10.1 その頃、地上にて
自分たちの真上をドラゴンが飛ぶ。
騎士団は軍馬にひるむなと叫び鞭を入れたが、先の垂直落下で驚いていたのもあって馬は言うことを聞かなかった。
「何をしているのです」
先頭集団に追いついた馬車が道を横滑りし、素早く従者がカーペットを敷いて扉を開ける。下りてきたのは聖女と名高いこの国の王女、クリスティニア・マクブルームだ。
「まだ矢は届きます。射撃を続けなさい」
「し、しかし聖女様」
「アングラード卿」
騎士団の一人がクリスティニアに否を唱え、その間もドラゴンは飛んでいく。クリスティニアは馬車に乗っているもう一人に声をかけ、そのもう一人は「竜巻よ」と呪文を唱えた。
吹き飛ばされる騎士団員たち。ドラゴンの抱えたキャビンの外側にぶつかり、運がいい一人はハッチの外側にへばりつくことが出来た。
「あなた方は、なぜわたくしの術で強化されているのに、あれらに負けたのです? いえ、なぜ本気を出さないのです」
心底理解できないと直接言わないが、地上に残された騎士団員たちに主家の子女に意見できるようなものはいなかった。
「姫、こいつらは凡人です。最初から僕にご命令いただければ、あんなやつ一思いに殺しましたのに」
馬車から降りてきたのは、クリスティニアとともに勇者パーティに所属していた魔導士、エマニュエル・デル・アングラード。先ほどの竜巻を起こしたのも彼の魔術だ。
「アングラード卿、そういった話ではありませんのよ? グリフィン・ミンターは重罪人として生きたまま捕らえ、王都に護送しなければなりません。そうでないと、勇者様を取り返すことが出来ないでしょう?」
ふふ、とほほ笑むクリスティニア。その内心を知るエマニュエルは、わざとらしく「あと何人飛ばしましょうか」と言った。




