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弱小ショタなのでビキニアーマーを嫁にした  作者: ろーくん
第二章:ハイソサエティの水面下

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第20話 社交界は面倒なのです




 クロエ救出の一件は、僕の問題点をあらためて浮き彫りにした。



「(力がないって、こんなにも苦しい事だったんだ)」

 まるでぬいぐるみのように僕を抱きしめながら寝息を立てているアイリーンの横で、天井を眺めながら色々考えてしまって寝付けない。


「(……うん。やっぱり社交界で、もっと積極的に顔を(・・)売ろう。でなくちゃいつまでたっても僕には何もできないままだ)」

 これまでも貴族の集まりの会とか、社交界に出てはいる。けれど今までは面倒だから何かと理由をつけては最低限の挨拶まわりしかしてこなかった。


 そのまま留まって会話や交流を深めるような事を一切しないので、コネらしいコネは何もない。


 貴族の会話の中身なんて、聞きたくもないようなドロドロしたものや、王弟としての僕にゴマすり寄ってくるようなおべっかばかり。

 そういうのを嫌って、ずっと避けてきたんだ。




「(でも、交流が浅いままじゃ結局繋がりも何もできない。嫌なことでも我慢してやらなくちゃいけないよね、やっぱり)」

 創作物で見るファンタジーの社交界はハッキリ言って意味などない、単なる贅沢なお偉いさんたちのパーティーだと、どこかで決めつけてた。

 けど、こうして実際にそこに触れてみると、実はちゃんと有用な事が分かってくる。


 僕のような王子に限らず貴族の人々はその身分の高さもあって、軽々しく面識のない人と接しない。それは用心のためだけれど、裏を返せば新たに誰かと知り合う機会も少ないということ。


 その問題を埋める場こそ社交界の交流場(パーティー)なのだと、僕は認識を改めた。




「(うーん……有力そうな貴族の名前とか調べて覚えておかなくちゃ。あとは、なるべくクララに同席してもらうようにもしよう。彼女の方がきっと僕なんかより、そういうのは得意で慣れてるはず)」

 サポートしてくれる人がいれば、鼻持ちならないような嫌な貴族とも上手く乗り切れるだろう。

 実際クララは、僕よりもっと幼いころからそういう場に出ていると、前に聞いたことがある。

 もしかすると彼女を通じる事で、コネを作るのが少しは簡単になるかもしれない。





「(あとは……もっと勉強もしておこう。学力向上じゃなくて知識と情報を増やすんだ。会話を弾ませる一番重要なことは、どれだけモノを知ってるかだから)」

 これは前世の経験から断言できる。


 幅広い物事を知っていればいるほど、色んな人に話を合わせられるし、狭い範囲でもいいから何か特定の事について深く知っていればいるほど、その話題に興味ある他人と、短時間で距離を縮められる。

 

 話し方や態度、礼儀や所作などはむしろ二の次。もっとも重要なのは話題なんだ。



「ん……ん、…むにゃむにゃ…しょこは、らめれすよぉ~…らんなひゃまぁ…ぅへへぇ…むにゅ……すー……すー……」

 お嫁さんの幸せそうな寝顔に僕はクスっと微笑む。


「(そうだ、アイリーンにももっと色々お話を聞こう。最近はベッドに入るとあまり会話を深めないし)」

 する事してしまったら、あとは眠りにつくだけなんてもったいない。アイリーンの、お嫁さんになる前のお城の外でのことをもっともっと聞いてみよう。


 そう決めた時、頭がそろそろ休養したいらしくて眠気がやってきた。僕はゆっくりと(まぶた)をとじる。

 仰向けからアイリーンと向かい合う形に寝返って抱き着くと、そのまま彼女の胸の中で意識を閉ざした。









――――――翌朝。


 ふと思い出した僕は、朝食の席でアイリーンにある事を聞いてみた。


「そういえばアイリーン。礼儀作法の講習の方はどのような感じですか?」

「ングッ!?! ………んっぐぐぐ、ゴクンっ……―――はぁ、はぁ…え、えーとぉ…それはその、あは、あはははは♪」

 はい、全然できていないと。

 小口に千切ったパンをノドにつまらせるその態度が、すべてを物語っている。


じぃや(・・・)ばぁや(・・・)は怒っていませんか?」

「ええと、それはもう……うう、すみません」

 恥ずかしそうにしょんぼりするアイリーンもカワイイ。


 見た目は別としても、やはり戦いに身を置いていただけあって、窮屈な貴族の礼儀作法などは相変わらず苦手みたいだ。

 僕のお嫁さんになってからお城に住みはじめ、すぐに始まった教養教育はもう数年を数えてるはずなのに、進展の方はまるでダメっぽい。



「(でも、そうするとちょっと困るかもしれない……)」


 王族に限らず貴族の連れ添う伴侶とは単なる妻では終わらない。隣り合って立つだけで品格に華を添え、二人を見る人々に夫の威を発信するような存在である事を求められる。

 その一挙手一投足にそれとなく注目され、粗相あらば妻自身だけでなく夫にも悪影響が出てくるので、言動には責任がともなう。


 伴侶たる女達にとって社交界とは、夫以上にマナーと品格が絶対である事を求められる戦場なんだ。


「(教養を磨くのは続けてもらうにしても、すぐに身に付くわけじゃないから短期的に、すぐ社交界で通用するような事を何か考えなくちゃ)」

 アイリーンはこの僕、王弟の第一妃だ。

 僕が社交界に出る以上、彼女もその場に顔を出さなくちゃいけない。これまでは僕同様に最低限の挨拶を、側用人のアシストありきでなんとかこなし、すぐに引っ込んでたからよかったけれど、今後はそうはいかない。


 もし僕が、誰か貴族と話し込んだりすればその間、会場にいる他の女性陣がアイリーンに会話を求めてくる。僕が退場しない限り、アイリーンもいなくちゃいけないから、今後は貴婦人交流も避けられない。



「(戦士として高名だから一か所に(とど)まってると絶対に話しかけられるだろうし。かといって今のアイリーンじゃ、きっと会話はしどろもどろに、……ん、戦士としての……名声?)」


 その瞬間、僕はピーンときた。これならきっと大丈夫だ!


 そのつもりはなかったけれど、僕はこの時笑ってたらしい。

 朝食のお肉を小さく切り分けずに、何気なくフォークで刺してガバッと頬張ったアイリーンが、こちらを伺いながら小首をかしげる。



 そしてその瞬間、おそらくは “ ばぁや ” あたりの差し金なのだろう―――傍で控えてたメイドが、アイリーンの肩に何やら木の板を叩きつけ、パシーンといい音がこだました。





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