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三度目の正直のはずだったのに、ループしたヒロイン(自称)は墓穴を掘る!  作者: 悠木 源基


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第17章 女神伝説とこの国の成り立ち

 教会や聖女が出てきますが、あくまでも異世界のオリジナルの宗教です。


 ミクティナ様に疑惑の目を向けられて、私とへラリーは冷や汗をかいたが、王子は平然とこう答えた。

 

「僕は来年王立学園に入学します。それで王族が入学するということで、学園側が入学見込みの子供のいる貴族の家を調査したんです。

 

 すると王城の貴族課に、コールドマン男爵が平民の娘を養女にしようとしている、という情報が入ってきたんです。

 どうやら男爵がメイドに産ませた庶子のようです。

 

 まだ手続きの問い合わせだけだったので、正式に決定されたわけではないようです。しかし、もし今から養子縁組をして淑女教育をしたとしても、この一年という短い期間で、令嬢としての振る舞いや知識を身に付けられるとは思いません。

 

 数年前、兄の王太子の在学時にも似たようなケースがあったそうなのですが、あまりの自由気ままな振る舞いで、学園の秩序が乱されて大変だったそうです。

 ですので同じ轍を踏まないように、今回は早めに対策を取ろうということになったそうです。

 

 それでどのように調査をしようかと検討していところ、ベルギル侯爵領の知人がスピア嬢とは教会で何度か会ったと言ったのです。

 生憎と僕達は見かけたことがないのですが。

 それでミクティナ様にお尋ねしようと思ったのです」

 

 でまかせの中にところどころ真実を混ぜ込んでいます。

 さすがです、殿下!

 

「ベルギル侯爵領の知人とはどなたでしょうか?」

 

「ゾイ=パロットさんです」

 

 と私が答えると、ミクティナ様はニッコリと微笑みを浮かべた。

 

「まあ、ゾイさんってベルギル侯爵領の方だったんですか。

 あの方は本当にいい方ですよね。教会の神父様よりよほど困った人々に寄り添っていらっしゃいますわ。

 しかも不可思議な力を持つという女神様の生まれ変わりの方よりも、よっぽど現実的な支援をして下さっていますもの。

 もちろんこちらにいらっしゃる第三王子殿下や、ベルギル侯爵令嬢の皆様にも助けて頂いておりますが」

 

 そのミクティナの言葉に、アダムズ様がムッとした。

 そうです。ゾイさんは領地内だけでなく、王都でも人気です。

 仕事はできるし、兄貴分の性格でとにかく面倒見が良いですからね。しかもなかなかの美丈夫ですし。

 

 アダムズ様、ミクティナ様は真実が見える方のようです。下心見え見えで教会へ通っているのは、逆効果なんではありませんか?

 

「ミクティナ様は、そのスピア嬢が学園に入学しても問題はないと思われますか?」

 

 私がこう尋ねると、彼女は首を横に振った。

 

「前例より悪くなるのではないでしょうか。たとえ一、二年厳しい教育を施しても、まともな令嬢になれるとは思えません。無理だと思いますね。

 だってあの子は少しどころか大分変わっていますもの。人の話は全く聞かないし、現実と夢の世界の区別がつかない。

 上の方々が何故あんな子を聖女と呼んでいるのか、とても理解に苦しみます」

 

「「「聖女???」」」

 

 思わず王子と妹と私は叫んでしまった。

 

 自分は皆から愛されていると信じて、誰構わずすり寄っているような少女が? 

 自分は王妃になるのだと公言するような頭のおかしい少女が?

 最初の人生の時、第三王子であるカナディークには私という婚約者がいた。しかもそもそも王太子でもない第三王子と結婚しても、王子妃にはなれても絶対に王妃にはなれなかったでしょうに。

 

「スピア様は聖女としてどんなお力をお持ちなのでしょうか?」

 

 一応聖女と聞いたので、へラリーは丁寧な言葉遣いをした。するとミクティナ様は首をすくめた。

 

「それがわからないの。彼女は教会に来ても、お告げの部屋に籠もっているだけだから。

 祈りを捧げるわけでも、奉仕活動をするわけでも、魔法が使えるわけでもないの」

 

「「「えっ?」」」

 

「私達も何故彼女が聖女なのかわからないのです。でも、教会長様はおっしゃるのです。スピア様はそこにいるだけで貴重で尊い存在なのだと」

 

 確かに人の価値は能力だけではない。そもそも存在意義なんて必要ないと私も思うわ。

 でも、医療の知識がない者が医者には成れないように、聖なる力、または心を持っていない者を聖女しては駄目でしょうよ! 別にただの人でもいいじゃないですか。

 

「なんか胡散臭いですね」

 

 アダムズ様が呟いた。

 

「そんなのがミティと同じ聖女の括りになるなんて嫌だ」

 

 全くもってその通りです。

 

「あのう、ミクティナ様。お言葉の端々に教会に対する不信感が滲んでいるような気がするのですが……」

 

 恐る恐る私がこう尋ねると、ミクティナ様はニッコリと爽やかに微笑んでおっしゃった。

 

「ええ、もちろん。

 この世界には女神様が存在していて、その偉大な力で人々を救っているのは事実です。

 ただし女神様だけでなく、もちろん私達聖女も、必ずしも崇高な聖なる精神を持っているわけではありません。

 

 私達はたまたま特殊能力を持ち合わせたに過ぎません。

 そもそも教会とは、異能の力を持つ者が社会に対して害さないように、ひとまとめにして収容していた施設だったのですよ。

 本来忌避されるべき場所だったのです」

 

 ミクティナ様の話に私達は驚愕した。

 最初の人生や一度目のやり直し人生の時も、私達は教会を胡散臭いと思っていたのだが、まさか元々忌避されていた場所だったとは思いもしなかった。

 しかし、それを聞いて妙にしっくりしたのも事実です。

 

 やり直しの方法とか、あのスピアをやりたい放題にさせていたこととか、盗賊団を放置していたとか、とてもじゃないけれど、尊敬に値しない場所だったものね。

 ただそれでも罰が当たりそうで、はっきりと悪し様に言わなかっただけで。

 

 その後私達はミクティナ様から、その忌避されていた場所が何故正反対の存在になったのか、その話を聞かせてもらった。

 なんでも大昔、大量の魔力を持った少女がこの地に誕生し、大勢の人々の命を救ったことで、魔力持ちの人々の認識が大きく変わったのだそうだ。

 

 

 ✽✽✽✽✽

 

 

 その少女の名はマラエラ。

 癒やし魔法持ちの母親と、火の魔法持ちの父親から生まれた。

 幼い頃からとにかく魔力が多く、しかも多種な魔法を使えたことで、両親だけでなく、共同体に住む人々からも愛されかわいがられた。

 

 マラエラが十六歳になった頃、国中に悪い疫病が流行った。そして多くの人々が死んだ。

 しかし共同体に住む異能者達は社会から隔離されていたので、病気にかかる者はいなかった。

 ところがある日、王城からやって来た若者から、魔力を使って病を払ってくれないかと懇願された。

 

「我らを異端だとこの地に閉じ込めて置きながら、何勝手なことを言っている。さっさと帰れ。病が伝染るわ」

 

 長老は言った。当然である。

 

「お願いです。このままでは国が滅んでしまいます」

  

「滅べば良かろう。構わん」

 

「しかしこの国が滅びれば、他所の国から多くの人間がやってきて勝手に占領しますよ。そうすればこの共同体も無事とは限りません。

 他国にだって貴方達のような異能者はいるでしょうから、必ずやっつけられるとは限らないでしょう?」

 

 若者のこの言葉に共同体の者達も不安にかられて、仕方無く協力することにした。

 ただし、もし成果が出せたら自分達を自由にしろと約束をさせた。もし守れなかったら、今度こそ許さないと。

 

 そして癒やしの魔力を持つマラエラとその二つ年下の妹のカーラが若い男について、王都へ向かった。

 

 そして結果的にどうなったかというと、マラエラは光魔法であっという間に人々の病を治し、彼女は女神として国民から崇められた。

 その上自身の病を治してもらった国王にとても感謝され、王子と結婚して城に留まって欲しいと依頼された。


 しかし、マラエラははっきりとその申し出を断った。

 自分達を王都から追い払って何も無い田舎に隔離した、そんな王族と結婚するなんてごめんです、そう言い残して城を後にしようとした。


 もちろん王族がそんな貴重な人材をみすみす手放す筈もなく、マラエラを取り押さえようとした。

 するとマラエラは、目が眩むような光を発射させて周りを撹乱させた後、急いで逃げ出した。そして差し出された手を取って、妹と共に逃げ出した。

 

 マラエラ達を助けてくれたのは、彼女の村に病人を助けてくれと依頼に来た若者だった。そしてこの数か月ずっとマラエラの側にいて守ってくれていた、王城の騎士だった。

 

 マラエラは妹カーラやその若い騎士と共に王都を出て、共同体へと帰ってしまった。

 すると、女神様がいなくなった王都はきっと呪われる。また病が蔓延する!というデマが流れ出した。

 生き残った人々は我先にと王都を出て行き、女神の住むという共同体のある田舎へ向かった。

 

 そしてそこにはやがて集落ができ、村、町、都市となって、あっという間にそこが新しく王都と呼ばれるようになっていった。

 というのも、元々の王都にはほとんど人がいなくなり、廃墟と化していたからだ。民も貴族も騎士も、皆王族を見捨てて出て行ったのだ。


 そこで共同体に元々住んでいる異能の者達は、その共同体を王城にすると決め、新しい国王と王妃を擁立した。

 その王とは、マラエラの夫になっていた騎士だった。

 そもそもその騎士は国王の庶子で、公爵家へ養子に出されていた人物だったため、誰も反対しなかった。

 そう。マラエラの妹カーラ以外は。

 

 こうしてかつては異能者を閉じ込めておいた共同体は、いつしか教会と名を変え、王都ならびに国の中心になったのだった。


 ✽✽✽

 

 この国と教会の成り立ちを聞いて、女神と呼ばれた大聖女様が本当に実在したことを、私達は初めて知ったのだった。

 しかも初代教会長というのが、その伝説の女神で、初代の王妃だったことも。


 そしてその時私達は、何の能力も持たない妹だけでなく、その伝説の女神様の存在にも興味を持ったのだった。


 それにしても、今も昔も人間の業というものは変わらないのだなと、私は妙に感心してしまったのだった。

 

 ✽

 

 ミクティナ様の話を聞いた私達は、今までずっと疑問に思っていた事柄が大分解消できてスッキリとした。

 

 元々の人生の時も最初のやり直しの時も、あのピンク頭の少女の不可思議な行動に頭を悩ませていた。

 だからあの少女が、私達の人生にとっては大きな鍵だと思っていたのだが、それは間違いだった。

 

 アレは単なる○○であり、まともに向き合うだけ時間と労力の無駄な存在だったということがわかった。

 変えるべきはスピアではなく、本当の女神の力を利用している教会長の方だったのだ。

 諸悪の根元である教会長をどうにかしなければ、これからも何度もやり直しを繰り返さなければいけない。不毛だと私達は思った。

 読んで下さってありがとうございます!

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