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三度目の正直のはずだったのに、ループしたヒロイン(自称)は墓穴を掘る!  作者: 悠木 源基


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第19章 スピア嬢回避計画


 全くミクティナ様には感謝の気持ちしかない。ええと、それからアダムズ様にも。


 こう言ってはなんだが、全体的に信頼性の高いゾイに対して、アダムズ様は多少適当な面が見られる。

 しかし却ってその真面目過ぎないところが、アダムズ様のいいところなのかもしれない。


 そしてミクティナ様にラブ一筋のところが魅力だ。アダムズ様はミクティナ様が私達の味方になって下さってからというもの、嬉々として教会の悪口を言いふらしていた。


 ほら、ミクティナ様と通学する夢を奪われた恨みは大きいからね。



 それに比べてゾイは信仰深い人だとわかっていたので、最初のうち、彼には教会に関する協力は求めなかった。

 ただ、スピア嬢の本性だけを理解してくれれば十分だった。

 さすがに彼女の正体をよく知れば、私達姉妹の殺害なんて考えないだろうと思ったから。


 しかし私達が教会と離れた場所で社会活動を始めると、ゾイも新しい場所に活動拠点を移した。

 単に彼は困っている人を助けたいと切望していただけで、教会に傾倒していたわけではなかったようだ。これはいい意味で誤算だった。



 

 私達はできるだけスピア嬢との距離を取り、可能な限り彼女と関わりを持たずにすむ方法を模索した。


 そもそも彼女が王家の人間と知り合わなければ、王妃になりたいなどという馬鹿で無謀な考えは持たないのではないかと。()()だが……



 そしてスピア嬢回避作戦は、案外簡単に実現することができた。

 というのも、カナディーク王子がご両親の国王と王妃、そして宰相閣下と文化教育大臣閣下にこう進言して下さったからだ。



「学園は未来の国の礎となる優秀な人材を育てる場所です。そのために国及び学園は、学生達にきちんと学べる環境を提供する義務があると考えます。



 数年前、王太子であるビクトル兄上の在学中、一人の女子生徒が起こした色恋沙汰によって風紀が乱れ、数名の優秀な人材を失いましたよね?

 あれは、国家にとっても大きな損失でした。


 そしてそれ以後も、いくつかそれに似た騒動がありました。

 それなのに何故私達は、過去の教訓を活かせずに何度も同じ過ちを犯すのか……それは過去の失敗をきちんと検証せず、なんの対策も施さなかったからです。


 人間には失敗という経験が必要なんだとは思います。ですが、再起不能になるような大きな失敗は必要ないのではないでしょうか。


 せっかく未来のある優秀な若者達を、わざわざ廃嫡したり、廃籍したり、牢獄に入れたり、収容所送りにはしたくないでしょう?

 ですから、そんなことにならないように、予想ができる不安要素は最初から排除すべきです。


 いや、排除というより、将来この国に役に立つと思われる者と、害をなす者をふるいにかけて入学させるべきです。ようするに選定です。

 私は別に選民主義者というわけではありませんよ。そこは誤解しないで下さい。


 僕は人として最低限のマナーや決まり事を守れない方はご遠慮して欲しいと言っているだけです。

 ですからその選定基準自体はそれ程厳しくする必要はないとは思うのです。子供の成長なんて、これかれら先どう転がるかかわからないと聞きますし。


 きちんと授業についていけるだけの基礎能力とやる気、そして最低限のマナーや礼儀作法……国の学び舎なのですから、入学を希望するのならそれくらいは必要なのでは?と思うのです」


 カナディーク王子の理路整然とした意見に、国王陛下や王妃殿下、そして宰相閣下は驚愕して、暫くポカンとしていたとオーガス統帥閣下が笑って報告して下さった。



 カナディーク王子の考えられた入学に関する規則では、貴族だろうが平民だろうが区別も差別もしない。不正入学が行われた場合は、即退学とし、関与した教職員も退職処分とする。これに特例は一切設けない。


 もし、高位貴族や権力者からの恐喝紛いの脅しや要請があったら、直ちに学園長に報告をすること。

 そして学園長はそのような案件があった場合は、速やかに文化教育省の俎上に載せること……



 カナディーク王子が纏めた学園の入学に関する骨子案、いや骨太な計画書が読み上げられた時、国王陛下と王妃、そして宰相閣下と文化教育大臣閣下は感嘆の声を上げたという。

 あまりにも施策が具体的で、抜け道がないくらい見事な出来だったので。


 この禀議書の原案を作成したのはカナディーク王子だったが、手直しをして正式な書類として提出したのは、王弟殿下であるオーガス総帥閣下だった。

 いくらその内容が素晴らしくても、まだ十四歳の第三王子が作ったものだとわかったら、取り上げても貰えない恐れがあったからだ。


 この学園の入学に関する改革案は、王太子ビクトル殿下の後押しもあって、すんなりと国王や宰相、主な閣僚の承認を得て、すぐさま貴族並びに平民にまで広く告知されたのだった。



 何故王太子がこの案を推奨したのかというと、殿下自身が在学中に非常識な男爵令嬢に追いかけ回され、当時まだ婚約者だった現王太子妃と共に散々迷惑をかけられた経験があるからだ。


 しかもそのせいで、側近になる筈だった優秀な友人を何人も失っていた。だからこそ、この計画に関心を持ち、熱心に後押しをしてくれたのだった。



 しかしこの告知に多くの貴族達が大慌てをした。そして優秀な家庭教師を皆で奪い合った。

 貴族としての一般的な教育を普通に施してさえいれば、何も今更慌てる必要などなかった筈なのに。


 ただ、慌てた者の方がまだマシだったのかも知れない。

 何故ならこの学園の改革案を甘く見て、事前には何の対処もせずにいて、いざ本番直前に不正をしようとした家がいくつもあったからだ。


 なんと公布の半年後に行われた入学試験では、不正をしようとした五つの侯爵家と七つの伯爵家の名前が公表されてしまった。


 しかもその不正を発表したのは、学園ではなく内閣府で、しっかりと世間に見える形で処分されたのだった。

 もちろん降爵になるとか多額の罰金を命じられたというわけではないが、これ程の不名誉はない。この家は子供を真っ当に教育もできない、ということが証明されたようなものなのだから。


 しかもそれを不正をして誤魔化そうとしたのだ。そんな姑息な行いをした家の者達は、多くの貴族達から軽蔑され、嘲笑されたのだった。


 このことによって、何組かの婚約が破談となった。しかし、学園入学前の早いうちの婚約破棄なら、大したデメリットにはならないだろう。


 学園や国の本気度が知れ渡ったことにより、その後不正する者はいなくなったのだった。

 

 因みに、当然()()()()()()()()()()が学園に入学することはなかったのだった。

 読んで下さってありがとうございました!

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