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16 依頼:ポータル石をミンターの森付近に設置せよ

 翌朝。グリフィンは部屋の扉をノックする音で目が覚めた。あくびをかみ殺しながら返事をすると、相手は自分がシレーネの執事であること、シレーネに代わり仕事を持ってきたと声をかけた。


「確証が取れないので、放置させていただいてもいいですか?」

「それでしたら、書面を扉の下から差し込んでおきますので確認して下さい。館長とシャクラ様は食堂でお待ちです」


 手紙を差し込んだ音に、グリフィンは仕方なしにベッドを降りて受け取りに行く。


『ミンターの森近辺にポータル石の設置に行ってきてください。場所はお任せしますがミンター自治領内でお願いします。』


 グリフィンは大急ぎで身支度をすると、食堂へ向けて走り出した。


 食堂にたどり着くと、シャクラとシレーネは朝食を食べ終えたところだった。


「一昨日と同じものでいいですか?」

「いえ、今日はこの空サラダ定食でお願いします」

「それ頼んどる奴、初めて見たわ」


 シャクラの言葉を聞き流しつつ、グリフィンは注文をする。

 一息ついたグリフィンに、シレーネは「仕事の内容は確認いただけたでしょうか」と聞いてきた。


「確認しました。ただ、クロスランド内をおれが通ると捕まるんじゃないかと」

「今日ザルバニトゥとクロスランドの国境にあるオススの町まで定期便が出ます。あの町からクロスランドへの最短経路はミンターの森外周を移動することですからクロスランド兵に追われることはないでしょう」

「出発は何時ごろじゃ?」

「およそ2時間後の11時です。到着まで1時間もかかりませんから昼食は到着後をお勧めします。定期便を利用するためのチケットと身分証明はこちらになります」


 グリフィンとシャクラはそれぞれ、シレーネからチケットと身分証明を受け取る。チケットの裏を見ると、現地で入国許可が下りなかった場合はシレーネシアに連れ戻されると書かれていた。


「その身分証明はシレーネシアの発行できる最上級の物です。これ以降ずっと使用していただきますので紛失しないようお気を付けください」


 グリフィンは高速で何度も頷いた。


 朝食後、グリフィンは部屋の片付けに、シャクラはすっかり忘れていたギルドカードの再発行に向かう。

 片付けと言っても散らかしていたわけではないので、出していたものを端から空間魔術(ストレージ)に入れて、浴室も簡単に片付ける。

 ふと、浴室で鏡を見る。目元を覆う前髪は邪魔そうだが、意外と前は見えている。表情がうかがえないようにと伸ばしていたはずなのに、今や怠惰の象徴のようにも思えた。


「……時間があったら切ろうかな」


 定期便の発着場は来た時と同じ空港と聞いていたので、早めに空港へと移動する。

 メインホールの壁にある空港の地図を見る。発着場はひとつだが、待合室は複数存在しているようだった。待合室ごとに固定の役割はなく、おそらくは入国審査に時間がかかったときの名残か何かだろうとグリフィンは想像した。

 天井から下げられている表示に、この度利用する定期便はメインホールから一番遠い待合室で待つようにと複数の言語でせわしなく現れる。グリフィンは表示に従い、待合室へと足を向けた。

 グリフィンは待合室までの廊下を進む。と、どこかの扉を開けて男性が飛び出してきた。グリフィンとすれ違うかのように見えた男性は、途中の扉に吸い込まれていった。


「……怪奇、廊下走り男。なんてね」


 グリフィンは廊下を進む。

 丁度男が吸い込まれた扉の奥から、悲鳴が聞こえてきたのを聞き流しながら。

「シレーネシアへの不法入国者に対する対処は簡単です。

出国地点への強制送還を3度勧告ののち、シレーネシア法にて処罰を行うことを3度警告。

警告完了後、人的・物的被害の有無を問わずすべて同様の刑を即時執行します。

……シレーネシアは人的資源に乏しいのです。国民は私ひとりのみ。

それ以外は正規の国民ではなく、ポーラ王国連邦国籍になります。もちろん出身地としてシレーネシアを言うのはかまいませんが彼ら彼女らの安心安全を私は保証していません。

『執事を侍らせておいて、人的資源に乏しいなんて何を言うのだろう。頭がおかしいのかな。』ええごもっとも。彼ら、死んでいますので。


忘れるところでした不法入国者。貴方への刑罰は採集刑です。貴方は頭の先からつま先まで素材採集のために生きていただきます。

死なせろ? なぜですか? 不法入国というだけで勝手に弱る生き物を生かしておくのです。慈悲では?」

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