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6章 善行と決断

[やぁ、前回の世界はどうだったかな?色んな人生があって色んな一喜一憂がある人生はとても面白いといえるよね。前回は突拍子のある世界だったから次は身近に起こるかもしれない世界にしようかな?]



暖かな日光に照らされた私立センターク中学校。暑かった日常から徐々にひんやりとした空気に変わっていくような季節。

\ダダダっ!!/

紺に染まった学生服を着崩した男子生徒が廊下を走っている。

\キーンコーンカーン/

「セーフ!!タスク、マサネ、おはよう!!」

勢いよくドアを開けチャイムの音と同時に教室に入ってきた男子生徒。

「えぇ、ツグくんおはよう。挨拶をするのは良いけれど、もう少し時間に余裕を持って登校出来ないかな?」

毎度ながらよく出来ているお嬢さんだって思わせてくる黒髪ロングに整った顔をしている彼女が真実(マサネ)さん。クラスの学級委員長でしっかり者の女の子だ。ちなみに俺の彼女でもある。

彼女のいない男性諸君、ざまぁみろ。

「悪い悪い、気をつけるって」

何やら小声で何回目のセリフだよ……っとマサネがボソッと言っているのが聞こえた。

遅刻常習犯の俺にはむしろ褒め言葉に聞こえる。

「マサネ、ツグ、話すのも良いがもう着席しなきゃだぞ。」

そう言い着席を急かすガッツリした体型のまさに体育会系と言える人物は助玖(タスク)

僕の幼なじみであり、大の親友!!

親友だよな……?こう思っていると相手は自分のことをどう思っているか気になってしまう。気になるよね?

「お前ら、チャイム鳴ってるんだから早く席に座れ、無駄話をするな。朝のHRを始める。」

時間に忠実なこの大男が、俺たちのクラスの担任のチョイス先生。親がハーフであり、日本生まれ日本育ち、日系よりの顔なのに名前に癖があり、まともに英語を喋れないことをよく自分でネタにしている変な先生だ。

「では、今日の話題だが……」

うちの学校では近頃の様子を知るため先生が時事について短い時間で説明してくれる時間が週に1回、15分ある。

しかし、この先生の話といえば……

「今日の朝の話題なんだが………アメリカの選挙で新たな大統領が決まった話や、周辺の地震警戒レベルが上がった話、後人気俳優が薬を使い逮捕された話、この学校のことなら創立が今年で100周年!!などの話があるのだが、最近一番のニュースはこれだ!!」

ギクリッ……何か俺たちに大きく関わる話でもあるのか。無駄に先生が言葉を貯める。

「先生の誕生日、今日だから何かプレゼント用意しろよな。きゅん!!」

中年のおっさんが生徒に誕プレを媚びったり、きゅん!!って言いながらウインクしたりと、本当にこんな先生でこの学校は大丈夫なのか。

俺たちの学費はちゃんとあるべき人のところに行っているのかと少々不安になる。

「先生の事は正直軽蔑してますけどさっさと職務を全うしてください。」

「おっと、マサネは厳しいなぁ……では、俺の好きなアイドルのCDオリコン1位の話でもしようか。っともうHRの時間は終わりだ。解散。」

流石学級委員長。俺たちの気持ちを代弁してくれるのはすごくスッキリする。

だが、またしょうもない話でHRの時間を終わらされてしまった。

あの給料泥棒め!!

先生が教室から出て行くと一斉に生徒は席を出歩き始めた。

「あの先公の話って本当に為にならないよな。」

「授業はわかりやすいですけど、チョイス先生はそういうところをしっかりしてほしいですよね。」

俺の席は廊下側の二列目であり、一列目にはタスク、三列目にはマサネがいるので俺の席が話をする場になることも多い。

「そういえば!話が変わるんだけどお前らは急に1週間前から付き合いだしたけど、お前らは何が決めてで付き合い始めたんだ?」

こうタスクは他人の聞いてはいけないような場所をズケズケと聞いてくる。

こういう面倒なところは幼い時とずっと変わらない。

「そんなの決まっています。ツグ君は将来、地学の研究をして地震から沢山の人々を救おうという立派な夢があり、現在も彼は努力をしているのです。そんな素晴らしい夢に向かおうとして頑張っている人を応援せずには居られるでしょうか?」

マサネは真っ直ぐで正直者だ。故に相手が気にしていることも、恥ずかしいことも一切恥じずに言えてしまう。それは長所でも短所でもあるところなのだが……

待て、まさかそれって……

「それはツグが好きな事とは違うのでは……?」

言ってしまったなタスクよ。その事は俺も黙っていたのに……

「いえ、ここまで応援してみたいと思った人はツグ君が初めてなのできっとこれは恋なのです!!」

恥ずかしい。これが相手の書いたポエムなのに読んだ人のみがダメージを受ける現象なのか……

「とっ……そろそろ授業の準備をしませんと、次は移動教室ですものね。」

「あぁ、次の教室は美術室か。」

そうして俺たちは美術室へと向かった。



食事が終わった昼さがり、と言ってももう3時を過ぎて昼終わりなのだが、本日の学校の集大成、一番難関である6時間目の授業が来てしまった。

魔物スイマーに襲われ、眠った瞬間に地獄の留年につながる魔の6時間目だ。

「では、今回は前回の続きの地震なんかの単元に入って行くぞ。」

「まず、地震っていうのは海洋プレートが沈mknd」

「ウッ……ガッ…」

静かに悲鳴をあげて授業開始3分でリタイアしてしまった人物がいる。そう誰を隠そう他にいない、タスクだ。

タスクは丁度、昼食を山盛り食べ、5時間目にあった体育の授業を全力でやりきり見事ランニングホームランを決め、チームを勝利へと導いた。のだが大量の食事を食べ終わった後に全力の運動をするタスクは毎度のことながらタスクはこの時間は倒れてしまっている。

南無阿弥陀南無阿弥陀とでも心中で唱えておけば彼は報われるだろうか、きっと報われるはずだ。

と前回までの授業なら思っていたし俺も集中して授業にとりくんでいた。

だが、今回は違う。

「おいタスク、今回以降の授業でダウンしたら留年確定だから頑張れよ。」

「あ……あい……」

心なさそうにチョイス先生の言葉にタスクが答える。

「ツグも友人ならタスクの面倒見てやってくれよ。」

「はい……」

こういうことである。聞かなきゃいけない授業なのに最も集中できない授業になってしまった。

流石にタスクに留年させるのはマズイ。

タスクに一緒に卒業をしようとこの私立校を進めたのは俺だからここは是が非でも授業を受けさせないといけない。


〜数分後〜


「なので、地震によっておきた大地のズレにより断層ができる。っとキリが良いので今回の授業はこの辺で終わる。後、帰りのHRすんの面倒だし今日はもう解散でよろしい。」

「「ありがとうございました!!」」

この先生唯一の良いところがこの怠惰なところだ。他の先生よりだいぶ早く下校の時間になることがある。

学校の教員としてそれで良いのかとも思うがそこは深く気にしないようにしよう。

「じゃあ、俺は部活行ってくるけど、お前らは?」

「教室で部活が終わるまで待ってるよ。」

「私も、教室の掃除や花瓶の水換えに本日の単元の予習をツグ君としたいので残っていますね。学級委員長ですから!!」

「後半は学級委員長関係ないだろ……って感想は置いといてじゃあ、俺はグラウンドに行ってくるわ。2時間後くらいにここに戻ってくるわ。」

そう言って喧しい男はグラウンドにグローブを片手に駆け出していった。

ふむ、数分後教室は二人きりになった。

これが俗に言うデートというやつなのだろうか?

「ツグ君、本日の地震の単元のこのプレートの部分を教えてほしいのですが。」

「あぁ、ここはね。」

どうやらデートというラブラブなものではなく教師と生徒に似た別の関係のようだった。



「で、地震は一回だけでなく第2波、第3波と……」

「そうなんだね。っとそろそろ2時間が経ったね。今日は終わりにしようか。」

予習や少しばかり教室を清掃していたら2時間ほどがあっという間に過ぎてしまったようだ。

「ふんっ!!待たせたな。このタスクさんが戻ってきたぞ!!」

「ツグ君、そろそろ帰りますか。」

「うん、帰ろうか。」

「無視!!主役は遅れてやってくるのに駆けつけたら事件解決してた展開!?」

相変わらず、なんだがよくわからない独特な表現をしてくるやつだな。

そんな笑い事を言っている時に

\ガタガタガタ!!/

突然地面が揺れだした。決して男が震えている擬音ではないので安心してほしい。

「うわっ!!これ地震か?」

「直ぐに近くの机に隠れて!!」

俺は彼らにすぐに隠れるように促し、彼らもそれに応えるように机の下に隠れた。

\……/

第1波がそろそろおさまったか……

とりあえず、ほっと一息を吐く。

深呼吸をしてから辺りを見渡すともうタスクがカバンを背負って教室のドアを開け階段に向かっていた。

「お前ら、帰らないのか?それともせっかく俺を待ってたのにやっぱり二人きりで帰りたいってか?恋人さん。」

「はやく隠れて!!第2波がくる!!」

「第2波ってなんだよ?もう地震終わってんだr」

\ガタッ!!ガタッ!!ガタガタ!!/

先ほどよりもかなり強い揺れがきた。

\パリンッ!!/

教室の電球は地面に落ちて割れ、キシキシと壁から音がしてくる。

すると次の瞬間、地面が歪み天井が割れ、急降下が始まった。

まさか!!

そう思った時だった。地震によって巨大な要塞のようなものだと思っていた施設が簡単に壊れていった。世界が乱れ、壊れていく。そんな気がした。

そっと俺は目を閉じた。



「うーん!!あがれぇ!!」

目を開けるとそこにはマサネがいた。

何やら岩を持ち上げようとしているみたいだ。

起きようとしたところ、うまく立てずに倒れてしまった。

左足が妙に立ち上がらない。疑問に思い左足をみて見ると左足から骨が飛び出し、肉が裂け、血が出ていた。

近くには血まみれのコンクリート片や、机などの残骸や不安定な岩だらけの足場が広がっていた。

「ツグ君気づいたんだね。じゃあ、これあげるの手伝って。」

よく見るとその岩はとても巨大な岩で縦の長さだけでも1mは軽くありそうな大岩だった。そして、その下には血だらけの片手だけが飛び出していた。

「タスケテ……タス……て……」

「まさか……タスクか?」

聞き覚えのある声、これは聞き間違えるはずがない。幼なじみのタスクの声だった。

いつもの大きな元気のある声ではなく、とても弱々しい、小動物のような声だった。

「うん……そうだよ。でも、私たちが絶対に助けるから!!」

また、マサネの方を見ると、人の形をしっかりと保っていなく、左腕がもげてしまっていた。

「マサネ……その腕……」

「大丈夫!!わたしの利き手は右手だから。左腕の一本ぐらいくれてやるって気持ちなんだけど、岩が持ち上がらなくて……」

よく見るとマサネの声のトーンととは裏腹に目からは大粒の水が溢れだし、口には切ったような跡が付いていた。

「マサネ、第3波がくるって説明もしたよな。今すぐ逃げれる二人で逃げよう。タスクの救助はその後だ。」

「そんなことしたらタスク君が死んじゃう!!」

強く断言する言葉だった。実際に自分もうっすらとそう思っている。タスクを見捨てようとしている。

「いや、ここは一旦、一緒に大人の人を呼んでこよう。そうすればその岩も。」

「地震で場所がわからなくなったらどうするの!!」

実際そうだ。次に地震が起こったらもうタスクの位置をすぐに特定することは困難だ。

それにこの血……今は意識があったとしても数分後に意識があるという保証はない。

「じゃあ、ツグ君、私たちを助けてくれる人を呼んできてよ……私はここでタスク君と一緒に待ってるから……」

「でも……」

「行って!!この状況での最善はツグ君が知ってることでしょ!!」

「お……れか……らもたのむ……」

マサネは傷や涙で汚れた顔をニコッと無理やりはにかんで、タスクは優しく安心させるような声色で俺にそう告げた。

「分かった……よ。」

そう言って俺は後ろを振り返らずに足を引きずり必死に何処か遠くに見えた無事なら建物に走っていった。

ただひたすらにがむしゃらに……


「君、大丈夫かい?さぁ、わしがおぶってあげよう。」

建物に近づくと建物の入り口で立っていた60代ぐらいのお爺さんが俺の様子を見て僕の元に来てくれた。

「あの……実は友達が……」

\ガタガタガタッ!!!/

「まずい、一旦話はやめて市民体育館に逃げよう!!」

そう言ってお爺さんは僕をおぶり体育館にかけて行った。


「さぁ、そろそろいいだろう。それで、君はさっきは何を言いたかったんだ?」

お爺さんは体育館の中の受付に俺を連れて行き、そこにはお爺さんの他にもたくさんの大人の人がいた。

「向こうの方角にまだ、俺の友達が助けを待ってるんです。」

そう言って俺は走ってきた方角を指差した。

「友達……か……」

あたりの大人たちが呟き始めた。

すると、周囲の代表のようなおじさんが俺の前に出てきて、こう告げた。

「申し訳ないが此処は避難所であり、まだ救助ができるほど手が回っていないし、非常食も大量にあるわけではない。とりあえず今は君が生きていてくれたことを喜ぼう。」

「俺は助けに行く!!」

そう言って俺は入り口から出て行こうとしたが周囲の大人が俺のことを引き止めた。

「君はこんなに怪我しているじゃないか」

「こんな怪我で外なんて歩けない」

「友達のことより自分のことを考えろ」

周囲から様々な声が聞こえてきた。

すると体育館の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ツグ!!大丈夫?ツグ!!」

「母さん……」

そう、何を隠そう俺の母親だ。

「ツグ!!よく生きて戻ってきてくれた。父さんはまだ戻ってきてないけどすぐにきっと戻ってくるわ。ツグが生きていてくれて本当に良かった……」

母の顔からは目に収まりきらなそうなくらいの大粒の涙を流してホッと安心したような顔をしていた。

「応急処置……お願いします……」

心に何本もの楔が打ち込まれていくようななんだか心臓が潰されそうな……そんな感覚がした。

人の重さ、罪が、何個も何個も積み重なっていくような重みを感じたような気がした。



目が覚めると朝になっていた。

周囲には目に覚えのある人が泣いていた。

「大変申し訳にくいのですが、あなたの息子のタスクさんは遺体で発見されました……」

「タスクゥゥ!!」

何度も何度もそう叫びながら、タスクの父親、母親は二人して大泣きしていた。


「此方が、現在の死亡者行方不明リストだよ。気分は悪くなるだろうが、君の友人もこれで探してみると良い。」

「ありがとう……ございます」

俺をおぶってくれた爺さんが何やら回覧板のようなものを持ってきてくれていた。

リストを見ていると


月島 助玖(タスク) 死亡

(ツグ) 父時(フジ) 行方不明

多彩 縞 行方不明


と、あいうえお順に周辺の住民の情報が書いてあった。

「父さん……助玖も……」

父さんは現在行方不明で今も捜索しているようだ。

タスクはタスクの両親を見て知っていたがどうやら死亡してしまったらしい……

綺麗なグラスがひび割れていく……

とある名前を俺は探した。

マサネマサネマサネマサネマサネ……



和田 真実(マサネ) 死亡



確かにそこにはそう書いてあった……

最後まで元気に微笑んで俺を信じてくれた彼女。

彼女の助けるという意志を押しのけて俺が無理矢理にでも避難所に連れて行けば助かられたかもしれない命。

自分の腕のことよりも誰よりも俺たちのことを気遣ってくれていた彼女……

そんな彼女の名前がそこには書かれていた。



俺は正しいことをした筈だ。

していない。

ちゃんと彼女に警告もしたし、一緒に逃げようともした。

言い訳だ。自分を助けるための言い訳だ。

俺の母親はちゃんと俺が帰ってきてくれて死ぬほど喜んでくれた。

タスクやマサネの気持ちはどうだ。

体育館の人たちも生存者がいて喜んでくれた。

俺を信じて待っていてくれた彼女たちは喜んだか。

全て俺の忠告を聞かずに帰ろうとしたタスクや無理なのに助けようとしたマサネの自業自得だ。

人を助ける気持ちは悪なのか。

俺だって足を怪我していて仕方なかったんだ。

左足の怪我で片腕の少女を見捨てたのは善行なのか。

友人を……君の親友と彼女を見捨てたのは良かったことなのか。

俺だけがあの3人で生き残ったのは本当に良かったことなのか。

人を助けようとして3人で死ぬのと、二人を見捨てて一人が生き残るのはどちらが正しいのか……

うちのところはかなり危険なところだからね。南海トラフとかめちゃくちゃ被害受けるところだからね。

もし南海トラフが来たらこうなるんかな?って思って書きました。イェーイ。

すみませんでした……

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