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14 シャクラの成長

 シャクラはシレーネとふたりで話したいと言うので、グリフィンはシレーネに毒に関する蔵書があるかどうかを聞く。詳細な方向性を聞かれたので、特に解毒に関することを聞きたいと伝えるとおよその場所を聞くことができた。

 開架の中を歩き読めそうな本をいくつか手に取って、等間隔で設置されているチェアセットのひとつを占領して読み進める。

 食品に混ぜることができる毒と、その即効性。もしくは塗布することで効果を出す毒。血を吐いたことから、そういう毒がないか。

 取った本にはそれらしきものが載っておらず、本を読むことに疲れたので一休みしてから片付けようと判断する。心なしか図書館内も薄暗くなってきたので、部屋に戻るにはちょうどいいころ合いだろう。


「なんじゃ、まだここにおったのか」


 グリフィンが瞼を閉じて目元を揉んでいると、ここしばらくで聞きなれたシャクラの声。しかしいささかの違和感を感じ、グリフィンはわざと返事をせず黙っていた。


「どうしたグリフィン。実は寝とるんか? それとも護衛の仕事はほっぽりだすことにしたのか?」

「……起きてるよ」


 薄目を開けて、声の主を見る。そこにはシレーネと同じ、黒のスラックスとワイシャツを着た黒髪の少女がいた。


「……」

「どうじゃ、より美人になったわしにめろめろか?」

「シャクラ老けた?」

「老けとらんわ!」


 グリフィンが本を読んでいる間に、シャクラはティーンと呼んで差し支えないような外見になっていた。それを正直に言ったグリフィンだが、シャクラにとっては不服だったようだ。


「分かれておったものを吸収したからのう。あの外見ではギルドカードのものと外見も異なるし、これを機にちょいと成長させてもらったわけじゃ。グリフィン的にはどう思う、愛らしくなったろう?」

「服の代金は払ったの?」

「これはシレーネから借りておるだけじゃ! 後できちんと買うわい!」


 それより、とシャクラは成長した手をにぎにぎと確かめながら、グリフィンに空間魔術(ストレージ)の中をのぞかせてもらいたいと言った。


「万全とは言えんが、これである程度の毒ならわしでも対処できるようになった。トレイの様子が見たい」

「分かった」


 空間魔術(ストレージ)を開き、シャクラの頭を入れる。しばらくしてシャクラは空間魔術(ストレージ)から頭を抜いたのち、「あれはまだ無理じゃ」と言った。


「どうして? シャクラは解き方を知っているって、」

「あれは毒ではなく呪いじゃ、それも呪いをかけたモノの一部を使用している、な。そりゃ解き方は知っておるが、呪いをかけたやつに解かせるほうが手間も時間もかからん。わしもてっきり毒と思っておったんじゃが」

「呪い?」


 グリフィンは呪いについて詳しくないため文句は言えないが、シャクラも予想と違ったためいくらかの罪悪感を感じているようだった。

 呪いの詳細な内容やかけたものの特定は時間をかけて調べればわかるだろう、と言ってはいるが、やや落ち込んでいるのは隠せていない。


「わしにもっと所持金()があればのう」

「力があっても仕方ないよ。あとどれくらい猶予がありそうか分かる?」

「通常環境なら半日じゃな。おまえの空間魔術(ストレージ)の時間係数がどれほどかしらんから、そこは自力で計算せい」


 グリフィンもつられて落ち込みつつ、シャクラに本を戻すのを手伝ってもらい、終わったところで夕食のために再度食堂に向かう。シャクラは元々食事が必須ではなく、グリフィンは本を読んでいるうちに昼時を過ぎてしまったからだ。

 夕食を済ませ、グリフィンは割り当てられた部屋に戻る。

 部屋に戻り、ベッドをソファ替わりに座る。ふとテーブルセットを見ると、置いた覚えのない封筒がノートの上にあった。

 手に取って開くと、一枚の便せん。中には業務委託の内容が書かれていた。


「明日、シャクラを伴わずに、執務室へ来てください」

『シャクラは自分が主題ではない話の腰を折ることについては世界一です。私からお伝えすること、お伺いしたいことはまだまだございますので、どうかよろしくお願いします』


 また面倒くさそうな、と思いつつも契約相手の話だからと我慢して会いに行く予定を脳裏に入れる。

 ついでなので手元のノートを使い切って持ち込もう、とグリフィンは記録を進める。舞踏会のことを記録したので、そこから現在にかけてを書けば思い出すのは簡単だろう、と。

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