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11 ふたり目の魔王

 キャビンの外から乗ってきた係員に従い、グリフィンたちはキャビンを降りる。空港は大型の家畜小屋に似ていて、横幅は目測でキャビンが10は並べられるほどの広さがある。高さはドラゴンが首を伸ばしてもまだ余裕があるようで、グリフィンは周囲を見回して若干目が回り始めた。


「グリフィン、あまりそちらに行くと落ちるゆえ、わしと手を繋ごうか」

「あ、ありがとう」


 シャクラに手を握られ、グリフィンは深呼吸をする。目の回る感触はいくらか落ち着いて、シャクラに引かれるままにトリサ達の居る空港の奥、いくつかある扉の一つへ歩いていく。

 空港の職員らしきの女性を先頭に、鎧兜をまとった人物、トリサ、そしてシャクラとグリフィンの順で入国審査のための待合室に入る。待合室は規則正しくベンチが並べられていて、奥の壁にいくつか扉がある。

 シャクラはトリサの指示で空間魔術(ストレージ)に入れていた人と馬を全て取り出し、グリフィンとともに手近なベンチに座る。

 女性は振り返ると一息に言った。


「それでは入国審査を開始いたします」


 女性は言い終わるなり、右手と左手で別々の魔術を展開する。片方はグリフィンも見たことがある洗浄魔術、もう片方は火や炎に関する魔術ということはわかったものの、判別する前に消えてわからなくなってしまった。


「以上で健康検査と火気診断を終わります。今回の隔離対象者は0名となります。続いて口頭検査は各小部屋で行いますので案内に従い順次お願いします」


 順に小部屋へと案内される人たちを見送りながら、グリフィンはおおきくあくびをした。

 グリフィンが船をこぎながら順番を待つうちに、鎧兜をまとった人物もトリサも口頭検査に行ってしまったのか待合室から姿を消していた。隣にくっついて寝ているシャクラが暖かいので、もしかすると飛び飛びで眠っていたのかもしれない。

 あとどれくらいだろうか、とグリフィンが視線を上げると、正面のベンチには職員らしき女性が座っていた。驚いて飛び上がりそうになると、「そのままでかまいません」と眼鏡の位置を直しつつ座ったままでいるよう促された。


「他の方の口頭検査はおわりましたのでここであなたの口頭検査を行います。お名前は?」

「グリフィン・ミンターです」

「職業・出身地・種族をお願いします」

「職業は冒険者で、クロスランド出身です。種族は多分雑種です」


 女性は手元の板にグリフィンの答えを書き込んで、何度か小さく頷いた。


「ご出身はクロスランドとのことですがミンター自治領ですかそれ以外ですか。この質問はミンター姓の方全員にお伺いしております」


 一瞬、瞬きの音すら聞こえそうなほど静かになって、グリフィンは「分かりません」と答える。


「そうですか。質問を変えます。ミンターの森出身ですか、それ以外ですか」

「ミンターの森出身です」

「ありがとうございます。最後に確認ですが、」「もうよいじゃろ」


 女性が珍しく一拍置いたところで、シャクラが口をはさんだ。


「起きたの?」

「目をつぶっとっただけじゃ、寝ておらん。それより、質問が多いのではないか?」

「通常通りです。あなたへの質問が少ないのでそう感じるだけではないですか」


 シャクラを言いくるめ、女性は最後の質問をし直す。


「最後に確認ですが、ミンター自治領長ミンター氏とは血縁ですかそれ以外ですか。それ以外であれば差し支えない範囲で関係をお伺いできれば」

「ええと?」


 誰を指しているか認識できず、グリフィンは首をかしげる。


「アンワズ・アリオール・ミンター氏です。クロスランド名はアンワズ・エイディル・ウリフゴフ・ミンターでしたか」

「……ああ、おじいのことですか。家族です」


 グリフィンは質問の要点をわざと外して答える。女性は表情を変えず「口頭検査は以上です」と告げた。


「では個人タグの発行機までご案内します。その間周囲に聞かれても問題ない内容であれば質問をどうぞ」

「なら、シレーネシアはなぜグリフィンを探しておったのか聞きたいのう。わし、おまけ扱いだったんじゃが」


 待合室の奥にある扉を通り、小部屋を通過して廊下に出る。案内板には右手に特殊来賓室、左手にメインホールと書かれており、女性はメインホール方面に向かって歩いていく。


「当館ではあなたに残存する価値がランダム抽出したクロスランド国民一人より少ないと判断しました。またミンター自治領出身者にのみ口伝で継承される伝統・風習が存在することは判明しているため他にも理由はありますがグリフィンさんは是非来館していただきたいと考えておりました」

「なぜグリフィンがよい。ミンターの森出身ならクロスランドにいくらかおるじゃろ」

伝承の当事者(ホンモノ)はごく少数です。その点“グリフィン・ミンター”本人であれば勇者トレイの随行としての記憶と伝承についてを一度に記録することができる。先ほどは、ぶしつけな質問を失礼しました」


 女性はたいして悪びれもせずグリフィンに詫びる。グリフィンはそれよりも気になることがあるのか、少し間をおいて「気にしてないですよ」と言った。


「それよりも、あなたの名前を聞いてもいいですか?」

「これは失礼しました。私はシレーネ、そこにいるシャクラと同じ魔王(同業者)です」


 ぱち、と女性──シレーネはまばたきをする。グリフィンは名前以外に興味を示した様子はなかった。

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