第15章 絶望的な初恋ー3(ゾイ視点)
間があいてすみません。
最後まで話を書き終えたので、順次アップしていきます。
読んで下さると嬉しいです。
カフェを手伝った経験が役に立って、二つの店はどちらもすぐに人気が出て繁盛した。
人手がすぐに足りなくなったので、俺は積極的に失業者や孤児や貧民街の子供を雇い入れた。
その上、きちんと彼らの衣食住の世話をしてやった。
そうしてそうこうしているうちに俺は、いつの間にか多くの人々から頼られる、若者のリーダー的存在ってやつになっていた。
そしてその三年後……
俺はあの大金が、俺に対するお嬢様の大きな賭けだったことを知った。
お嬢様は賭けに勝ったと殿下は言った。しかしそれは俺にとっては誇らしいと同時に、とても切なくて苦しい、複雑な思いをする結果となった。
何故ならその時、カスタリアお嬢様とへラリーお嬢様、そしてカナディーク王子殿下から、彼らと俺の関係を知らされたからである。
俺はお嬢様の完全な信頼を得たと同時に、お嬢様とは永遠に結ばれないのだという最後通告を受けた。
もちろん最初から結ばれる可能性なんか全くなかったのだが。
✽✽✽
カスタリアお嬢様とカナディーク王子殿下、そしてへラリーお嬢様は二度のやり直しをして、今三度目の人生を生きているという。
しかもお嬢様がやり直しをする原因を作ったのは俺なのだという。
元々の人生でもその後の最初のやり直しの時も、俺がお嬢様を殺したことで、女神のやり直しが決定されたのだという。
俺がカスタリアお嬢様を殺しただと? 冗談にしても酷過ぎる。
最初はそんなことはとても信じられなかったし、酷く腹立たしかった。
しかも二度目の時はへラリーお嬢様を殺そうとしていのに、妹を庇った姉のカスタリア様を間違って殺してしまったというのだ。ふざけた話だ。
殺した理由はベルギル侯爵家の恨みだという。しかも俺は盗賊団のリーダーだったらしい。
俺が強盗団の首領で殺人犯だと?そんな馬鹿なことがあってたまるか!
俺は彼らの言うことが信じられず、怒り心頭になった。
この俺が人を殺した? カスタリアお嬢様を?
いくら侯爵が憎くてもあんな優しくて素晴らしい、しかも恩義のあるお嬢様達を殺そうとするわけがないじゃないか。俺は全く理解ができなかった。
三人は俺をからかっているだけに違いない。そう思い込もうとしたが、出会った頃の三人の視線がふと思い出された。
殿下の激しい怒りの目、へラリー様の怒りとともに怯える目、そしてカスタリア様は……そういえば怒りはなかったがそれでも酷く怯えていた。
だけどもしそれが本当の話なら、何故カスタリアお嬢様の目に恨みや憎しみの色がなかったんだろう? 一番俺を憎んで怒っているのはカスタリア様のはずなのに。
俺がそう思った時だった。ずっと黙っていたお嬢様が口を開いた。
「ゾイさん、本当にごめんなさい。あなたには記憶のない元の世界の話をしてしまって。今のゾイさんには全く関係のないことなのに。
それに、さっき話をしたゾイさんだって、本当は悪い人じゃなかったのよ。あの時の社会情勢が悪かったの。
それに、そんな廃退した王都にしてしまったのは貴族のせいだし、そもそもそのあなたたち一家を王都へ追いやってしまったのは、このベルギル侯爵家のせいだわ。
つまり、私達のせいなのよ。私達の方が悪かったの」
「確かに侯爵様はこう言ってはなんですが、薄情で酷い方でしたよ。でもだからと言って、お嬢様を恨むなんて筋違いだ」
「いいえ。以前の人生の時と今回の私では全然違うの。前の二度の人生を反省したからこそ、今のこの私があるのよ。
元の世界ではね、私は殺されたあの日に初めてあなたに会ったのよ。
それがどういう意味かわかる?
そう、私は一度も領地へ行かなかったし、教会の福祉活動にも参加していなかったの。
領民のことも、貧困に苦しんでいる人のことも、孤児になってしまった子供達の辛さにも何も考えていなかったの。
だから、私は殺されてしまっても仕方がなかったのよ」
「それは違う。貴族を御すことができなかったのは王家の責任だし、領民を顧みなかったのは侯爵夫妻のせいだ。
君は領地や領民のことをちゃんと考えていたよ。しかし、君を視察に行かせないようにしていたのは侯爵夫妻だ!」
カナディーク王子がお嬢様を庇うようにこう言った。
わかってる。その、元の世界というのを知らなくたって、カスタリアお嬢様に責任がなかったことくらいわかってる。
誰が悪かったのかと俺達三人が言い合っていると、へラリーお嬢様がこう言った。
「この現世ではお互い何も悪いことをしていないのだから、謝罪しあうなんて意味がないわ、殿下、お姉様。現世での過ちだけを謝罪すべきよ。
会った時からずっとあなたを睨んでいたこと、ごめんなさい。
私もあなたを嫌っていた訳じゃないし、あなたが悪い人じゃないことは最初からわかっていたわ。それに優秀で頼りがいのある人だってことも。
でも人は誰でも、この先どう変わるかなんてわからないでしょ。
だからあなたもいつか私達を憎む人になってしまうかも知れない。どうしてもその不安を払えなかったの。
本当にごめんなさい」
「それじゃあ、今は信じてもらえているんですね?」
俺がこう尋ねると三人は大きく、
「もちろんよ」
と頷いてくれた。それで俺はもういいやと吹っ切ることにした。
俺には以前の記憶がないんだから、今更どうしようもない。それに、今の俺はその過去の俺とは全く違う生き方をしているらしいし。
俺はお嬢様達と殿下の運命を変える手伝いを進んですることにした。その未来は、俺や家族や仲間達にも良いことに違いなかったからだ。
ただそれでも、俺の心が痛むことだけはどうしようもなかった
だから、暫くの間、彼らとは会わなかった。いや、会えなかったのだった。
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