-2 何度目かの脱退命令
「お前は勇者パーティクビだ。すべての荷物を置いて、今日中にこの街を出ていけ」
魔王の居るという砂漠まで二日ほどの街、宿屋にて。早朝に呼び出されたグリフィンは、パーティメンバーの一人・王宮魔導士のエマニュエルにそう告げられた。
「荷物を、すべて? おれの私物もあるのだけど」
「当然だろうが。あ、金と装備も置いて行けよ? お前の手癖ならその辺から盗めるだろうけどな」
心当たりのないことを真実かのように言うエマニュエル。グリフィンは荷物を出す場所を借りてくる、と宿屋の受付へと歩いて行った。
しばらくして、宿屋の裏庭。グリフィンはエマニュエルの前で、空間魔術から物を取り出していく。裏庭は一軒家が二つ入るくらいには広いが、端の方からだんだんと埋まってきた。
「おい、どれくらい入ってるんだよ!」
当然だが上に物が置けるものはテーブル替わりにして、中に物が入るものは収納代わりにしている。それでも場所は足りるかどうか怪しい。
荷物をすべて出し終わる頃には昼近くなっており、グリフィンはへとへとになりながらエマニュエルに確認を促す。
「これで全部だよ、これは出したもののリスト。確認してくれる?」
「あ、ああ」
困惑するエマニュエルを放置して、グリフィンはかろうじて残った一角に座り込む。と、背後から冷えた飲み物が差し出された。
「ひぇっ!」
「ずっと外にいたから、差し入れ」
その冷たさに驚いて振り返ると、冷えた空気をまとっているトレイが飲み物を差し出していた。
トレイは自身のマジックバッグから大きな麦わら帽を二つ取り出すと、一つをグリフィンの頭に、一つを自身の頭にかぶせてグリフィンの隣に座る。
「彼は何を?」
「……荷物を全部置いて、街を出て行けって」
グリフィンは若干ふてくされつつ、飲み物を貰ったのだからと目の前の光景の理由を伝える。トレイの周囲はまた一段と冷え、グリフィンは丁度いいとトレイの肩に頭を置いて涼む。
しばらくして、グリフィンの方を振り返ったエマニュエルをトレイは家名で呼んだ。
「アングラード」
「なんですか、勇者様」
まさかいるとは思っていなかったようで、エマニュエルの口元が引きつる。
「グリフィンを追い出したいのなら、きみが先に出て行ってくれ」
勇者の機嫌を損ねるわけにはいかないからか、エマニュエルは荷物の点検をしていただけだとごまかした。




