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43 光幻犀の襲撃

動物の解体を行うシーンがあります。苦手な方はご注意ください。

参考はこちらです(https://inohoi.com/blogs/knowledge/post-100)

 光幻犀(シャインライノー)を視界に収めたシャクラの指示は速かった。


「まずは実験じゃな。グリフィン、遮音の魔術に思いきり力を込めて、わしらと光幻犀(シャインライノー)の間にできるか」

「やってみる」


 興奮した様子の光幻犀(シャインライノー)は前肢で勢いよく地面を蹴り、グリフィンたちへ向かって突進する。しかし、グリフィンが指示されるままに使った遮音の魔術に追突(・・)し、光幻犀(シャインライノー)は自分の勢いのために後ろへ吹き飛んだ。


「……予想以上なんじゃが、遮り方を聞いても?」

「おれたちと光幻犀(シャインライノー)の間にっていうから、まっすぐな壁みたいな感じ」


 遮音の魔術はその属性にもよるが、基本的には音をわかりにくくする壁を作る魔術だ。風属性であれば、空気を流体から固体に近づけることで音が伝わりにくくする。もちろん、並の魔術師であればそこまで強度は出ないが、グリフィンは極端なまでに風属性に特化している。

 その結果、グリフィンの遮音魔術は空気の頑強な壁を作り出すに至り、シャクラはその頑丈さに自分のこぶしで確かめなかったことに安堵した。


「ではグリフィン、あれを解いてわしと光幻犀(シャインライノー)の周囲を円形に囲ってもらえるかの? そうすれば家屋も安全なはずじゃ」

「うーん、ちょっと難しそう。でも、様子を聞きながら適当に補助するね」

「よろしく頼む。あれを仕留めて今夜は宴と行こうぞ」


 シャクラは遮音の魔術がない場所から光幻犀(シャインライノー)へ向かって飛び出す。

 光幻犀(シャインライノー)は近づくシャクラに対し首を振り上げ、角で攻撃を試みる。光幻犀そのものの熱に攻撃しかねていたシャクラはそれを反対側に避け、無防備な首を素手で殴り上げた。

 殴られた勢いのまま、光幻犀(シャインライノー)は跳ね上がる。シャクラはわずかに浮いた光幻犀の身体を蹴り上げ、突進を防ぎながら次のこぶしを入れた。


「グリフィン、シャクラは水か氷属性の魔術が使えるのか?」


 光幻犀(シャインライノー)の狙いがシャクラに向いているうちに、と集落中に避難するよう連絡していたセヴェルスは、戻ってくるなりグリフィンへシャクラのことを聞く。


「さあ? でも、今ちょっと忙しいからあとでね」

「そ、そうか。弓でよければ加勢するが、」

「今ちょっと忙しいからあとでね」


 グリフィンはシャクラが光幻犀(シャインライノー)を攻撃しやすいように、殴打音を頼りに遮音の魔術を瞬間瞬間で使い跳ね返る方向をコントロールする。セヴェルスが弓で加勢するとなれば、聞き分ける音が増えて面倒だと思い、雑に返事をしていた。

 シャクラの尾が光幻犀(シャインライノー)を打ち、肉の焼ける音とにおいがする。1メートルほど浮いたところから地面にたたきつけられ、自重も相まって相当なダメージを受けた光幻犀は逃げ腰になる。


「すまんのう」


 シャクラはゆらりと尾を揺らし、光幻犀(シャインライノー)の角をつかむ。


「わしは腹が減っておってな」


 自らの手が焼けることをいとわず、シャクラは光幻犀(シャインライノー)の首をねじり、そのまま引きちぎる。

 グリフィンの隣でセヴェルスがおののいているが、よく見えていないことをいいことにグリフィンは「血抜きが大変そうだ」とほほ笑んだ。


 シャクラはセヴェルス経由で集落の者に断りを入れ、集落にほど近い森の木を()りはらって血抜きの準備をする。


「グリフィン、大型の獣を吊るすのに耐えられる道具は何かないか?」

「ここまで引きずってきたから、大半の血は出てると思うよ。それに、血抜きって心臓が動いてないと大変なんだって村のおじさんが言ってた」

「村の……ミンターの村のか。ではどうする、雷撃でも浴びせて動かすか?」

「か、水属性の魔術で引っ張り出すかだな」


 集落中に責任を持てと叱責されて(しぶしぶ)同行しているセヴェルスが提案すると、シャクラが「それはいい」と同意する。

 声に魔力を乗せて、シャクラは光幻犀(シャインライノー)の血液を水を操る魔術で首の方へと引っ張る。どこに残っていたのか、だばだばと血が地面にこぼれシャクラの服に飛んだ。


「これだけ熱を持つ身なら虫も住んでおらんじゃろ、というか住めんな」

「そうでもないよ。熱いことにだけ強くて、それ以外に弱い寄生虫とかいるし」

「いっそ生け捕りの方がよかったかもしれんの。腹を開く必要がある、穴を掘るか」

「それなら俺が」


 セヴェルスは地面を濡らす血を避けて、より森の中心に近い方へ魔術で穴を掘る。シャクラは光幻犀(シャインライノー)の腹をそちらに向けて転がし、空間魔術(ストレージ)から大振りのナイフを取り出して腹に刃を入れた。

 穴に落ちる臓物。セヴェルスは少し顔色が悪くなりながら、グリフィンは平然としたままそれを見届ける。シャクラは開けた腹を汚さないよう光幻犀(シャインライノー)の体を動かながら体液や汚れを洗いつつ、冷却の魔術で肉を冷やす。


「最低限の下処理はこれでよかろ。枝肉にするにも専門でやっておる者にやらせた方が可食部が増えるし、の」

「鳥や兎ならともかく、この集落に4つ足の獣を処理できるやつはいないぞ」

「……グリフィン」


 宴と言った手前、引けなくなったシャクラはグリフィンの顔色をうかがう。


「シャクラ頑張って」

「し、仕方ないのー!」


 ぶつぶつと文句を言いながら、シャクラは皮を剥ぐためのナイフに持ち替える。

 グリフィンはそれを見ていたかったものの、敵の接近が聞こえてきたためにセヴェルスを伴ってその場を離れた。


 近づいてきたのはそう大きくない、夜に住む鳥の魔物。鋭いくちばしとかぎ爪だけでなく、味方の声をまねて認識をかく乱する特性があり、グリフィンは過去に近い種の魔物に遭遇したことがあった。


「セヴェルスさん、正面に矢を放ってもらってもいい?」

「あ、ああ」


 日が陰り始め、薄暗い森の中。セヴェルスは矢がもったいないと思いつつも矢を放つ。


「次、今の向きから右に12度、上に5度」

「ちょっと待て、なんだそれは」

「いいから狙って。もうすぐ来る」


 セヴェルスは言われたことがわからず、グリフィンは仕方ないと遮音の魔術の準備をする。

 無防備と思わせたグリフィンに、魔物が襲い来る。羽音で位置を判断したグリフィンはそれを遮音の魔術重ね掛けでとらえ、空間魔術(ストレージ)から針を取り出した。


「君は食べようがないね。ごめんね」


 針を自分の指に軽く刺し、血が付いたところで反対側を魔物に刺す。状況がわからず暴れていた魔物は、毒が回ったかのようにじきに動かなくなった。

 遮音の魔術でできた檻から魔物を開放し、死骸を適当に転がす。


「戻ろう。案内してもらっても?」


 セヴェルスはひとつ頷き、気味が悪いと思いつつもグリフィンの腕を引いた。

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