44.5 幕間:セヴェルスと洞人
短いです。
「セヴェルス、当初予定しておった話を聞いてもよいか?」
集落から離れ、1時間以上。途中で集落方面に進む魔物を数体見送り、追手が来ていないことを確認しながらグリフィンたちは森を進む。
歩きながら何度かグリフィンはカスタネットを鳴らし、道を変え、シャクラに指示を出して邪魔な魔物を打ち払う。その意識の中にセヴェルスはないが、シャクラは別だ。
「そう変わらない。ただ、ダンジョンについてと洞人について、聞いておこうと思っていた」
「ではまずダンジョンについて、今のうちに聞かせてもらっても?」
「可能なら、有効活用できるようにならないか相談したかった。ただ、ダンジョンがあるというのは外聞が悪い気がしてな」
「他所では迷宮都市と銘打って、ダンジョンがあることを商業的な利点としておることもある。洞人として問題があるのでなければそのままでよかろう」
グリフィンの声がかかり、シャクラは出したままにしている尾で魔物を打ち付ける。初撃で倒しきれないのは承知の上のため、鞭のようにしならせた尾が3度打ち付けたところで魔物は落命し、シャクラの空間魔術に丸っと収納された。
「それで、洞人のこととは?」
「……集落の兄弟たちを見ただろう。らしい外見の残っているのはわずかで、後は犬猫交じりの連中に近い」
「犬人と猫人、じゃ。動物のように言うと品を疑われる、気を付けよ」
「悪かった」
シャクラ自身も今の姿をもとに竜尾人と断定されたら怒らない自信がない、それゆえセヴェルスにはきちんと釘を刺しておいた。
グリフィンの追加指示を受け、シャクラは尾を振り回し魔物を吹き飛ばす。
「俺たちの集落は俺の祖父が興した集落で、祖父とその伴侶、そして祖父の姉が最初の住人だった。祖父の姉は本来同族と婚姻のうえ独立をしなければならない立場だったが、森の外で出会った犬人とも猫人ともつかない相手の子を授かってしまったため、ほぼ追放に近い扱いで祖父の集落に来た」
「それが、あの人種交じりの洞人というわけじゃな」
「そうだ。俺からすると大伯母の子以降の世代の者たちは、洞人以外の血が強く出ているがゆえに洞人よりも短命で、洞人より子が増える。あの宴にいたのも大伯母から数えて5か6世代目だ」
「そうか、それは良いことではないか。ヒトが増えることを寿ぐものからすれば祝福はされど否定は去れんじゃろ」
「……やはり、集落の外では純血か否かはたいした意味を持たないのか」
セヴェルスはどこか安堵したような、落胆したような声でつぶやく。
シャクラはそれを、セヴェルスが自身の価値観に折り合いをつけたのだろうと推察した。
「そんなもの、もうとっくに持っておらんよ。わしからすれば、今の洞人なんぞお前の言う“洞人以外の血が強く出ている者”にすぎんしな」
自身の知る古い洞人を思い浮かべ、シャクラは現状を嘆くようにつぶやく。
直後、グリフィンの声で意識が正面に戻された。
「シャクラ、この先洞窟がある。たぶんダンジョンの入口だ」
「早いの、もう見えたか。セヴェルスも行くぞ」
「ああ」
森の中にあるちょっとした崖に、半地下になるような形で斜めに開かれた洞窟。周囲に魔物の気配がないか警戒しつつ、グリフィンたちはその中に踏み入った。




