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三度目の正直のはずだったのに、ループしたヒロイン(自称)は墓穴を掘る!  作者: 悠木 源基


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第22章 卒業パーティーと王妃殿下


 そしてついに学園の卒業式の日を迎えた。

 国王陛下王妃殿下を始め、王族方や高位貴族のご来賓を迎え、式は厳かに始まった。

 

 学園長の答辞の後で、卒業証書が一人一人手渡された。その先頭に立たったのが、首席で卒業するカナディーク第三王子様殿下。

 威風堂々壇上に立ち、その礼を述べる姿は、他を圧巻する神々しさがあった。

 

 王妃殿下を含め、式場にいた女性の方々がみんな見惚れて、ボーッとしていた。もちろん王子のすぐ後ろに立っていた次席卒業者の私も。

 

 そして無事に卒業式が終了した後、同じ講堂が卒業パーティー会場になるので、後輩達が忙しそうにセッティング作業をしていた。

 

 その中心になっていたのは次期の生徒会メンバーです。

 妹のへラリーが陣頭指揮をして、なんとフェルデン第二王子の婚約者である、公爵家令嬢のエメランダ様を顎で使っているのを見て、思わず声に出して笑いそうになってしまった。

 

「それにしてもへラリー嬢はすごいよね。女性生徒会長は学園創立初らしいよ。

 でも、これまでの生徒会役員としての働きを知る者からすれば、まあ当然の結果だけどね」

 

 カナディーク王子も笑みを浮かべて言った。

 

 へラリーは一度目のやり直し人生で、ケビン様と子爵家を立て直しただけでなく、領地改革に成功して大きな繁栄をもたらしていた。その経験を全て記憶しているのだから、生徒会活動なんて、 まるでままごとのようだろう。

 もちろんあの子はそんな奢りを持つような人間ではないし、いつでも何事にも一所懸命だが。

 

 そんな妹が大好きで私の誇りです。

 カナディーク王子だけでなく、あの子が側にいてくれたおかげで私はここまでこれたのだと思う。

 そんな妹のためにも、今回は絶対に生き延びなければ。

 

 ✽

 

 ダンスのための室内楽団の演奏が始まった。

 

 これまでの三度の人生において、私は数えきれないほどカナディーク王子と踊ってきた。そのどれもが素晴らしいものだったが、今回はその中でも飛び抜けて楽しかった。以前とはまるで次元が違うくらいに。

 

 カナディーク王子殿下への愛の重さや信頼の度合いが、以前よりずっと増しているからだろう。

 そして私達は、当然のことながら三曲続けて踊った。同じパートナーと三曲続けて踊るということは、自分達は正式なパートナーとして公認されている仲です、という証明なのだから。

 

 たとえ婚約をしていても、相手がダンスを拒否すれば、それはパートナーに不満を持っているという意志表示になる。

 真っ当なカップルならば、ダンスを踊る前にパートナーとの仲を深めようと努力したり、確認をとる。

 それが貴族の常識だが、何故か必ずどのパーティーでも愚か者達は出でくる。だから、社交場はいつも話題に事欠かない。

 

 

 そして三曲目が終わりかけた時、なんだか会場が騒がしくなった。

 

『まさか、誰かが婚約破棄宣言でもしたの?』

 

 私は思わずカナディーク王子と顔を見た。

 しかし、どうやら違うようで、人の言い争う声は、室外から聞こえてくるようだった。

 

「何の騒ぎだ!」

 

 来賓席にいらした国王陛下が不機嫌そうに声を荒げると、側近の方がスッとやって来て、陛下の耳元で何かを囁やいた。

 すると陛下は怪訝そうな顔をなさりながらも立ち上がり、隣りの王妃殿下にも起立を促した。

 

 国王夫妻が起立して迎える相手って一体だれなのか。私を含めて講堂にいる全員が固唾を呑んで、出入り口を見つめた。

 するとそこに現れたのは、なんと聖女スピアと女神マラエラの肖像画にそっくりな女性だった。

 

 講堂内がざわついた。聖女スピアはともかく、私と王子はそのもう一人の方を知らなかったが、来賓の方々の多くは知っているようで、皆が目礼をしていた。そして、

 

「マーラ聖女様!」

 

 と来賓席から呟く何人かのが聞こえたので、私とカナディーク王子は瞠目した。もしやとは思ったけど、やっぱり……

 

 マーラ聖女とは女神マラエラの生まれ変わりだと呼ばれている現教会長だ。

 そう。あの聖女スピアを猫可愛がりしている、聖女スピア同様に大した聖なる力など持たない、甘々エセ女神。

 

 礼拝や奉仕活動の場にも顔を出さないので、私達は顔を見たことはなかったが、成人王族や高位貴族の皆様とは面識があるようだ。

 

「いけすかない奴みたいだな」

 

 カナディーク王子が私の耳元で囁いた。聖職者に対して無礼な物言いだったが、同意見だったので思わず頷いてしまった。

 だって信者や奉仕活動をしている人とは一切触れ合おうとしないくせに、上層部の人々とは交流を持っていたみたいだから。

 

 カナディーク王子と私達姉妹、そして護衛の皆さんは皆身分を隠し、下位貴族の子弟として教会に出入りをしていた。

 間違ってもスピアや教会長とは接触したくなかったからだ。そしてそれは正解だったようだ。

 

 

 あのお優しい王妃殿下が、ニコルお姉様に誘われるまで教会の奉仕活動に参加されなかったのは、あの教会長に疑念を持たれていたせいだったのか……

 王妃殿下は元々福祉活動に関心を持たれていたように見受けられた。けれど、マーラ聖女と接触をするのを避けるために、積極的な参加をしなかったのかも知れない。私達同様に。

 今頃になって私は、ようやくそのことに気が付いた。

 

 てっきりニコルお姉様のお願いのせいで軽い気持ちで参加されるようになったのかと思っていたのだが。

 

 

 そう言えば、私達は数年前に福祉活動の場を教会から他の場所へと移し替えていた。もちろん徐々にだが。

 何も福祉活動は教会でやらないといけないわけじゃない。何しろ私達は信者でもなんでもなかったのだから。

 

 思い返してみるとそのことに対して、王妃殿下も積極的に応援して下さっていたわね。

 

 大体あの聖女様一人まともに教育できない、身を粉にして活動する信者に対してて聖職者が自ら手の手を差し出さないような教会……そこのトップに、私達ですら不審感を持っていた。王妃殿下ならなおさらそう感じていたに違いない。

 しかし、表向き王家と教会は同格で、国を守る二つの両輪とされているので、あからさまな態度はできなかったのかも知れない。

 

「病に苦しんでいる人には病院を。身寄りのない人々には私設の孤児院や救護施設を。仕事を求めている人には職業訓練所や職業斡旋所を。貧しい子供達には学び舎と子供専用の食堂を作りたいんです」

 

 カナディーク王子がそう王妃殿下に申請をした時、王妃殿下は嬉しそうに頷いていらした。

 

 

 三度目の人生で、ようやく私達は私達にとっての諸悪の根元を見つけ出したのだ。

 スピアは最初から私達が思っていた通り、ただの頭のおかしい無礼者だった。

 そして悪いのは彼女自身というよりも、むしろあのスピアを全く教育せずに野放しにしていた教会……特にあの教会長マーラの方だったのだ。

 

 その証拠に、私達が社会福祉や医療活動の拠点を教会から移した途端、教会に通う人々の数は激減してしまったのだから、人々に信用されていなかったのだろう。

 まあ、純粋に女神信仰に熱心な信者や、最初から解決を望まず、ただ懺悔することを望んでいる方々は通っているのだろうが。

 

 ✽

 

 

「マーラ聖女殿。何故ここにいらしたのかな。貴女は招待されていないと思うが」

 

 国王が慇懃無礼に言った。

 するとマーラ聖女は眉を釣り上げた。

 

「そもそもそれが失礼ではないですか? この国を陛下と共に支える立場の教会を蔑ろにするとは」

 

「蔑ろにするつもりは毛頭ありませんよ。ただし学園には宗教は持ち込まない。それが原則なのでお呼びしなかったのだと思いますよ。ねぇ、学園長殿?」

 

「誠にもってその通りございます、陛下」

 

「その考えはおかしくないですか?

 この国は教会の力があったからこそ、建国できたのですよ。

 それならば、この国の未来を作っていく若者を達に祝福を与えるためにも、我々を招待すべきでは?」

 

「確かにそれも一理ありますね。

 しかしそれは過去の話でしょう? 今の教会に人を育てる能力があるとは思えませんな。

 信者どころか聖女の教育すらまともにできていないのだから。そんな教会の人間に祝福をして頂く必要はありませんよ」

 

 国王に代わって王弟であるオーガス統帥が、遠慮なくはっきりとそう告げると、マーラ聖女が一瞬目を見開いた後で、憤怒の形相で王弟殿下を睨み付けた。

 

「なんて無礼なことを言うのです。私は教会長でもある聖女マーラですよ!」

 

「祈祷や奉仕活動にも参加されていませんが、貴女が教会長だということくらい私も存じていますよ。

 そして貴女がその職に相応しくないってこともね」

 

「慮外者! 聖職者に対して、な、なんて不敬な!」

 

 激昂した聖女マーラが、それこそ不敬にも統帥閣下の目前まで近づくと、つばを飛ばしながら叫んだ。

 すると閣下はニヤリと嘲りの笑みを浮かべると、彼女の背後を指差してこう言った。

 

「不敬とか慮外者というのは、ああいう奴のことを言うんだよ」

 

 と……

 読んで下さってありがとうございました!

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