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第1章 異世界の勇者様

頑張ってね。

[やぁ!!僕は神様だよ!!おめでとう。君も僕の世界に来たんだね。何の神様かだって?そんなの今は気にしなくて良いよ。そんなことより、君は僕と話している以上、少なからず別の世界に興味があるんだね。それじゃあ、君の世界とは違う場所を少しだけ紹介してあげるよ!!]



「勇者様!!勇者様!!」

意識がないのに鮮明に誰かの……うっすら聞き覚えのあるような女性の声が聞こえてきた。

重くなった瞼を開けると、そこには見知らぬ天井、腕や至る所に取り付けられた謎の機械、寝心地の良いとはいえないベッド、修道服に身を包み、メスなどを手に持っている何処かで見覚えがありそうな修道女がそこにいた。

「やっと、目を覚まされたのですね。勇者様!!」

どうやら俺は、この場所で修道女に看病されていたらしい。ならば、お礼を言わなければいけないだろう。

「あr·····」

「勇者様!!今はまだ体調の回復を優先してください。まだ完治した訳ではないのですから。」

お礼を言おうとした所、彼女は俺の言葉を遮った。そこまで必死に言われるとは……きっと俺はかなりの重症をおっていたのだろう。

「お薬を供給する時間になりましたのでお邪魔しました。お薬を飲んでゆっくり休んでくださいね。」

すると、彼女は急いで机の引き出しから液体の入った袋を取りだし、彼女は腕に繋がっていた装置に液体の薬をいれてから部屋から去っていった。

彼女が去った後、少し動こいてみようとしたが、体が重く、少し血の匂いも残っている。

意識が覚めてから急に知らないことの連続で少し疲れを忘れていただけなのだろう。

そう思うと急激に体の疲れを思い出したように俺は眠った。


次の日


「プツンッ/// 」

耳元で大きな音が鳴ったことで目が覚めると、そこには昨日の修道女がいた。彼女は何故か、すごく疲れているように見え、冷汗のようなものを額から流していた。

「疲れているようだが、何かあったのか……?」

そう言うと、何かを言おうとしたのか、口を動かしてニコリと笑顔を見せてくれた。

昨日の疲れなのか、薬の副作用なのかはわからないが、彼女の言葉を上手く聞き取ることはできなかった。

それを察したのか、彼女は今度は声を張り、優しげな声でこう囁いた。

「いえ、勇者様の怪我が本当に回復したのか心配で昨晩は眠れなかったのです。でも、こうして私のことを心配してくれるなんて、勇者様は本当に優しいのですね。

彼女に耳を囁かれたことで、体がびっくりして飛び起きたが、昨日のように体は重くなく、血の匂いもほとんどしなくなっていた。

「そういえば、挨拶がまだでしたね。おはようございます。勇者様。」

「あぁ、おはよう。」

すると、修道女は突然、目からぽつりぽつりと涙を零しはじめた。

「お……おい!!俺は何かおかしなことを言ったのか?」

「いえ、勇者様とまたこうして元気にお話が出来る日がくるなんて、思ってもいませんでしたので。」

「あぁ、それで俺には何があったんだ?」

俺は今、最も疑問に思っていることを問いかけた。

「もしかして……勇者様はこの前のことを覚えていないのですか?」

「あぁ。その通りだ。良いタイミングだからはっきり言うが、この前のことだけじゃなく、あなたの事も、俺自身の名前や記憶さえもなくなっている。」

そう。俺には俺自身のことも俺の事も一切の記憶がないのだ。名前や出身、親の名前etcなど、俺には全ての記憶が抜け落ちていた。

「そうなのですか。それは残念ですね。でも、良かったです。勇者様の命が無事で。」

「あぁ、俺の事を助けてくれたんだろ?ありがとう。それで、俺の事について何か知っていることがあったら教えてくれ。さっきから言っている勇者様っていうのが俺の名前なのか?」

「どういたしましてです。そうですね。ではまず、勇者様というのは名前ではありません。本当の名前は……すみません。私には詳しく分かりません。」

名前はわからないのか……名前や何かわかるものがあれば何かを思い出せそうな気がするが……

「あとは、勇者様の記憶にはないかもしれませんが、あなたは数々の国や村を脅かし、破壊と殺戮を繰り返していた魔王にたった1人で立ち向かっていました。そして、最終決戦で魔王との戦いに敗れ、負傷した所を私が助け、治療していたというわけです。」

勇者や、魔王という言葉で少しずつ自分の記憶が浮かび上がってきた気がする。確かにそんな事をやっていたような気がぼんやりとしてきた。

「ありがとう。少しずつ俺の事を思い出せてきた気がする。」

「いえ、私なんかが少しでも役に立てて嬉しいです。ところでここは最終決戦の地にとても近いのですが、体調も回復したことですし、もう一度挑戦してくださいませんか?」

彼女が上目遣いで俺に頼み事をしてきた。

先程は疲れていてあまり見えなかったが、彼女は金髪で肌は白く藍色の目をしていて顔は整っていて、これは男である以上彼女の頼みは断れないと本能的に察し、それと同時に俺の本来の使命を遂行することで俺の記憶が取り戻すことが出来るチャンスなのだろうと思った。

「あぁ、すぐに行こう。」

「ありがとうございます。勇者様。その……勇者様、少しお願いがあるのですが……」

「なんだ?命を助けてくれた恩人の頼みだ。是非とも叶えたい。」

「勇者様1人で向かうのではなく、私も連れていってくれませんか?これでも、私は治癒魔法が使えるので足を引っ張ったりしませんし、私がピンチになったら助けて貰って構いませんので!!」

「あぁ、別に構わないが、どうして俺にそこまでしてくれるんだ?」

「簡単なことです。私の村を救って下さった勇者様に勝手に死んでほしくはないので。」

ふむ。彼女が今日、涙を流した理由は俺が過去に村を守ったことにあったのだろう。

「良し!!わかった。よろしく頼む。えっと……」

「私の名前はサキュンと申します。」

そういえばまだ、彼女の名前を聞いていなかった。

「では、サキュン。一緒に行こう。」

そう言い、俺とサキュンはこの家を出た。

外に出ると、そこには悲惨な光景が広がっていた。

惨たらしく死んでいる死体や、全裸で首元に切傷があり、息絶えている女性の裸体や、四方に広がっている四肢、内蔵の露出している男性の死体などが様々な場所に転がっていた。

「これは……どういう状況なんだ?」

吐き気が込み上げてくるが、それを抑えてここの状況をサキュンに聞いてみた。

「安心してください。これは魔王の手下達の死体です。魔王は勇者様の指揮や殺意などを抑えさせるために、人の形をしたモンスターなどを沢山用意して攻撃させてきました。」

確かに、同じ同族が相手なら殺しにくいだろうし、よく考えられているな。

「勇者様の優しいところにつけこもうとしてくるので、勇者様は気をつけてください。でも、安心してください。モンスターは人の言葉を話せませんのでそれで区別が出来ます。」

「あぁ、わかった。ありがとう。」

死体が並ぶ悲惨な村を通り抜けると、そこには立派な城が建っていた。

城門の前までいくと、甲冑に身を包んだ兵士2人が俺の顔を見て顔色を変え急いで走ってきた。口は動かしているようだが、何も聞こえない。恐らく彼らは俺を攻撃しようとしてきたモンスターなのだろう。

剣を一振すると、彼らは簡単に倒れた。

「彼らはきっと、ゾンビかなにかだったのでしょう。脳まで腐っているので、勇者様が来たら攻撃しろくらいの命令しか聞くことが出来ませんので。」

「なぁ、本当にあの中に魔王がいるのか?警備がゾンビ程度だとゆるすぎる気がするんだが……」

「勇者様は、魔王の幹部達を全て倒しているので、きっと警備に回せる強い人材がほとんど残っていないのでしょう。今がチャンスですよ。」

流石の魔王も短時間では戦力を強化することが出来ないらしい。

「では、今がチャンスという事だな。」

「はい!!では急いで攻め込みましょう。魔王はこの城の3階です。」

そして、俺たちは門を開け、城の中にいた警備兵を1人、2人、3人と次々に切り倒していき、遂に3階の王の間に辿り着いた。

「凄いですね。勇者様はモンスター達に攻撃の手を与えずにここまでノーダメージで辿り着けるなんて……私は着いていくのに精一杯でした。」

「いや、サキュンのアドバイスのおかげで人の形をしたモンスターへの配慮が要らなくなった。ありがとう」

「どういたしまして。では、そろそろ王の間へ入りましょう。」

扉を開けた途端、魔王は悪魔でも見たような驚いた目で俺を見ていた。

過去に何か魔王に対して攻撃されたトラウマがあるのか、俺は中々1歩を踏み出せなかった……すると、サキュンが魔王に飛び出していったが、すぐに捕まり、片手で首を絞められ、もう片方の手で口を塞げられていた。

サキュンは声も思うように出せないのか、苦しそうな顔をして微かな声で喘いでいるようだった。

「勇者様……私を助けて……下さい!!」

彼女の透き通った声を聞いて、俺は彼女を助けるように動かなくなっていた体を無理やり動かし、魔王の体を切り刻んでいた。

魔王もあまりに一瞬のことで憐れむかのような目で俺を見ていた。

すると、魔王を倒し安心したのか俺は宙に浮いたかのように地面に倒れ込んだ。

倒れる際に目に映りこんだのは、魔王の切り刻まれた死体や、返り血を浴びた豪華とも言えない患者服をきた首のない体と、近くで笑みを浮かべているメスを持った修道女だった。

「人間は首を斬られても、48時間以上意識があるんだって。本当にすごい生命力だよね。だから、聞こえているよね。勇者様♡」

その時の俺には何が起きているのかが分からなかった。

「勇者様が本当に馬鹿で助かったよ。私が治癒魔法が使えるのに、機械や薬を使ってどうして治療をしていたのかも、首を絞められて声が上手く出ないのにどうして勇者様に鮮明に声が伝わっていたのかも勇者様には、一切わかんなかったもんね。」

何故、何故、何故、何故……脳内に数々の疑問が残る。

「もしかしたら、馬鹿な勇者様はこの状況にどうしてなったのか分かってないみたいだから教えてあげるね。」

「まず、勇者様は魔王との戦いに敗れた時にどうしてこんな、修道女が助けにくることができたのか?って思わなかったのかな?正解はそもそも、勇者様は魔王と戦かってないんだよ。魔王軍の幹部である私、サキュバスのサキュンとお互いに大きなダメージを受け、相打ちになって倒れていた所を、最初に家を出た時に殺されていた裸体の修道女があなたを助けて看病してくれていたんだよ。私は傷が塞がってから看病していた修道女を暗殺して、服を奪い、眠っている勇者様を殺そうとしたんだよ。」

俺は何か……間違えたのか……その事が脳裏に浮かび上がった。

「そしたら、丁度勇者様の目が覚めちゃって、私はどうしようかと思ったんだけど、目が覚めても私に対して敵意も感じないから、もしかしたら記憶を失っているかも?って私は思ったんだ♪♪だから、記憶を失っている可能性にかけて、私に傷をつけた勇者様にもう少し酷い目にあってもらおうと思ったんだよ。それが人間の王様斬り!まさか、王様がサキュバスの声を聞くと魅了されやすいと知っていてまず口を塞いでくるとは思いませんでしたよ……」

「まず、魔物と人間に対する区別をつけさせてあげようかと思って勇者様の鼓膜を破ることで人間の声を聞こえないようにしたんだ。

その後に、村人を全員殺して人間のような魔物もいるって設定にしたの。」

「どうして私の声は聞こえてるのかって知りたいの?それは私がテレパシーが使えるからなんだよ。君たち風に説明すると脳に直接語りかけるってやつかな?テレパシーと一緒に口を動かすのはめんどくさかったし、王様に首を絞められて、声を出すことが出来ない時にテレパシーをして、もしかしたらテレパシーって疑われて私が殺されちゃったらどうしようかと思ったんだけど杞憂だったみたいだね。」

この修道女……いやサキュンとの決戦の時の記憶や俺の今までが少しずつ、パズルが埋まっていくかのように思い出されていく…

「それに、兵士たちが何故無抵抗で殺されていったのかもどうしてか分かるよね?そう!!あなたは魔王と戦う勇者様だからなのでした。兵士たちも王様もまさか勇者様に殺されるとは思わなかっだろうね。信じていた人に殺されるってどんな気持ちだったんだろうね?フフっ♪♪今思うと笑えてきたかも。」

「私も口をすべらて矛盾したことを言った時や、王様を前にして動かなくなった時は記憶を思い出したのかと思ってハラハラしましたが、勇者様が義理堅い( 笑 )人で助かりました。ありがとうございます。」

後悔や責任の念、殺人を犯してしまった罪悪感など、様々な感情が自分から込み上げられてくる。

「では、勇者様。今までお疲れ様でした。ごゆっくりお眠り下さいね。」

最後に、サキュンの笑顔が目にうつり、意識が消えていった……





ジャンルも固定されていない本作を読んでくださりありがとうございました。

本編の内容も少なく、暇つぶしに書いた程度の作品で3以降の投稿はいつになるのかすら分からない本作ですが、ここまで読んでくださりありがとうございました。小説なんて基本書くこともありませんし、作者は決して頭はよくありませんが、それでもここまでお付き合い下さり改めてありがとうございました。

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