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15 シレーネの授業

 翌朝。

 部屋で朝食を取り、グリフィンは早々にシレーネの執務室へ向かう。執務室の中にはシレーネとともに、貴族の家にいるような執事が2人おり、シレーネはぶつぶつと文句を言いながら何かしらの作業をし、執事2人はどちらも新しい仕事の配膳にいそしんでいた。


「おはようございます。よく眠れましたか」

「まあそれなりですね。こちらのおふたりは?」

「仕事の補佐役その1とその2です。そして問題がなければこの後からミンターさんの先生としてお貸しする予定です」


 ぺこり、と一つ礼をする2人に合わせてグリフィンもおじぎをする。

 シレーネに促され、グリフィンは応接セットのソファへ。ローテーブルにはすでにいくつかの本が置かれており、『無限図書館利用手引』『よいこのえほん ななにんのまおうさま』『毒総覧』『古語と魔術と歴史』と方向性が定まっていない。

 シレーネはグリフィンに1枚の紙を渡す。


「場所はこの応接セットでも部屋の方でもかまいません。これらの本は貸し出し処理が済んでいますので空間魔術(ストレージ)以外で運んでいただければ幸いです。カリキュラム等を説明させていただきますのでよろしければこちらをどうぞ」

「ありがとうございます」


 紙にはカリキュラム表が書かれており、『シレーネシアの実態と活用方法』『魔王について最低限の知識』『シャクラと行動するにあたりお伝えしておきたいこと』といった表題と教えるのを担当する者の名前、そして謎の数字が並んでいる。


「このたびは私と業務委託契約を行いましたので業務委託に必要な知識を習得していただくべく各種教本をご用意させていただきました。これらはそれぞれ業務委託のひとつとして取り扱われますので完了報酬がございます。カリキュラム表の数字はシレーネシア通貨での金額となりますのでご了承ください」

「ありがとうございます」


 シレーネは向かいのソファに座り、執事の片方が2人分の紅茶を用意してくれる。勧められるがままに飲むと、グリフィンにとって懐かしい味がした。


「でははじめにシレーネシアの実態と活用方法について。

シレーネシア及び無限図書館は純然たる智の収集場所でありこのワルフィス()最大の諜報機関となります。主な取引相手はグリューネ教会と各国の行政府、お代をいただければ魔王のステータスから隣人の今日の下着の色まで販売いたします。

ミンターさんは私と業務委託契約をしていただきましたので国家機密級以上を除き情報は無償提供されます。ただし情報漏洩に伴う価値の暴落があったときはこの分を請求させていただきますのでよろしくお願いします。

シレーネシアの活用方法として大きなものはふたつ、ひとつは先ほど述べた通り情報収集のための場所として。もうひとつがこの星全域への移動方法としてです。ミンターさんは空間転移の魔術というのは聞いたことがありますか?」

「あ、一応聞いたことがあります」

「それはいいことです。あれは『既に行ったことがある場所までの空間を圧縮して最短距離を魔力で跳ぶ』というようなものなのですがシレーネシアではこれを特定の条件さえ満たせば看過できることを利用して人員の輸送に使用しています。

具体的にはこの“ポータル石”を使用することで言ったことがある場所だけではなくポータル石のある場所を目標地点に出来るようになりました。もちろん効果は限定的ですがこれを使用することで世界中のどこにでも仕事のために異動することが可能です」


 ふ、と一息ついてシレーネはカリキュラムの終了を告げる。

 すると執事の片方が険しい顔で書簡をひとつ差し出した。


「館長、クロスランドから犯罪者の引き渡し要求が」

「無視しなさい」

「よろしいのですか?」

「かまいません。あの国との国交はこれにて終了とします」


 冷めた紅茶を一気飲みし、シレーネは残りのカリキュラムを詰め込む、とグリフィンに宣言した。


 結局シレーネからすべてのカリキュラムを教わり、気疲れと頭の使いすぎでふらふらになったグリフィンはなんとか個室に戻った。

 ベッドに沈み込むと、即座に眠気が襲ってくる。今日こそはかつての夢を見ないことを願いながら、グリフィンは眠ることにした。

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