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13 魔王の素材、有償譲渡します

 翌朝。

 グリフィンは指折り日数を数え、今日でシャクラとの契約が切れることを思い出し、続行するかを聞くため部屋を出る。

 廊下にはシレーネとシャクラが歩いており、丁度グリフィンを訪ねるところだったのかシレーネは若干慌てたような様子を見せた。


「おはようございます。よろしければ私たちと一緒に朝食を取りませんか?」

「おはようございます、シャクラもおはよう。ぜひ一緒させて下さい」


 誘いが成功したからか、シレーネは朝食をとる場所まで機嫌よく案内をする。

 案内されたのは無限図書館の奥、職員用に設置された食堂だった。入口と出口が分かれており、入口は個人タグを使用しなければ入場できず、出口側は狭い個室のようなものがいくつも並んでいる。

 奥の方にある席に着き、グリフィンはメニューの冊子を開く。


「支払は私が行いますのでご自由に」

「あ、じゃあこの空紅魚(サーモン)のソテー頼んでみてもいいですか?」

「わしエールと特Bセット! あとパンとりんごジュースと」

「空紅魚ソテー1つと特Bセット2つを」


 シレーネは人数分の水を持ってきた店員に注文を伝える。シャクラは無視されたことに口をとがらせるが、シレーネに動じた様子はない。


「いいもん、わし自分で頼むもん」

「そんなに所持金を消費していると後で困りますよ」

「500万はあるしの。問題なかろう」


 呆れているシレーネは一瞬周囲を見て、わざわざ伏せる必要はないだろうとシャクラに黙っていたことを伝える。


「先日討伐された魔王の一部を確保しています」

「ほんとか?!?!?!?!?!?!」

「お待たせいたしましたー、特Bセット2つと空紅魚のソテー1つになりますー」

「では朝食にしましょうか」


 グリフィンは初めて見る魚の料理にわくわくしながら、シャクラはシレーネをにらみながら朝食となった。


 朝食を済ませてすぐ、噛みつくように話しかけてくるシャクラをいなしながら、シレーネはグリフィンを無限図書館内にある商業ギルドの支部へと連れて行く。と言っても、会議室の一つをグリューネ教会(冒険者ギルド)と一緒に使用しており、商業ギルドは依頼の達成報告の受付のみ、冒険者ギルドはそれに加えて島内にあるダンジョンの攻略情報の管理とギルドカードの再発行しかしていない。

 グリフィンは商業ギルドで必要な手続き――ギルドを介して受けた依頼の変更について、依頼の完了報告――を済ませ、違約金と合計した達成報酬を受け取る。達成報酬は依頼を受理した地域の通貨で行われるため、クロスランドの銀貨で受け取ることとなった。

 シャクラの取り分がいくらか多くなるように分割し、グリフィンは自分の取り分を財布にしているマジックバッグに収納する。


「シャクラ、よければこのまま私の執務室へ。ミンターさんはどうしますか」


 腕にしがみつくシャクラを振り払うことはせず、シレーネはグリフィンに予定を問う。グリフィンはシャクラに雇われているから、とふたりについていくことにした。


 無限図書館の開架エリアを進み、奥へ。グリフィンは見たこともない言葉で書かれた本が並んでいることに驚きつつも、置いて行かれないように。

 たどり着いた執務室は、狭い部屋の中に黒い板が何枚も置かれた執務机があり、ちょっとした応接セットが部屋の隅に追いやられるように置かれている。

 シレーネはグリフィンたちにソファを案内し、自身は向かいのソファに座る。


「それで、わしの一部を確保しているというのは?」

「ええ。先日討伐された魔王はその遺体(身体)のほぼ全てを輸送することができたため分割して競売にかけられました。具体的には“逆鱗”“心臓”“尾”“髄液”“頭”“眼”“爪”“背びれ”“牙”“血液”“鱗”“皮”“骨”そして“肉”。いずれも国家予算級の価格で販売されたそれらのうちシレーネシアで落札できたのは全体の2割程度です。よかったですね、シレーネシア運営予算のほぼすべてが資料収集費で」


 シレーネは執務机の上にある冊子のひとつをグリフィンに渡す。そこにはシレーネシアの国家予算と競売での落札価格が書かれており、グリフィンは黙って首を横に振って返却した。


「こちら無償提供できるほどお安いものではありませんので。おいくらほどいただきましょうか」

「……わしの持っておるノート()で足りるかのう?」

「それでしたら“肉”すべてと“骨”ひとつでいかがですか。ほかにも“骨”と“牙”はありますが」


 シャクラはしばし悩んだのち、長期保存できない肉のみを買い取った。それでも所持金の大半を支払い、手持ちの素材をシレーネにかなり差し出した。


「あと80ノートしかないのじゃ……」

「護衛契約の継続どうする?」


 シャクラはううんと唸りを上げ、今日いっぱい待ってほしいと頼んでくる。グリフィンはそれを了承しようとしたが、シレーネがそれを止めた。


「ミンターさん。よろしければシャクラではなく私からの依頼を受けませんか」

「「えっ」」


 さっと取り出される契約文書。グリフィンはそれをざっと読みつつシレーネの話を聞く。


「内容は業務委託関係の締結。期間は3年間代金は契約の締結期間1日ごとの基本金に加え委託内容により都度決定し前金半額達成報酬半額。契約期間中に別の依頼を受諾することについて不問です」

「受けます」「えっ」

「では最初の業務委託と行きましょう。内容はわが友シャクラの護衛。期間は1年間でそれ以降は要相談です」

「なんじゃシレーネ、わしのことをそんなに大切に思っておったんか」


 即座に返答し、グリフィンは筆記具を借りてサインをする。基本金についても記載があったが、グリフィンが受けられる依頼では決して出てこないような額だったからだ。

 シレーネは契約書を確認し、写しをグリフィンに渡す。シャクラはその横でわざとらしく照れた様子だったが、


「魔王がひとり減るとその分の仕事は所在が明確な私が担当することになるので。減らないでくださいね」

「す、すまぬ」


 と冷たくあしらわれた。

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