかわかるはずがないと思いつつも、二人揃って遅れてきたことが恥ずかしくて、視線を漂わせた。

 すると皆が一斉に顔を背けたので、やはり勘付かれていることに気付いて、私は居たたまれなくなった。

 

 朝からあんなことをするなんてと、カナディーク王子を睨み付けようと顔を横に向けたが、王子はいつもと変わらず、にっこりと爽やかな王子スマイルをしていたので余計に腹立った。

 

 しかしそこへ料理人達が、とても朝食とは思えないボリュームたっぷりの料理を次々と運んできた。

 

 それはゾイの経営するレストランで出されている人気メニューばかりだ。

 特に店の看板メニューの濃厚チーズのたっぷり入ったチキンシチューは私の大のお気に入りだ。

 

 貴族の家の使用人にはとても思えない、顔に傷跡のあるがたいの立派な料理長を見ると、彼は右手の親指を立ててこう言った。

 

「今日はカスタリアお嬢様にとって記念すべき特別な日だと、ゾイさんから聞いたんです。しかも何でも今日は、凄くやばい奴との決戦の日だというじゃないですか! 

 それなら精力をつけなくてはいけませんからね。お嬢様の一番お好きな物をご用意しました。

 

 本当はデザートにチーズケーキもお出ししたいところなんですが、さすがに朝っぱらからまずいと弟子達が言うんで、それは夜のデザートにしましたよ。楽しみにしてて下さいよ」

 

 料理長は以前はゾイさんのレストランの料理長だった。しかし、足に怪我をして、大勢の人達の料理を作るのが大変になったので、ベルギル侯爵家の料理人長として招いたのである。

 一流の腕を持っているのに、料理人を辞めさせるのは勿体ないと思ったからだ。

 しかもその怪我が、店の従業員の少女に無体な真似をしようとした客から守ろうとして負ったのだから、見捨てるような真似はできなかった。

 

 わざわざ人気店の前で並ばなくても、大人気の()()()()()()()()()()()を食べられるのだから、私達は本当に果報者だと思っている。

 

 朝食にしてはボリュームがあり過ぎだと思ったが、結局全員が残さずに頂いた。

 護衛をして下さっていたニコルお姉様を始めとする騎士の皆様が、私達よりも先に召し上がったそうだが、私達の二倍の量を全員が完食されたそうだ。

 

 そして私達は最後に苦いコーヒーを飲んで頭をスッキリとさせ、みんなで見つめ合い、頷き合い、気合いを入れると一斉に立ち上がった。

 

 そう。料理長の言う通り、今日は決戦の日だ。いや、前哨戦か……

 敵は既に牢獄の中だが、それを暴く証拠を見つけなければ本当の解決にはならないのだから。

 やり直しが始まって八年。ようやく新しい未来に一歩踏み出すのだ。

 

 今度こそ、私達の人生を弄んだ悪の根源と対峙する。何故こんなやり直しをさせたのか……

 おおよその見当はついているが、それでもきちんと調べ上げたものを突きつけた上で、本人達の口から明らかにして欲しい。私達の問いに答えてもらいたい。


 そして、二度と愚かな真似をしないように、彼女達にしっかりと釘を刺さなければならない。私達はそう決心していたのだった。

  

 読んで下さってありがとうございました!

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