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プロローグ 世界最高峰の戦い

 とある海外の有名配信者が、バトルロワイヤル系のTPSゲームをしていた。


 個人戦でそれぞれが武器を拾って戦う。最後まで生き残った者が勝者。簡単なルールだ。


 そしてこの配信者はそのゲーム「Top of Battle Field」通称ToBFにおいて世界最強と謳われている男だった。


「(あ~暇だな~面白れぇことねえのかよ)」


 すでに8キル。つまり、8人ものプレイヤーを倒してきていた。

 彼――Tombに普通のマッチングで勝つことができるのは、もう同じ実力を持つようなプロプレイヤーしかいなくなっていた。


「(おい、なんか面白い話ないか?)」


 配信をしながら、リスナーに笑いながら聞く。

 もちろんジョークだが、それくらい彼には余裕があった。


 荒野をただ一人で闊歩する。誰にも彼を止めることはできない。


 ――そう誰もが思っていた。


 パーンという銃声がはるか遠くで聞こえた、そして次の瞬間。


「Oh⁉ What a F〇ck⁉」


 HPゲージがごっそり削られ、もう緑色のゲージは見えるか見えないかというくらいだった。

 突然の事態にTombも動転したが、さすがは一線級のプロ。すぐさま弾が飛来してきた方角を認識し身を隠す。


「(やっべ~、レベル3のヘルメット着てなかったら死んでたな)」


 笑いながら注射器を体に打って回復をする。ひとまず安全地帯のようだったので落ち着いて回復を入れる。


「(まったく、これだからスナイパーは怖いぜ。誰でも運があればこれだからな)」


 ともすればゲームと相手に対する悪口に聞こえるが、Tombはこのゲームの仕様を気に入っていた。

 誰でも強いやつに勝てなきゃゲームとして面白くない。弱いやつがただひたすら強者に蹂躙されるだけだったら、ゲームの人口も減ってしまうし何よりゲームとして成り立っていない。


「(ふう、よし。じゃあ、俺に喧嘩売ってきたことを後悔させてやりますか)」


 レッツゴーと言って意気揚々と顔を出す。


 だがしかし、その前に後ろで銃声。


「(あ? 別に敵か?)」


 内心苛立ちながら、それでも明らかに近い敵を無視することはできない。

 どうせあのスナイパーは1000メートルは離れているから、さきに後ろの敵を始末する決断をした。


 後ろを振り向いて、銃の照準を相手の体に合わせる。


 その瞬間。


「(…………は?)」


 その敵が死んでいた。

 頭を一発撃ちぬかれ、Tombがエイムを合わせていた敵はすでに死体のボックスに変わっていた。


 その事実を認識するのにはさすがのTombも時間がかかった。

 なぜなら、今しがたした銃声は、さっきと同じくらい離れたところからのひとつだけだったのだから。


「(八ッ)」


 そして、Tombの意識がいきなりゲームすべてに向く。


「(最高だぜお前ら。やべえ奴がいるぞ)」


 まぐれだと思った先ほどの自分を、彼は恥じた。

 なぜなら、さっきのがまぐれだと思ったのは、「自分では同じことができない」からだ。


「(あいつは俺より強い)」


 たった二発で断定をして彼に、Youtubeのコメント欄は賛否両論、というより否定派のほうが多かった。

 ただのまぐれだ、あんなのは人間ができることじゃない。そう誰もが口にした。


 しかし、そんなコメントを無視してTombは傾斜を利用しながら射線を通さないように距離を詰める。

 相手のほうが高所(ハイグラウンド)を取っているのは、さすがに分が悪い。


「(さあやろうぜ死神。お前になら殺されても構わん。戦おう」


 そしてニヤリと笑った。


(Tomb)に連れてってやるぜ)」


 すっかり戦闘モードになってしまった彼は手に汗を握りながらマウスを動かす。

 久しぶりの強敵に、自分以上の強敵に彼はたしかに高揚感を覚えていた。


 荒野を駆け抜ける一筋の狩人。そして彼らに遠慮をするかのように、ほかのプレイヤーたちはだれ一人として姿を見せない。


 そして、Tombの目はとうとう相手を見つける。


「(やあ、会えたな)」


 200から300メートルの距離。まずはあいさつ代わりにTombはスナイピングする。


 ――はずれ。少し手元が狂ったようだ。さっきまであんな舐めたプレーをしていたのだから仕方ない。それに相手が気づいていないうちに仕留めても面白くない。


 だが、そんな余裕に思っていた彼はすぐに認識を改めることになる。


 なぜなら、先ほどまで違う方向を見ていたはずの相手が体を隠す寸前のTombの体に一発、スナイパーを命中させたからだった。


「(はァ⁉ おいおい、一体どこまで規格外なんだよ)」


 すぐさま回復を挟むTomb。幸い相手も振り向きざまということでヘッドショットを決められていない。


 回復をしながら、彼は反省をしていた。まだ相手をどこかで見くびっていた。相手の実力を過小評価していて、慢心していた。


「(やばいな……。さすがにこれじゃあかっこ悪い)」


 そこで、Tombのスイッチが完全に切り替わる。

 黙ったまま落ち着いてスナイパーに弾を込める。


 配信をしているのにもかかわらず、ただの一言もしゃべらず集中する。

 そしてそのことに、視聴者全員がかたずをのんで見守っていた。


「(よし)」


 もう驕りも慢心もない。

 あるのは、相手を絶対に殺すというただ純粋な殺気。


 慎重にスコープを覗いて、そして相手の頭に照準を合わせる。

 発砲。命中。

 だが、ヘッドショットではない。まだ相手は生きている。


 そして同時に相手の弾を食らってしまう。


「(こっちも当てたはずなのに、あいつ当ててきたぞ‼)」


 もはや子供のようにはしゃぐTomb。このゲームはダメージを食らうと画面が横に振れる習性がある。

 だがそれでも相手は落ち着いて当ててきたという事実。そのことが、Tombにはうれしくてしょうがなかったのだった。


「(決着をつけようぜ。どっちが最強なのか)」


 この機会を逃せばもう今相対している敵とは戦えない、そんな予感が彼の中にはあった。


 1000万人をこえるユーザーがいる中で、一度にマッチングする人数は100人。ラストチャンスであることは確率論的にも正しい。


 でもそれ以上に直感的なものが、彼に訴えていた。ここで雌雄しゆうを決さなければもう二度とできないと。


 マウスの左クリックにかかる指が震えている。

 緊張によるものか、それとも高ぶりによるものか。


 ――どちらでもよかった。


 最終決戦。埃が舞う荒野で静かに終わる決闘。


 50万人が観戦したその試合は。


 Tombの負けに終わった。


「(は、ははは。ま、負けたか)」


 頭にライフルを受けたTombは、それでもさわやかに笑っていた。あっけなく終わってしまった戦いを寂しがるように。

 そしてTombを掃除し終えた相手は、無機質に彼の墓を漁っている。


「(相手は何の思い入れもないんだろうな。俺にとってはこいつは強敵だったが、こいつにとっては俺のことなんてそこらの雑兵ぞうひょうと同じに違いない)」


 ただ事実を言うように、彼は言う。そこに感情はなく、いや、むしろうれしそうだったか。


 視聴者は唖然としている。あのTombにそこまで言わせるのか。本当にそのプレイヤーは上手いのか。実力が足りないがゆえに、その判断すら難しかった。


「(あ~あっけねえ~。なんかここまで簡単に負けると、相手に申し訳ねえわ)」


 笑いながらそのプレイヤーの観戦をするTomb。

 そのあともプレイヤーをバッタバッタとなぎ倒していく姿が、Tombのモニターに映っていた。


「(もう一回戦いてえな。アメリカ人かな。大会とかでないのかな)」


 ここまでの実力がある選手、USAがいくら広くともそうそう見れるものじゃない。

 しかも、プレイやーIDも聞いたことのない名前だから、おそらく配信などもやっていないのだろう。そのことが、少し残念だった。


「(siX_senseか……。おまえには一体何が見えてるんだ?)」


 この対戦、そしてTombがこのプレイヤーに賞賛を送ったことで、彼は一躍有名になり一夜にしてアメリカ、およびその他の国のトッププレイヤーも注目することになった。


 しかし、まだ誰も知らない。


 このプレイヤーはまだ16歳であり、そしてこの次の日にはゲーム内に現れなくなることを。


 彼も現実世界では、力なきたった一人の少年であることを。


知っていらっしゃる方がいるかもしれませんが、このプロローグは実際にあった動画の切り抜きをもとに作られたものです。それを、もし相手が日本人で高校生だったら、という発想で書きました。

実際に見たい人は、「shroud pubg 最高」と調べると一番上に出てくると思います。

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