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弱小ショタなのでビキニアーマーを嫁にした  作者: ろーくん
第三章:迷惑な人たち
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第39話 本音は欲と保身なのです




 セレナの件は上手くいきそうだった。



 妃位にありながら軍権を持たせる “ 妃将 ” という新たな地位が、兄上様たちの間で検討されて、昨今の魔物発生状況から王城防衛強化の一助になると、かなり前向きに話が進んでた。


 ……のだけれど、やっぱりそう簡単にはいかないみたいだ。


『妃の一人に軍権を持たせるなど正気の沙汰ではない』


 制度案を煮詰め、兄上様(おうさま)が諸大臣たちの前で発表したその場で、一部の大臣と将官たちが反発したんだ。





「(まあ、ある意味予想通りなんだけども)」

 何せ妃でありながら将官位でもあるという、王室と軍部の境目があいまいになるような地位。反対する人が出てくるのは分かってたし、兄上様達もそれを見越していたはず。

 けれど、その場で反発者を抑えられなかった。


 なぜなら……


「(軍人のプライドがこんなに深かったのは予想外だったなぁ)」

 新しい地位の創設。その最大の理由として挙げたのが、昨今において国内における魔物の出現と脅威が増大したというもの。


 ところが軍部は、いまだ魔物とは国境より国内に侵入してくるものであり、自分達はよく戦っていて、そんな地位は不要で、それよりも国境よりの侵入を完璧に防ぐためにもっと予算をよこせと言い出した。



「つまり軍の将軍たちは魔物が国内で(・・・)発生しているという話を信じていないんですね」

「うん、そういう事です。自分達が死力を尽くしているのにそんな事あるわけがない、自分達の目や手の及ばないところから越境して侵入したものに決まってる、だから防御をより一層かためるためにお金や人材を自分達にまわせー、っていうのが彼らのいい分なんですよ」

 アイリーンは、ふむふむと頷きながら政治的なものの理解に努める姿勢を見せる。

 歩きながらの会話はお行儀は悪いけれど、たまにはこういうのもいいだろう。



「結局、軍部の人達に上手いこと予算増額要求の場にすりかえられちゃいました。実際、魔物と戦ってくれてる彼らといがみ合う事は出来ないですし、兄上様たちもあの場は引き下がるしかなかった……のですけれども」

 多分だけれど軍部の将官たちの反発は、もっと別のところに理由があると僕は感じた。

 それは女性に……それも後宮に篭って王家の世継ぎを作るだけの軟弱な存在に、自分達のお株を僅かたりとも分けたくはない、という見下すような意志。


「同じ将官の中で、セレナだけが冷遇されてる事を考えますと、彼らは女性に兵士さん達を預けるということそのものを毛嫌いしているような気がするのです」

 戦場は生死を賭けて戦う場。

 必然的に軍というところは、頑強な肉体に成長しやすい男の領分になりやすい。


 命がけで人々の脅威となる魔物を退け続けている彼らからすれば、弱っちい女が何を出しゃばった事をして、自分らの足を引っ張ろうというのか、っていう具合に憤る理由になるわけだ。


 それがこじれてくると、完全に女性軽視や蔑視へと発展する。


 実際のところ、彼らのそうした考えは分からないでもない。本当に死ぬ戦いの場において、足手まといな味方というのは敵以上に厄介なのは間違いのない事実だから。




 けれど―――僕は知っている。女性でも男性を凌ぐ戦闘能力を持っている人は実際に存在してるという事を。


「………」

 その筆頭とも言うべきアイリーンは、黙ったままニコニコしていた。けれど、きっと心の中じゃ、軍のそういうお馬鹿な偏見者に対する怒気を燃え上がらせているに違いない。


「頑固な人達は、実際に痛い目を見ない限りは考えを変えてはくれないでしょうからね、なかなか悩ましい話です」

「力もないのに威張ってばかりなんですね! 殴りたいそのハゲ頭、です!」

 実際、将官の人達のうち本物の軍人といえる人物は一握りだ。


 多くが高い位を望んで権力闘争にて掴んだだけで、ちっぽけな魔物1匹倒せそうにない軍人らしからぬ貴族の中年男性ばかり。


 貴族令嬢だったにも関わらず叩き上げで准将になり、指揮官としても個の武力でも彼らより優れているセレナは、そうした連中には特にうっとおしい相手で、単に女性としてだけでなく、何とか蹴落としたいと常々思っているんだろう。


「(ホント、殴り飛ばして除けられないかなぁ)」

 この妃将という地位が実際に設けられてセレナがそこに就けたとしても、そういう連中の声が大きい限り、今後も何かと面倒が尽きない未来が簡単に予想できる。


 どうにかして彼らの意気を抑えて小さくしないと、僕の描く理想のハーレムは作れない。




「……旦那さま旦那さま。いっそのこと、私がガツーンとしちゃうのはどうですか??」

 直接彼らを殴り飛ばすという意味じゃなく、女性でもお前らより強いんだぜ、と実力を見せつけるという意味……の提言だと受け取ることにする。

 元戦士のアイリーンらしいっちゃらしい解決策だけれど、それは出来ない。


「アイリーンが力を見せますと、むしろ王室の守りは十分じゃないかと言われる材料になってしまいますから、残念ながらガツーンとは出来ませんね」

 貴族は(したた)かだ。転んでもただでは起きない人ばかり。

 そんな貴族出身な戦えない将官位の人達は、力がない分そういうところに長けている。

 本当に実力ある真の軍人たちが、同じ将官位の役に立たない彼らを排する事ができないのも、ひとえにその政治力があるからこそ。


 自分の地位を強さじゃなく、(ずる)さで保っている貴族な軟弱将官はとても手強い。



「(まてよ? アイリーンが強いことでそうなってしまうんだとしたら……それならいっそ―――)―――そうですね。アイリーン、これは一つ頑張ってみるのも良いかもしれません」

「はい? ガツーンとしますか?!」

「はい、別の意味でになりますが……ちょっと頑張ってガツーンとしてみましょう!」



 この日から僕の意識は少し転換した。


 前は僕を守る力が衰えてしまうことを危惧していたけれど、なるほどモノは考えようだと認識しなおす。


 それはとある一手を閃いたがため。



 軍人たちが、貴族たちが、大臣たちが、誰もが異を唱えにくい一手を思いつく事ができ、そのために僕はいっそう励む(・・)事にした。





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