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第30話 予選③

『あー暇』

「黙って見とけや……」


 予選も最終10戦目。俺たちは予選通過は確実といっていいほどポイントを積み重ねていた。


 と油断していて2人が離れた位置にいたところを運悪く敵に見つかり、Xは無事死亡。

 一応、仇は討ったから許してほしいんだが、Xは絶賛不機嫌である。


『いいよね、君は私の物資も盗んで楽しくやれるんだもんね』

「盗むって……」


 このゲームは倒した敵の物資だけではなく、死んだ味方の物資も入手することができる。

 死んだ人間は何もすることができないので俺は当然のようにXの物資もいただいたのだったが、どうやらその絵面えづらを見ているXは気に入らなかったらしい。俺のプレイ画面を見ながら文句ブーブーである。しかもネチネチ言ってくるからまたたちが悪い。


「まあ俺のプレイを見て勉強することだな」

『はあ? 君こそそのフラフラとどっかに行くスタイルを直したら? それとも野生にでも帰る?』

「あ、なんだと? おいコラ喧嘩売ってんのかおい」

『君の頭じゃ喧嘩売ってるってこともわかんないか』

「ぷぷぷ、俺だったら1人でも倒せてたけどね。無様に死ぬとはな」

『なに、君もしかして私相手に喧嘩売ってる?』


 あーXの声を遮断してえ。めっちゃ1人でのんびり戦いたいわ。耳からぐちぐち言われるとストレスが音速でたまっていくわ。


「――あ」


 とか言ってたら、近くの敵の足音に気付かずキルされた。


『ぷぷぷ。あれ、1人で倒せるんじゃなかったの?』

「うっせえ、お前がいらんことばっか喋ってるから足音を聞き逃したんだよ‼」

『言い訳だけは一丁前。モテない男の典型的なパターンだね』

「てっめえ、覚えとけよ……‼」


 というわけで最終試合は何もすることなくおっちんだ。


 まあそれでも予選通過というか、1位は固いだろう。

 というか予選でつまずいてたら、決勝でボコボコにされる。決勝はここよりもレベルが高いはずだ。


「……そういえば聞いてなかったけど、優勝賞品ってなんなんだ?」

『優勝賞品? ああ、渋谷にある〇〇ってお店の商品券50万円分だよ』

「ご、ごじゅうまんえん⁉ てかあそこって、金持ちばっか入るとこだろ……使い道がねえな……」

『大丈夫だよ。チキンな君のために一緒に行ってあげるから』

「全身黒ずくめのやつとはどう考えても一緒にいけねえよ」


 そもそもあれは公共の場に出していい服装じゃない。普通に通報される。というかなんなら俺が通報する。


『……優勝したら、普通の格好でいくよ』


 とそこで、Xから思いがけぬ展開が来たことに、俺は驚く。まさかそんなことをXが言うとは思いもよらなかった。


「なんだよ、どういう風の吹き回しだ?」

『いや…………べ、べつになんでもないけど』

「なんだよ歯切れの悪い」

『ほ、ほら、そういうご褒美があった方が君も頑張るかなって』

「…………」


 なんだこいつ。大会に本気だから言ってんのか、ただ自信があり余ってるのかどっちか分かんねえ……。恥ずかしそうに言ってるから前者っぽいけど、ただ俺のことを美少女に弱い雑魚男子だと思っている可能性もある。


 だが残念だ、俺は美少女などには興味なんか1ミリもない。


 堂々と断ろう。別にあれだぞ、初対面の女子と喋るのが怖いとか、めちゃくちゃ美少女だった時に俺がいたたまれない気持ちになるとか、そういうのを考えて言っているわけじゃないからな。決してそうじゃない。


『あ、でも君は女子と喋れないか』

「…………」


 だが俺が断る前に、彼女にバレてしまっていた。

 とってもあざけりを含んだニュアンスで、言われてしまっていた。


 ――――こいつ……‼


「いいだろう、やってやろうじゃねえか‼ 優勝してお前と〇〇に行ってやるよこんにゃろ‼」

『…………単純だね』


 俺も男を見せる時が来たかもしれない。


 しかし俺たちは失念していた。

 この会話が、現在進行形でYoutubeに垂れ流されていたことを。


 このリスナーを無視した2人だけの喧嘩をどういうわけか仲が良いと解釈した実況解説の2人により、俺たちは決勝で『チームカップル』として参戦することになったのだった。

 予選1位ではあるが、なんとなく負けた気がする……。


 あと、長谷川から爆笑のラインが来たのが一番むかつく。


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