第87話 素敵な愛と笑顔を振りまきます
令嬢達とのお茶会はすごく有意義だった。
貴族の姻戚関係は話題の花らしくて、色々な情報を獲得することが出来た。
「そういえば私も聞いたことあるよ。メリクス家のエドワード子爵っていう人にそのゴーフル中将の四女が嫁ぐかもってお話―――んっ」
訪ねると、もうほとんどベッドで抱き合って過ごしてるシャーロット。愛し合う合間の会話で色々教えてくれる。
彼女も普段、少しずつそういった令嬢達のお茶会にお招きされたりお招きしたりと、本格的に貴族社会の実戦に入ってる。だから他の貴族令嬢達からそういった話を聞かされる機会は多くなってるみたいだ。
「メリクス家といえば反王室派ですね……政略結婚のやり方に統一性がなくて何だか行き当たりばったりな感じは、あのゴーフル中将らしいといえばらしいですが」
どちらか一言話すたびに口付けする。
アイリーンはお姉ちゃん的な、エイミーには愛玩的な……それぞれへの僕の愛の形はみんな違ってる。
シャーロットには恋人的な感じ。だから昼間っからこうしてベッドで抱き合ってても全然飽き足らないくらい、欲情がおさまらない。
「んっ……もう、殿下のえっち……あんまり激しいといくら週一だって、そのうち赤ちゃんできちゃうよぉ」
「かまいません。シャーロットと僕の赤ちゃんならきっと可愛い子が産まれるでしょうから、僕は10人でも100人でも産んで欲しいです」
そういって穏やかに微笑みながら、覆い被った布団の中でシャーロットを強く抱きしめる。すると彼女も僕をしっかりと抱きしめて深く深く口を合わせてくれる。
そうして僕らは二人の愛を1mmでも深く、1秒でも長く繋げ合った。
……シャーロットに関しては、僕はもうかなり前から吹っ切れた。妊娠のタイミング調整とか考えずに思いっきりするようにしたんだ。
きっかけはヘカチェリーナに高められてからシャーロットの寝室に通されたあの日。
(※「第62話 最胸ママの子授かり術だそうです」参照)
何であんなセッティングをしたのか―――あの日愛したシャーロットと、それをサポートしたかのようなヘカチェリーナの様子を後から何度か思い返してみて、最近になって本当に薄っすらとだけど気づいてきた。
「(母上様。シャーロットに何かあったらいくら母上様でも僕は絶対に許しません)」
昼食前に訪問して、食後から一切の休みなく夕暮れまで愛し合い、食後に入浴も共にして、そこからずっとノンストップで朝チュン……さすがにシャーロットは僕と抱き合ったまま寝息をたててる。
僕が彼女に関して憚らなくなったのはシャーロットが他の誰かに……
それも母上様の指示でそうさせられてる可能性が高かった。
こっそり調べたら、避妊や堕胎の薬を使った上での貴族令嬢としての “ 教育 ” の一環らしい。けれど相当に古い時代の " 教育 " で、相当に厳格な貴族家でさえも今はやってるとこなんてない、時代錯誤な " 教育 " だ。
「(むしろ “ 教育 ” っていうより “ 躾 ” だよ。それも悪い意味の)」
なんで母上様がそんな大昔の “ 教育 ” をシャーロットに施すのか? その意図がわからない。
最初は彼女が庶民の出だから、完璧に仕上げるためにそういったやり方にまで手を出しているのかもと思いかけたけど、シャーロットは普通の作法教育でも十分過ぎるほど優秀に修めてる方だ。
むしろ本物の貴族令嬢達よりもハイレベルに至ってるくらいだと思う。なのに……
「(母上様は僕を溺愛してる。僕から嫌われるようなことを進んでするとは思えないけど……)」
調べた " 教育 " の意味や意図としては理解できる部分もないわけじゃない。
実際、シャーロットはサーカスにいた時、当時の団長の命令で夜のお客を取らされてた。複雑な気分だけど、男性の相手をするのに慣れてる娘なのは間違いない。
嫁ぐ夫に生涯を捧げるため男性への恐怖心をある程度抱かせる―――理屈としては合ってる、ように思える。
けどそれって一つ間違えたら、その嫁ぐ夫にすら恐怖するようになってしまう危険性があるはずだ。
昨今、そういった “ 教育 ” を行わなくなったのも、行き過ぎて嫁ぎ先の夫にすら触れられるのに恐怖するようになってしまうリスクが結構あったからっぽい。
「(この辺は、前世の “ 体罰 ” 問題と同じだよね。行き過ぎた体罰は暴力の意味しかないけど、適切に使えば “ 教育 ” の意味はちゃんとある……)」
過激で極端なやり方って、本当に狙った効果をもたらすには匙加減が凄く難しい。
「(……母上様は一体何を考えてるんだろうか?)」
考えてみれば、あの時だってファンシア家にシャーロットを訪ねたきっかけは、母上様があえてそう差し向けたように思う。
(※「第61話 貴族の古教は闇の躾です」参照)
シャーロットを訪ねて母上様を訪ね時、もし僕にやましいものがあるなら、シャーロットが体調を崩してファンシア家で静養中、お見舞いに行くようになんて言わない。
口止めしたってシャーロットが僕に何も言わないとは限らないし、僕が母上様を嫌いになる可能性だって低くない仕儀―――けれど母上様は、別に僕にバレても構わない風だった。
むしろやましいことも隠し立てするような事も何もないと言わんばかりに、シャーロットのお見舞いに向かわせた。
「(……)」
僕がシャーロットを抱くのに一切の遠慮なしになったのも不安を覚えたからだ。母上様が何を考えているのか―――そこに良からぬ可能性を感じ始めたから。
徹底して愛する。決して僕が怖くないように、僕は愛する人なんだってシャーロットの心に深く染み渡らせる。
何なら本当に僕の子供を身籠って欲しいくらいだ。そうしたら四の五の言わずに即お嫁さんに迎えることが出来るから、そうした “ 教育 ” を再びされることはなくなる。
「(セレナもそうだけど……シャーロットも早くお嫁さんにしなくちゃ)」
ハーレム形成を加速させていかなくちゃいけない。
僕はそう思いながら眠るシャーロットをぎゅっと抱いて、その唇に口を合わせた。
もう一度言おうと思う。令嬢達とのお茶会はすごく有意義だった、色々な意味で。
「ふにゃああ、で、殿下ぁ~♪♪♪」
「とっても可愛いですよ、エイミー」
・
・
・
「はふぅ~…さ、最近の旦那さまは、何だか一段と素敵になられた気がします」
「そうですか? ほら、お休みしましょうアイリーン。夜更かしはお腹に響きますよ」
・
・
・
「あ、あの……で、殿下。その、ご、ご機嫌うるわ~、しゅ~……」
「大丈夫ですかクララ? 真っ赤っかですし目の焦点が合ってないですよ??」
・
・
・
令嬢達を相手に愛想を振りまいてみてふと気づいたことがあった。それは笑顔の仕方だ。
僕自身の態度や言葉遣い、会話の言い回しなんかは何も変わらない。けどお茶会での会話中に令嬢達の反応を観察して色々試した結果、相手に笑顔を見せるタイミングやベストな笑顔の感覚が掴めた気がした。
なのでお嫁さん達をはじめ、女性相手に会話する時は掴んだコツを使って笑顔を用いるようにしてみたところ、凄まじい効果。
エイミーはいつも以上に発情した愛玩子猫状態。アイリーンはもう可愛い可愛いと僕を抱きしめて放してくれない時間が今までよりも1.5倍くらい長くなった。
クララに至ってはいつものように愛でるまでもなく、僕の笑顔だけでデレデレドロドロ状態に突入。
……うーん、これはショタっこな容姿以外の、新しい武器を手に入れてしまったみたいだ。
いや笑顔は今までも使ってきたから磨きがかかったというべきかな?




