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第6話 エルフの少女

 翌日。


 次の村へと旅路を進むカイン一行。いつも通りカインとアストライアは先頭を歩く。


 昨日は村の人たちによる手厚いもてなしを受け、キャンプ続きの日常に久方ぶりの華が咲いた。

 隣を歩く男が酒臭いことを除けば、非常に気分がいい。


「……ぁあ……――。」


 隣を歩くアストライアが具合の悪そうなため息をつく。

 酒には弱いくせにその場のノリで飲みすぎる癖は一向に治らないようだ。


「治癒魔法使えばいんじゃないか?」


 カインは呆れながらも水魔法でアストライアが飲む水を作っていた。


「んぁぁ………残念ながら二日酔いに治癒魔法は効かないんだ。魔法っていうシステム唯一の欠陥だよ。」


 アストライアはカインの作った水を飲みながらそうぼやく。


 ―――飲み癖っていう欠陥を直すべきだと思うが。


 そんなことを思うカインだったが、幸いカインは、この世には言う必要のないことがあることを知っていた。

 ぐっと言葉を飲み込み、歩みを進める。


 その時だった。


 カインは非道の草むらで何かが動いたのを見た。

 一旦歩みを止め、草むらを注視する。


 するとそこから出てきたのは、いまにも倒れそうな一人の少女だった。


「―――す――けて………。」


 少女はかすれた声で何か言葉を発した後、その場に倒れてしまった。


「ちょっ!大丈夫か!?」


 カインは慌てて駆け寄る。アストライアも流石に酔いがさめたようで、同じく少女のもとへ駆け寄る。


 フードをかぶっているため顔は見えないが、よく見ると少女の体は傷だらけで、やけどの跡も散見された。服に関しても、もはや()といった方が正しいほどの粗末なもので、右腕は完全に包帯で巻かれている。


 アストライアは治療のために倒れた少女を仰向けにする。その時フードがめくれて、少女の顔があらわになった。とても端正に整った顔をしており、透き通った肌をしていた。それゆえに傷が目立つ。そして何より、()()()()()()()()()()。エルフの特徴だ。


「エルフ!?なんでこんなとこに………しかもこの傷………。」


 驚くカインをよそにアストライアは治癒魔法をかける。

 治癒魔法によって目立った外傷は癒えたが、少女の具合はまだ悪そうである。


「―――探知サーチ。」


 アストライアは探知魔法で少女の体内の異常を探る。カインには到底できない芸当だ。

 するとアストライアの顔がだんだんと深刻になっていく。


「どう?治せそうか?」


 カインが心配そうにこちらを見る。


「うん……。おそらくこの子は『エーテル酔い』にかかっている。」

「『エーテル酔い』?それって倒れるほどのものか?俺だってなったことあるけど、ちょっと気持ち悪くなる程度じゃないのか?」

「……う~ん……そのはずなんだけどね。」


 生物にはもともとエーテルを製造する器官と貯蔵する器官が存在する。一般人はエーテルを製造する器官が働いていないため、エーテル酔いになることはない。エルフや魔法使いは無自覚のうちに体内のエーテルを身体の状態維持や免疫などに用いているため、同様である。


 「エーテル酔い」とは、自身のエーテル貯蔵器官の最大エーテル保有量を上回ってしまうことで、エーテルの扱いに慣れていない初級魔法使いによく見られる。症状としては気持ち悪くなる程度である。


 そのはずなのだが。


 ―――それにしてもこれは異常だ。


 先ほどの探知によってアストライアは少女の現在の症状やエーテルの状態を確認している。その中で気になることがあった。


 エーテルの保有量が異常なほど多かったのだ。


 常人であれば、体内のエーテル負荷に耐えきれず、身体からだが裂けてもおかしくないほどの量である。それをこんな華奢なエルフの少女の身体が耐えきれているなど、前代未聞である。


「―――とにかく近くの村へ運ぼう。そこで何とかする。」


 アストライアはとりあえず不可解な点についての考察は後回しにすることにした。


 事情を伝え聞いたグレゴリーは、カインとアストライアに馬を貸して、少女とともに先に村へ行けるよう手配してくれた。



 ***



 村に着いたアストライアは、家を一軒借りて、そこの寝床に少女を寝かせた。

 そこへ井戸から水を汲んできたカインがやってくる。水の入ったバケツを少女の下に置き、アストライアに一つ尋ねる。


「なぁ、いったいどうやって治すんだ?あんた別に医者じゃないだろ?」


 すると座って少女の様子を見ていたアストライアは、急に立ち上がり呟いた。


「―――【()()】を使う。」

魔眼がんががん

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