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46 ダンジョン・コアを探そう(2)

 交代で仮眠をとり、夜明けをいくらか過ぎたあたりで揃って簡素な朝食を済ませ、グリフィンたちは草原を見渡す。


「ここからでも、果てがわからないね」

「焚きつけを拾いに行った限りでは、セヴェルスの言っていた魔物としか遭遇もしておらんしな。ただ、蜂が厄介じゃったのう」

「そうなの?」

「ああ。紅群蜂(ル・ビー)の見かけは赤いこと以外普通の蜂とそう変わらないが、群れでこちらに来るのが厄介だな」


 ダンジョンであることを除けば、ただの草原と言えなくもない風景。

 遠くでは魔物どうしが争っているのも見える。ただ、それは動物が魔物に置き換わっただけだろう。


「ダンジョン・コアを探す手がかりは特にないのが厄介じゃ。グリフィン、頼りにしておるぞ」

「ええー。おれ戦えないから、魔物に囲まれたら死んじゃうよ」


 シャクラに肩をたたかれ、グリフィンはやる気のない声で返事をする。

 実際問題として、グリフィン1人で倒せる魔物はいない。素手のままではただの野良犬にすら負けるのがグリフィンだ。


「……いっそ尾でくくり上げておくか? いや、それでは目立つ獲物として見られそうじゃな」

「わ、わかったよ。おれだって武器のひとつくらいは持ってるから、後ろの方で応援を頑張るよ」

「そこは『戦うよ』じゃないんだな」

「戦うっていうのは、実力がたいして変わらないときに使える言葉なんだよ。荷物運びくらいしかしてないおれに魔物の相手は荷が重いんだからね」


 グリフィンはたたかれた肩をさすりながら、空間魔術(ストレージ)に入れていた自分の武器を取り出す。

 それは藍色の針。グリフィンの人差し指ほどの長さしかなく、細い中に見えるかどうかの金細工が施されている。


「武器ではなく、美術品じゃないか?」

「おれもそう思ったんだけど、くれたヒト……ヒト? 曰く、幽霊(ゴースト)系と硬いものには通りにくいけど強力な毒針なんだって。これを持って戦ったことはちょっとしかないからなんとも言えないし、近づかないと当たらないけどね」

「なんにせよ、それであれば自らを守るくらいはできそうじゃな。ここを降りて探索に行こうぞ」


 荷物をまとめ、グリフィンたちは安全地帯を出る。

 改めて見回しても、どの方向も草原と時折雑木林があるだけで異常らしき異常は見抜けない。

 いっそカスタネットを使って探るべきか、と考えたグリフィンは、虫の羽音が近づいてくることに気付きシャクラとセヴェルスへ声をかけた。


「虫が来る。2人の話してた紅群蜂(ル・ビー)かも」

「数は?」

「たぶん2、おれの右前の方から来てる」


 シャクラは即座にその方角へ、雷をまとった罠の魔術を放つ。


痺れろ(クゥシェン)


 空気が帯電し、グリフィンめがけて飛んできた紅群蜂(ル・ビー)は直撃を避けるようにその場でホバリングする。

 そこへセヴェルスが翅を狙って矢を放ち、1体ずつ撃ち落としてシャクラが尾でつぶす。

 魔物があっという間に片付けられたことに安心しつつ、グリフィンは紅群蜂(ル・ビー)の死体を空間魔術(ストレージ)へ収納する。


「食うのか?」

「食べないよ。冒険者ギルドに持ち込んだら素材とそれ以外に分けてくれるから、素材は売ろうと思って。……そうだ」


 グリフィンは周囲の音に注意しながら、シャクラとセヴェルスに特定の魔物を探すよう頼む。


「もし次のスライムを見つけたら、おれに声をかけてもらってもいい?」

「よいが、何をするつもりじゃ」

「スライムって、ダンジョンごとに特徴というか、ちょっと違う感じがあるんだよね。水場があるダンジョンなら粘性が低い(水っぽい)し、草原と木だけなら葉っぱ交じりになっているし、砂漠だと水が抜けきって別の魔物に擬態しているし。だから、ダンジョンに入ったらまずスライムを検分、っていうのはダンジョンを知る上では大事だと思うよ」

「もっと早く言わんか。来るときに居ったじゃろ!」

「言う前に仕留めたのはシャクラじゃんかー」


 グリフィンの頼みを聞いて、シャクラとセヴェルスはなるべくスライムを探しながら、グリフィンはそれらしい音がないか聞きながら草原を進む。

 太陽の光と異なり、そう熱くない光が降り注ぐ中。何度か斑豚人(コモノーク)斑牛人(コモノース)の待ち伏せに襲われたものの、目的のスライムに遭遇することができた。

 今度は仕留めず、氷の罠で閉じ込める。透き通る氷の中で暴れるスライムに、グリフィンは顔を限界まで近づけて観察する。


「なんかわかったかの」

「もちろん。ここ、草原しかないように見えるけど、どこかに水場があると思う。それも、蛙か蛙型の魔物が住み着いているようなのが」

「ほお」

 

 グリフィンはシャクラとセヴェルスを手招きし、セヴェルスだけがスライムを見るために近寄る。

 うっすらと色がついている透明度の高いスライムを注目すると、思いのほかゴミが混ざっており気分が悪くなってくる。しかも、スライム自身は脱出しようと暴れるため、時折中身がグルグルと流動して注目しづらいのも気分が悪くなる原因のひとつだ。


「まずこの水っぽさからして、水場があるのは確定。草のかけら、土、砂らしきもののほかに蛙の卵らしいのがあるから、蛙もいる。ただ、魔物かどうかは卵の段階ではわからないけど」

「わかった、もういい」

「そう。スライムは行動範囲が広いからこれが絶対ではないけど、混ざっているのが岩とか石じゃないからこいつはダンジョンの外に出ていなさそうだよ」


 スライムの観察を終え、グリフィンはシャクラに頼んでスライムを攻撃してもらう。シャクラの放った雷がスライムを焼くと、その光に引かれてか魔物が近づく気配がした。


「移動しようか。まだ逃げ切れそうだし」

「そうじゃな」


 正確な時間はわからなくても、動けば空腹になる。幸い安全地帯の方角はわかるため、魔物に遭遇しないように気を付けながら来た道を戻ることにした。

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