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『魔刻』ー逢魔が時の防人ー  作者: 夢乃モグラ
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『魔刻』Ⅱ

遂に黒幕が姿を現す。

不安定な世界を正常な混沌に導こうとする。

人間こそが、清浄な世界を蝕む癌だ。

魔刻が来た。

『魔刻』Ⅱ

『紅超常現象研究所』

 超常現象の調査、研究、解明を目的として数十年前に、国家機関と民間財団が協力して創設された。主な活動は超常現象を装った商業及び犯罪活動を民間の立場から調査・解明・告発。

 しかし、公的機関とも繋がりがあり、特に警察公安とは綿密な協力関係にある。

 構成員の殆んどは、そこからの出向と言う未確認情報もあり。

 実はかなり謎の多い組織だ。にも拘わらず、誰も詮索しない。

 彼等が扱う事件は、殆ど現代の社会常識では理解出来ない。

 そんな事件を扱うのが彼等の仕事…。

 そんな事件の中には現代科学の常識を逸脱する、公表出来ない本物の怪異が混在する。

 その研究所の所長、紅ミサトの仕事は、表向きは、その類のトリックを暴くこと。

 そして、もしそれが真の『兆し』と認められるモノであるならば、人知れずその綻びを塞ぐこと。

 これこそが、公務を越えて彼女自身に課せられた本当の役割…。

 彼女の一族は、有史以来、これまで密かにそれを執り行って来た。必要ならば世界中で…。

「久方振りの本格的な仕事…。最近は『夢見』の警鐘回数も減って来ていたと言うのに、時として突発的に、こんな事態が噴き出して来る。これが存続事態に該当しないと言うのなら、当代の力も衰えたと云う事かしらね。そろそろ次代の選別と育成が必要な時期に来ているのかも…」

 呟きながら、ミサトは久々に『降魔の一族』としての仕事に執り掛かろうとしていた。

 校舎中に蔓延する妖気。何者かが、今まさに異界との扉を抉じ開けようとしている気配…。

「…覚醒せよ。時は来たれり」

 歩きながら、自分自身に言い聞かせる様に彼女は呟く。

 闘いに備えて彼女は、歩行・呼吸法を変えて、意識を切り換え始めていた。

 漏れ出す妖気を辿って、彼女が行き付いたのは理科塔校舎の屋上だった。

 屋上に続く、鉄の扉を押し開けて、彼女は屋上の床に足を踏み入れる。

 天空に輝く月光の元、彼女を出迎えたのはコンクリートの床の上で気を失う、見覚えのある寝間着姿の一人の少女と、学生服を着込んだ、天広学、やはり見覚えのある少年の姿だった。

「捻りが無い事…。やはり、彼方だったと言う訳ね、天広君。信じていたのに先生悲しいなァ…。今からでも遅くはないわよ。悔い改めて罪を償う気があるなら力になるわよ!」

 少年と目が合った。相変わらず他人を見下す様な眼だ。応える代わりに少年は鼻で笑う。

「先生、今さら詰まらないこと言うの止めにしましょうよ。…しかし、さすがは超常現象の専門家。最後の最後に、ここまで辿り着き、喰らい着いて来るなんて、正直、思っていませんでした」

「そんな態度取るの? ハァ、残念だわ。天才少年なんて言われているクセに、肝心な処で考えが貧弱なんだから…。仕方が無い。天広君、この世に悪の栄えた試しは無いわ。抵抗するなら容赦はしないわよ! 年貢の納め時よ! 観念なさい!」

「…怖いな、まるで今すぐ僕を殺す気でいるみたいだ。良いの? 事件の真相も聞き出さないで、僕を排除したら先生も困るんじゃない?」

「舐めるなクソガキ! 私の一存で、お前はもう即滅の処理対象だ!」

 本気で殺し兼ねない気迫でミサトは少年に詰め寄る。

 悪意を持って災いを齎さんとする者に対して弱腰で交渉を始めるのは禁物だ。

「フハハハハハハァーーーッ!」

 少年は、それに哄笑で応える。

「そんな怖い顔しないで聞いてよ先生。…ボクの先祖はドイツ人だったんだ」

 そして唐突に、一方的に、そんな事を語り始めたのだった。

「ハァ…、何を言ってるの?」

 少し混乱するミサト。動きが止まる。少年は構わず、淡々と喋り続ける。

「歴史上、悪名高いナチスの党員で、軍人で、軍医だった」

「まさか、…ウォム・フロム・フォン・ジーベス?」

 ミサトが呟く。少年は答える代わりに月光の元で微笑する。

 少年が話続けるのを、ミサトはもう遮ろうとはしなかった。

 むしろ吸い込まれる様に、そのままその話に聞き入っていたのだった。

「…一九三〇年代初めナチス・ドイツは大々的な調査団を中東に派遣していた。目的は聖杯・聖櫃・聖槍等、ナチスの提唱する欧州新秩序に歴史的及び宗教的な正当性を裏付ける聖遺物を発掘する事がその主な目的だった。その調査団に参加していたボクの祖先は、ヨルダン近郊で発掘された遺跡の中に、偶然、とんでもないモノを発見してしまった」

「とんでもないモノ…?」

 既に彼の話に聞き入っているミサトは譫言の様に呟き、問い返していた。

「壺さ。…最初は発見した先祖も下らないモノだと思ったらしい。けど、その直後に起った事件が、その認識を一変させた。最初の異変は他愛も無い事からだった。発掘関係者が次々に身体に変調を来して、軍医であった先祖の元に運び込まれた。患者の症状はそれぞれに違っていた。しかし、人体の持つ何らかの器官、機能が異様に発達し、或いは研ぎ澄まされていることが、全ての症状に共通していた。そして、軍医のW・ジーベスは、彼等の体の変調が、共通して発見された壺に接触した直後に始まっている事に注目した。そして、彼の、その推測を裏付ける様な事件が発生したのは、その直後の出来事だった」

「事件ね…」

「W・ジーベスは変調を来していた兵士の一人を診察していた。彼は多くいた患者の中でも、その兵士に現れた症状にもっとも注目していた。なぜなら、元々、強靭だったその兵士に現れた症状は、更により強靭な肉体への発展と進化だったからだ。ナチスの総統に異常な迄の超人願望があったことは現在でもツトに有名だ。彼はその願望を実現する為に、直轄の秘密研究機関を立ち上げ、権力で自由になる人間を密かに集めて、人体実験にも手を染めていたとも言われている。…実は、その秘密機関の設立の遠因となったのが、この事件だったんだ。その忌わしい事件が元で、その研究に没頭して行くことになった先祖は、その後、その機関設立の最大の功労者となり、最初で最後の総責任者となった。」

 それは知る人ぞ知る。…歴史的な事実だ。

 その頃のW・ジーベスの容貌は、まるで『悪魔』メフィストに出会い契約を持ち掛けられたファウストの様に、神秘主義に魅入られて行ったと、後世の歴史家は書き記す。

「…その日、ヨルダン近郊で起った悪夢の様な事件。それは、その兵士の発狂だった。きっかけは定かでは無い。事件が露見した時、その兵士は、既に親密だった戦友数名を素手で殺害するに至っていた。そして彼はその後も暴れ続け、彼が行動を停止するまでに、さらに銃器で武装した三十余名の兵士が犠牲になったと言われている。事件に遭遇したW・ジーベスは、その時の感想を手記に残してこう語っている。…『獣の様な、悪魔を見た』とね。W・ジーベスはその後、軍医を辞して、その壺の解明と研究に狂った様に埋没して行く。大戦中も、敗戦によってナチス・ドイツが崩壊し、戦犯として追われる身となったなったその後もね…。南米に逃げた彼は、家族と共に住居を転々としながら、尚も、その研究が途切れる事は無かった。初期の研究の段階で、肉体に変化を及ぼすのが、壺の内部に繁殖するカビに類似する一種の菌類の仕業であることが判って来た。世界中、何処を捜しても、その壺の中でしか繁殖せず、確認されたことの無いカビのね。そしてW・ジーベスは、そのカビに含まれる、どの成分が人体の染色体DNAに作用して、突然変異的に超人的な変化を及ぼすのかを特定し、その成分の抽出に成功した彼は、その因子を『D-ファクター』と呼称した…」

「『D』。理科塔で私が目にした本に書いてあった謎の元素記号…」

「その通り。成分不明。組成不明。未だに謎の物質である事以外、何も判っちゃいない。因みに元素記号では無い。『D』は組成は不明だが、明らかに有機配列を持つ物資だ。…故意か偶然か、あの時、理科塔で貴女が、あの本に興味を持って手に取るなんて思いもしなかった」

「勘は鋭い方なのよ私…」

 早い段階で彼女の第六感は真相に辿り着いていた訳だ。

 惜しむらくは彼女はその時点で、その事実に気付かなかった。

「大したものだよ。『D』の因子の発見によりW・ジーベスの研究は、やっと大詰めを迎えた様に思えたが、臨床実験を行い研究を継続する程の寿命が、彼にはもう残されてはいなかった。研究は、その後、ジーベス家の研究として、その子供に引き継がれ、更に『D』の解明は続けられた。しかし、彼の死によっても、戦犯を追及する戦勝国の手が止む事は無かった。彼等の狙いも、その頃には戦犯ウォン・フロム・フォン・ジーベス個人の戦争犯罪には無く、彼の残した研究の成果に移行していたからだ。彼の死は、むしろ追手を焦らせる結果となった。研究を引き継いだW・ジーベスの子は、身辺で頻繁に身の危険を感じる様になり。一時研究を封印して、南米の地を捨て、妻の故国に移り住む決意をした。それがこの東洋の島国だった訳さ。そこまでが僕の曽祖父の代の話になる。当時の我が一族にとってこの国は、とかく住み易く都合が良かった。嘗ての同盟国として、微かながらも信頼というものが在った。そして研究継続に充分な経済力と科学技術、何よりも平和と安息が在った。この地に移り住んだ曽祖父は、大学の客員教授で生計を立てながら、ジーベス家の負の歴史を消し去って生活した。祖父の代に、更に、この国の永住権を得て帰化し、姓も『天広』に変えた。その間、『D』の研究が消え去ることは無かったが、大きく進展することも無かった。祖父や父に、危険を犯してまで、研究を断行する熱意は無く。時には忘れ去られようとさえしていた。しかし、潰えることは無かった。人知れず受け継がれていたからさ、そう、この僕にね。曽祖父の遺品の中から、偶然、この頓挫していた研究の資料を見つけ出すや否や、僕は、この研究の虜になっていた。まるで遺伝子に組み込まれながら、眠っていた先祖の記憶が、突如、僕の中で再覚醒したかの様にね」

「まさか、彼方、消えた女の子達を使って実験を…。」

「当然、そのまさかさ。祖父や父には、自らの手を汚し、何を犠牲にしてでも一族の悲願を達成しようとする覚悟が欠けていた。僕には最初から、その躊躇いが無かった。だから、彼女等の体は人類進化の為に、有効に活用させてもらったよ…」

「彼女達は何処! 今何処に!?」

「何処にも居ない。…既に塵すら残っていない」

「彼方は、そんな身勝手で下らない、知的好奇心の為に、彼女達を実験の犠牲にしたと言う訳!」

「下らない? ハッ! これだから愚民は…」

 少年は悪びれもせず鼻で笑う。

「『D』因子を解明する僕の研究課題は、既に一世紀近く前の先祖が夢見た超人願望など超絶した段階にまで到達している。現代科学と古代魔術を融合した、この実験の成就は、人類を神の領域にまで昇華し得る。むしろ偉業と言っても過言では無い。研究は既にW・ジーベスの代で九割方の完成を見せていた。後は実践だけだった。だが、W・ジーベスは『D』因子を超人を創り出す為の特効薬程度にしか考えていなかったのに対し、僕の考えは、そこからも最初から違っていた。『D』因子とは、現世と別の次元を結び付ける触媒の様な『要素』なのだと仮定し、研究を続けた僕は確信した。『D』因子と現世の因子を、更に高純度に有機的に融合する事が出来れば、現世と異界との狭間を繋ぐ『先駆けの神獣』を作り出す事が出来ると。…異界から無限に取り出されるエネルギーは、増殖し世界を包み、人類全てを個の穢れから解放する」

 天広少年は、恍惚とした表情を形造って、さらに雄弁に語り続ける。

「…天啓を得た。僕は人類の救済を実践すべく、即座に動き始めていた。偉大な実験を遂行する為には、若く健康な少女の被験体が必要だ。僕は、早速、藤原まどか、新宮司珠樹、敷嶋瑤子、如月晴香の四人に目を付けた。実際、彼女等は、とても扱い易い連中だったよ。終始、見栄や恋愛なんて感情に振り回されて、振り払っても、振り払っても纏わり付いて来る。僕が、先ず目を付けたのは一番扱い易すそうな藤原まどかだった。承認欲求に満ちた虚栄心の塊の様な女で、迷信深く、三文の値打ちもないインチキ占いや、御呪いに振り回されている。だから彼女に、それとなく黒魔術の知識を植え付け、操るなんて造作も無いことだった。だが、藤原まどかの役目はそこまでだ。彼女は信用するに値しない人間だからだ。四人を僕の思惑通りに動かす為には、目的を共にする完全な協力者が必要不可欠だ。…新宮司珠樹には術式導入のキッカケを造ってもらう。如月晴香は疑り深く、自己顕示欲が強過ぎる。…そして簡単な消去法の後、協力者として僕が選んだのは敷嶋瑤子だった。…彼女が思った以上に役に立ったのは、僕にとっても思い掛けない幸運だった。内気で消極的な上辺とは裏腹に、一途で頑な、恋愛至上主義で、表面上の色恋で安易に動かされるバカな女…」

 語りながら少年はクククと笑う。独白は更に続く。

「駒は揃った。準備は万端。三ヵ月前、僕は遂に実験を実行に移した。…『種』なんて明かしてしまえば簡単なものさ。社会の目を欺く為に演出した『悪魔召喚』の儀式。『D』の力。五番目の来訪者。四人の中に存在するサクラの正体。残りの三人を思い通りに洗脳するなんて容易い。全ては僕の掌の中。当局の捜査も、勝手に混乱し、結局、ここに至るまで、僕の実験を妨げる者は、殆ど現れなかった。…そう、貴女が最初だ」

「…結局のところ、実験に固執する彼方の心理が、今以って私には判らない」

 黙って聞いていたミサトが口を開く。

「だから、『D』の力を実践するためさ…」

「『D』の力?」

「抽出した『D』の因子には強い幻覚作用がある。少量でも含飲すれば、人の判断力を著しく鈍らせる事も出来る。…実に興味深い」

「彼女達が儀式の時に飲んだ青い液体。…あれも『D』?」

「そう、あれも『D』…。『D』は全ての始まりであり、全ての根源足り得る。儀式の真の意味は『悪魔召喚』なんて御遊びでは無い。人間の遺伝子に組み込まれた封印。人類をその束縛から解き放つ事にある。四人はその為に選ばれた贄だった。特に敷嶋瑤子には感謝しているよ。『D』の効果を人間の全細胞に効果的に作用させる為には、発生初期の単細胞状態から『D』を浸透させる必要がある。…彼女は、その細胞と母体を僕に提供してくれたのだから」

「ハァ? まさか、彼方・・・」

 発言の意図を類推してみただけで、ミサトの背筋に虫唾が走る。

「そう、生命の発生の系統は、進化の系統を繰り返す。『D』の因子を受継いだ受精卵は、敷嶋瑤子を母体として成長し、藤原まどか、新宮司珠樹を喰らい。遂には母体を突き破って、この世に生まれ落ちた。『D』の因子を内包した生命は、生まれながらに封印の束縛から自由な存在となる。紹介しよう『先触れの悪魔』を、…ジーベスの末裔。…僕の不詳息子だよ」

 刹那、天広少年が身を翻し、屋上に設置される時計台の上に飛び乗った。

 最早、人間の動きとも思えない。同時に、その傍に備え付けられた貯水槽に異変が生じる。

 少年の着床と同時に背後の貯水槽の蓋が、勢い良く上空に向って弾け飛ぶ。

 そこから現れたのは液体? ドロドロとした肉の液体…。不定形な身体に目、鼻、口が集まって、顔の様な部分を形造る。あまりにも異形な姿…。

『狂っている』

 思いながらも、ミサトはただ黙ってその姿を睨め付けていた。

 夜の闇、高く上がった満月が天頂に届こうとしていた。

 唐突に、異形のモノが、触手を伸ばし、意識を失って床に転がる如月晴香に襲い掛かるが、寸前の処でミサトが身を翻して彼女を救い上げる。

「長らくのご清聴ありがとう。思い掛けず、貴女があまりにも早く追い付いて、この場に来たので、実は困っていたんだ。だが、もう時間稼ぎは充分だ。時は来た。この子は今日旅立つ。人類の新たな進化の始まりだ。同時にそれは、旧い人類の終焉を意味する。世界を抑圧者の封印から解き放つ時が来たのだ!」

 相変わらず、大衆の面前で大演説をするかの様に、勝ち誇り、大仰に振舞う少年を前に、ミサトは、むしろ、呆れ返って、大きな溜め息を漏らしていた。

「…黙って聞いていたけど、大体の事は判った。…『ホノリウス』の召喚魔法陣に、古代バビロニアの召喚呪法。科学的と強調するクセに、術式が異様に詳細な上に正確過ぎる。蓋を開けて見れば、結局は不可解な『D』の因子とやら頼みの計画実態。天広少年! 要するに彼方も最初から次元の狭間から抜け出そうとする悪しき存在に魅入られた哀れな操り人形に過ぎないと言うこと…」

「ナッ、何だとォ…?」

 図星を指摘された自覚があるのか、神経を逆撫でされた、天広少年の顔が醜く歪む。

 ミサトは如月晴香を少し離れた場所に下ろしながら、天広少年と向き合っていた。

「ええ、何度でも言って上げる。彼方は一人で踊る哀れな道化の操り人形に過ぎない。…人類に施された封印? では封印したのは誰? 神? 違う! 不用意に深淵を覗き込もうとするのは人間の所業が愚かなるが故よ! …私は宣告する。『古の契約』に従い『時告げる者達』の末裔として、汚染された貴様を、今、この場で排除する事を!」

「お前の方こそ! 何を言っているのか判ら無い!」

 天広少年が怒号を発すると同時、異形のモノの触手が、ミサトに向って殺到する。

 ミサトは、透かさず身構えると胸元で印を組んでいた。

「天・空・地、森羅万象に満ちる偉大なる力の根源よ! 我が元に集い給え! 汝の敵を滅ぼす攻守の武具となり給え! ハッァ!!」

 続けて呪文らしきを詠唱する。

 刹那、裂帛の気合と共に彼女から迸った不可解な力が少年に向って放たれていた。

 彼女の力は普段、不測の要因で暴走しないよう、自らに強い暗示を掛けて封印されている。

 呪文の詠唱は彼女の力を解放し管理する鍵なのだ。

 彼女から迸った衝撃が、コンクリートの床の上を切り裂く様に進む。

「ほう? 面白い手品を使う」

 しかし、少年は怯まない。軽業師の様に身を翻すと、アッサリその攻撃を避ける。

 衝撃波は収まらず、そのまま『先触れの悪魔』に向って突き進むが、異形の生物も素早く移動し、容易に、その一撃を避けていた。

 結局、直撃を受けた貯水槽の残骸だけが、爆音と共に大破した。

「残念。そんな緩い攻撃では僕達を捉える事は出来ない。しかし、意外だな、こんな力を使える人間が存在しているなんて…。『時告げる者』の一族なんて初めて聞いた。ジーベスの研究成果を狙う、戦勝国の追跡者共とも別物の様だ。貴女一体何者なのです。…これはこれで実に興味深い」

 天広少年は、すかさず素早く移動し、ミサトの背後に回り込み、意識を失った状態で横たわる如月晴香の傍に立つ。盾にする様に、彼女の腰に手を回して抱き起こし、ニヤリと笑っていた。

「どこまでも卑怯な手を取る。彼方って本当に最低な子ね!」

「何とでも。偉大なる所業を達成させる為には、あらゆる手段が肯定される。元より、人の命なんてゴミ屑の様なものです。それはこの娘の命も、僕の命とて同じこと…」

「だから! 誰の命も屑の様に扱って言い訳ないでしょう! 何の罪も無い娘達を、既に三人も死に至らしめておきながら!」

「今さらですね。この如月晴香が最後の贄です。これによって実験は最終段階に移行する。『先触れの神魔』は、彼女等を吸収して、更に強大な力を得。見苦しい死体は跡形も残らない。死体の残らない事件を裁ける法は存在しない。実に合理的だ。…『先触れの悪魔』はいわば起爆装置だ。覚醒すれば、世界を飲み込み、汚れたこの世を浄化し得る核となる!」

「下らないことばかりを律義に守ろうするな! それが端から夢想だと言っている! この醜い異形で世界を満たす事が、人の世の何の救済に繋がると言うのか?!」

「醜い異形? 『先触れの悪魔』の身体は、贄となった女の子達の成りの果てです。…どうです先生? 人間一皮剥けば、あれが本性なのですよ。くだらぬ美醜に惑わされない分、むしろ、美しい理想を顕現しているとも言える」

 天広少年の、どこまでも不遜な態度。

 堪え切れずにミサトは、少年を再び睨み付けていた。

 捻じ曲がった思想の矯正は不可能。対話はどこまで行っても平行線。交わる事は無い。

「天広! 貴様一体はどこまで狂っている!」

「狂ってる? 間違ってはいけないな先生、僕は正常ですよ。…狂っていると言うのなら、むしろ、醜いこの世界の方だ!」

「言葉を弄するな! 愚か者の讒言になど聞く耳は持たない!」

「愚か者ね…」

 少年は更に口元に嘲笑を形造る。

「先生、では、良い事を教えて上げましょう。彼女達四人が、悪魔との契約の代償に何を差し出そうとしたのかを…」

「…何ィ?」 

「藤原まどかも、敷嶋瑤子も、如月晴香も、新宮司珠樹でさえも、悪魔に扮した僕が受け取った契約の紙に何と書いて差し出したのか…。彼女等は書いていたのですよ。お互いが悪魔との契約の代償に、他の三人の命を差し出すとね。…自分の幸せの為なら友人と言えど平気で犠牲にする。あいつ等は、そんな身勝手な奴等でしかない。そんな最低の奴等に貴女は生きる価値があると言うのかァ!」

「黙れ! 彼女等をそう追い込んだのも、結局は貴様の所業故では無いかァ!」

 全ての迷いは払拭した、怒りに任せてミサトは再び印を組み精神を集中しようとした。

「遅い!」

 しかし、いつ迄もそんな単調な攻撃が通用するものでは無い。四方から伸びて来た肉の触手に、彼女の身体は、たちまち羽交い締めにされてしまったのだった。

 天広少年に気を取られている内に『先触れの悪魔』が身体を紐状に変形させて、自分の足元に近付かせていた事に、彼女は気付いていなかったのである。

「しまった!」と思った時にはもう遅い。

 彼女は既に身動きが取れなくなって床に転がされていた。

「これで詰め(チェックメイト)かな? 何度も同じ手が通用すると思っている、先生って本当にお馬鹿さん」

 少年はコロコロと笑う。

「キぃ~! 何ですってぇ! このォ! 放しなさいよ!」

 暴れるミサトを尻目に、天広少年は勝ち誇った様な笑みを口元に形造る。

 不定形な異形の悪魔の中で、目を思わせる部分から視線が少年に向って注がれていた。

「さあ、『先触れの悪魔』よ…。旅立ちの時は来た。受け取るがいい。最後の生贄だ。これでお前は飛び立てる。そして、無限に増殖し、世界を本来在るべき混沌に誘へ」

 ミサトが動けなくなった隙に、天広少年は如月晴香の身体を頭の上に持ち上げる。

 まるで重さなど関係無い様に、片手で、である。

 最早、物理の法則を無視して横たわった状態ままで、風船の様に彼女の身体は持ち上がる。

 既に人の技とは言い難い。重力とかを操っているのなら地味に凄い。

 超能力・魔力・神通力の段階の話と言った方が早い。

 天広少年の頭の位置を越えて、さらに持ち上げられる如月晴香の身体に、『先触れの悪魔』の触手が伸び、絡み付いていった。

「クソッ!」

 妨害したいが身動きが取れない。ミサトは目を背ける。

 如月晴香の身体が、大きな口を開けた異形の物体に丸呑みされ、肉塊の中に取り込まれて行く。

 彼女を取り込むと同時、異形の肉塊はこれまでにも増して、沸き立つ様な増殖をし始めていた。

 不定形な身体から、新たな触手が勢い良く飛び出し、理科塔ごと取り込んでしまいそうな勢いで、屋上の石床や、校舎の外壁にまで突き立つ。


 この理科塔は嘗て、旧軍の研究施設の一部であった。

 大戦が勃発する少し前から、諌山軍司なる陸軍の技術士官の指揮管理の元、同盟国と同様、ここでは魔道・鬼道に関わる生体兵器の実験・開発が進められていた。

 W・ジーベス率いる秘密機関とも親密な協力関係にあり、活動期間中、頻繁に情報交換していた過去の事実など、彼等は知る由も無い筈だ。

 大戦の末期。敗戦間近の同盟国から『D』因子の献体が持ち込まれ、本土決戦に備えて、魔道兵器の完成を急ぐ、マッド・サイエンティストと化した件の技術士官の手によって、既に過去にも一度、同じこの場所で『増殖する異形の悪魔』が世に解き放たれ掛けた事実があると言うことも…。

 少年は一体、何に魅かれたのだろうか?

 

 不定形の身体が波打つ度に、『先触れの悪魔』の異形の体は、波打つ様に脈動し、留まる処なく、ムクムクと膨張し始めていた。

「ハハハッ! 僕の予想した通りだ! 良いぞ!『|先触れ(デビルオブ)の悪魔(オーメン)』よ。全てを同化し、全てを喰らい尽くせ。そうだな…」

 そのまま天広少年の、禍々しい目がミサトに注がれる。

「先ずは手始めに、その女を喰らい尽くせ。最初の贄だ!」

「ナッ、何ですってぇ~?!」

 ミサトは触手の束縛から逃れようと藻掻くが、彼女の身体は天広少年が命じた通り、異形の悪魔のドロドロとした体の上に釣り揚げられていた。

「キャァーーーッ! 冗談ポイ!」

「先生、何か言い残す事は?」

「ねぇ、ねぇ、天広君、もう一回話し合ってみようかなァ…、なんて思わない?」

 この期に及んで、猫撫で声で命乞いが出来るミサトの神経に、呆れる天広少年…。

『一体どういう神経をしているだこの女は? ふざけているのか? 馬鹿なのか? それとも余裕があるとでも言うのか?』

 こめかみの辺りに青筋が立つ。気を取り直して命じていた。

「先生の犠牲は無駄にはしません。迷わず成仏して下さい。()れ、『先触れの悪魔』よ!」

「キャァーーーッ! 堪忍してぇ!」

 しかし、足の下でうねうねと波打つ物体に、彼女が投げ込まれようとした時、再び事態は急変していたのである。

 突如、理科塔全体を包み込む様に沸き上がった光の壁が、屋上から湧き上る様に起き上がり始めていた『先触れの悪魔』の異形の体を、再び叩き付ける様に屋上の床に押し戻していたのだ。

「何だァ!」

 突然の、予定外の事態に、天広少年の表情も動揺の色を隠し切れなかった。

『…天は天、地は地へ。万物の封印に背きし者よ。古の契約に基づき我は汝に裁きを与えん。葛城の霊峰に佇みし、偉大なる山の者達の長の名に措いて災いを禁ず。忌わしき禁忌を封じる光の加護よ。我が召喚に応え、我が手の内に集い給え…』

 何処からか、何者かが呪文を詠唱する声が聞こえる。

 呪法が完成するに伴い『異形の悪魔』を抑え込む、光の力は更に増大した。

 続けて幾つもの光の筋が、理科塔を中心にハッキリとした文様を形造る。

 それが巨大な魔法円だと判るのに、彼等は暫くの時間を要した。

「光の紋章結界術法…。これは『葛城光護法』!?」

 光の抑圧にも、彼女を締め付ける触手は緩まない。

 しかし、その間にも周囲に起った異変を、彼女は冷静に観測する。

 ミサトには、一目でそれが何かハッキリと判っていた。そして、

「エッ、てか、葛城ィ?!」

 意図せず頭に浮かび、思わず声に出してしまった自分の言葉に彼女は驚然とし、一人乗り突っ込みをするかの様に、思わず呟いていたのだった。

 葛城の名を冠する男が彼女の傍にも一人いた。…これは、偶然にしては出来過ぎている。

 その時、彼女は突然、今迄に無かった何者かの確かな気配を、自分の直ぐ近くに感じ取っていた。天広少年も、同じ頃、同じ様に、気配を感じた同じ方向を振り向く。

 屋上の端を取り囲む防護柵(フェンス)の上、そこには居たのだ。いつから居たのか。いつの間にそこに現れたのか。鎧姿に陣羽織。戦国武将の様な恰好をした奇妙な男が…。

 嘴の様に尖った兜と面頬が巨大な鳥を連想させた。題材(モチーフ)を類推するなら烏天狗か、迦楼羅神かと思われる。緻密な当世具足式の鎧の上に羽織るのは、動物の皮を鞣した黒茶の陣羽織だ。

 戦いに挑む、その出で立ちは、正しく葛城天狗の流れを酌む者が故か…。


 大和朝廷設立以前、大和の国、葛城の地、金剛山麓には葛城王朝を名乗る集団が存在したと、記紀にも語られる。彼等は、『山の長』と言われる大天狗に率いられた妖魔の集団であるとも言われ、その後平安時代に編纂された日本異霊記には、飛鳥時代頃、同地には、役小角に率いれられた鬼の集団がしたとの記録がある。両勢力が同じ流れを酌む者かは判らないが、共通しているのは、存在したと伝わる場所と、超常的な力を持った集団であったと言うこと、明確に滅び去った記録が無く、歴史の闇に消えている存在であると言うこと…。

 葛城王朝は、大和朝廷の礎となり、天狗は今も、山岳信仰の中に生き、役小角は、修行の為、唐天竺に飛立ち、生死は不明、その後も自らが施し、残した封印が破られそうになると、何処からともなく言葉を放ち、奇跡を現したとも伝わる。

 彼等が流れ着いたのは、歴史の裏舞台。

 彼等もまた彼女等と同じく、現世の民を異界からの干渉から守る『境界線の防人』

 

 そんな恰好をして鎧兜で顔を覆っていても、ミサトにはそれが誰か直ぐに判った。

 同じ守護霊を従え、経緯は不明だが、守護霊と同じ太刀『鬼切安綱』を腰に帯びたその男が…。

「何者だ貴様は! 今時、東〇の特撮ヒーローか!」

 天広少年は厳しく誰何する。これまで以上に感情的な物言いだ。続け様に、訳の分からない存在が介入して来て、流石の彼も動揺が隠し切れ無くなったらしい。

「確かに。大河の撮影には絶好の月夜だ。しかも今は逢魔ヶ時、星の合を得て魔性の力が増す時間。しかし、策士、策に溺れる。…長話をしてくれて本当に助かったよ。お陰で、周辺に結界を張る時間が稼げた。…最早、『先触れの悪魔』は、この地より飛立つこと能わず」

 異界より、浸食する異形が漏れ出す事件は、彼等にとっては珍しい事態では無い。

 それ故に、経験も対策も万全だ。僅かでも逃す事は在り得ない。

「…その声、数学の臨時教員の葛城だな。彼方に、そんなイカれた趣味が在るとは知らなかったよ。彼方も、そこの女と同類だったと言う訳か?」

「いかにも…」

 葛城は微かにコクリと頷く。

「ならば、さっさとこの方円を納めることだ。…お仲間が、どうなっても構わないと言うのなら話は別だけどな!?」

 例によってミサトの身柄を質に取って話を進めようとする天広少年…。

 しかし、葛城は怯む様子を見せない。鼻で笑う様な音だけが聞こえる。

 僅かと言えども、悪魔とは取引しない。それは退魔師の鉄則だ。

「思い上がるなよ小僧…。増殖する異形が異界より漏れ出でた程度の事で『揣摩の本家人』の動きが束縛出来るなどと本気で思っているのか? …愚かを通り越して、これはもはや哀れだ」

「ハァ? 何を言ってやがる?!」

「香津魅様が、その気になれば、貴様などモノの三秒であの世行よ!」

「コラコラコラァ! 勝手に話進めんじゃないわよ葛城! そんな簡単な訳無いでしょ! 勝手な講釈垂れる前に始末付けるか、サッサと手を貸すかしなさい!」 

 彼女を無視して進んで行く話に、ミサトはやっと割り込む事が出来た。

「出来ないのですか?」

 改めて事務的な口調で葛城はミサトに問い返す。

「せめて、この触手だけでも何とかしてよ。…印が組めなきゃ結構面倒なのよ」

「仕方ありませんねぇ」

「夫婦漫才か! お前等は! それでおめおめと僕が何とかさせるとでも本気で思っているのか?!『先触れの悪魔』の前では、ただの人間の力など無力だと思い知れ!」

「夫婦だなんて、そんな…」

 ミサトがまた場違いな照れ方をする。憤った天広少年が、それを無視して命じると同時、自由に動く異形の悪魔の触手が、鎧を着込んだ葛城に襲い掛かる。

「残念。一応人間の分類には入つもりでは居るのだが、ただの人間では無いのだよね」

 しかし、軽口を叩く様に飄然と言ったかと思うと、葛城の身体は、触手の動きを遥かに凌駕する速さで身を翻していた。瞬く間に殺到する触手の間を擦り抜け、そして腰に帯びる太刀『鬼切安綱』を抜き払い。ミサトを束縛する触手だけを正確に斬り裂いていた。

「ナイス! 葛城!」

 触手の束縛から自由になると同時、再び彼女を捉えようと飛来する触手から身を翻し、ミサトは空かさず両手で印を組んで、呪を唱えていた。

「我が分身よ。古の盟約の元、我が手の中に降り給え!」

 呪文の詠唱が終わると同時に、その場に奇跡の様な情景が引き起こされていた。

 雲を突き破り、天空から一条の光が彼女の手元に降り立ったのだ。彼女が、その眩い光の一隅を鷲掴みにすると、彼女の手の中には一振りの剣が納まっていた。

 彼女の分身、神剣『魅沙都』…。

 神剣と一体化した彼女に、もはや敵は無かった。

 次の瞬間、勝敗はアッサリと決していた。

「滅す!」

 増殖する異形は、その一言のもと振り落とされた一振りによって、この地上から姿を消していた。

 触媒が在る限り増殖は、それを伝って無限に広がる。しかし、浄化は汚染を辿って、跡形もなくそれを滅し続け、それが消え去るまで拡がり続ける。

 圧倒的な力の流出。天広少年も、その力の暴走に逆らう術は無かった。

「アッ………」

 最期の言葉を発する間も無く。光りの濁流に呑まれた。そして、そのまま消え去った。

 彼女にとって、それはホンの僅かな力を解放しただけに過ぎない。

 殲滅対象の消滅を確認した後で、ミサトは神剣から手を放す。

 人を殺して快感に耽る性癖は彼女には無い。

 仕事とは言え、人を死に至らしめた後は、いつも虚しい。

 だから、助けれる命は、可能な限り救い上げたい。

 今度は単純な力の解放では無い。

 神剣は、彼女目の前で姿を変えた。

 光の環となって、彼女の手の腕に嵌る。 

『逢魔が時』…。それは彼女等にとっても力が最大限に発揮される時であった。

 ミサトは両手を合わせて祈る様な姿勢をとる。

 深呼吸をして精神を統一すると、今度は囁く様に詠唱し始めていた。

「我が手の内に集結せよ。嘗て彼女等であったモノ達よ。…その内に、嘗て彼女等の一部であったとの記憶を刻み込むモノ達よ」

 飛散した『先触れの悪魔』であったモノの残骸に、変化が現れ始めたのはその直後の事である。

 彼女を中心として、正面・背後・左右両面に一ずつ、俄かに現れた四つの渦の元に、細切れになった『先触れの悪魔』の肉片が引き込まれ始めたのだ。

 暫くすると、渦に集った肉片は、さらにハッキリとした形を成した。

 脳髄、頭蓋、頸骨、背骨、骨格を軸にして集う様に、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、大腸、小腸、更にその上を覆う様に肋骨、筋肉、そして最後に皮膚が再構成され、肉の渦は、宙に浮かぶ四つの真っ白な若い女性の肢体となった。ミサトが仕上げにユックリと目を開けると、迸った電流が、宙空に浮かぶ彼女等の間を忙しく駆け巡った。

 電流に翻弄されて、忙しく痙攣した後に、ユックリと床の上に下ろされた時には、彼女等の体の内には再び生きる者の鼓動が蘇っていた。

 そして、蘇った彼女等は何事も無かったかの様に、深い安らかな眠りの内にあった。

 施術を終えて、ミサトは深い呼吸と共に、張り詰めていた緊張の糸を緩めた。


         ☆ミ


彼女の本当の仕事。

長年に渡って、不安定な世界の均衡を保ってきた。

たとえ自分は滅んだとしても。

この程度の浸食は大した危機でも無い。


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