次代育成
レーベルク帝国から帰って来たサラ達が、侯爵領の運営に再び注力することで、侯爵領の人気がますます高くなり、他領からの転入希望者が増えて来る。
「サラ様、王都から連絡が来ています。他領から、住民流出に関する苦情が増えているそうです。自領の運営に注力して住民流入に励むようにすれば良い、と官僚達は回答しているようですが、このままでは他の領主達に恨まれてしまうのではないかと」
「私は恨まれても困らないけれど、ローデットがそういうということは、解決策が?」
「流石ですね。はい、転入者には課税するようにしましょう。そうすればこの領でも対策をしたと他の領主達に言えますので」
「で、本当に転入税を取るの?」
「はい、経費がかかるのは確かですので。ただ、そのお金で子供の学校を整備、読み書きなどを教えるとしましょう。目的が次代のためであるならば、転入して来る子育て世代、これから子供を産むつもりの世代には逆に歓迎されるでしょう」
今までも寺小屋的な私的な子供用の塾はあっても、制度として整備された学校は13、14歳の魔術学校、騎士学校、貴族学校であった。それをそれよりももっと若い段階で読み書き計算や簡単な体術などを教えるのである。15歳で成人する前、だいたい8〜10歳くらいから住み込み見習いを開始するので、それより前の6〜8歳くらいをターゲットに考える。
食事も提供するし、家で下の子を子守している年代であることも踏まえると、一緒に学校に来ればそれより下の子を預けるか一緒に勉強できるようにする。
もしもその学校で頭の良さを発揮できれば、侯爵家へ文官として雇用する道としての文官見習いに進んでも良い。逆に身体能力に優れた者は武官として雇用するための見習いの道も用意する。親の職業に関係なく、である。
既にそれよりも上の年齢であるが、今からでも学びたいという者のために、子供達とは別の学校も準備することも検討する。
「これで、侯爵領の次代を担う者たちの育成になりますね。この領の特長である魔法使いの多さも、早い段階からの頭の良さの確認、そこからの育成とすれば確実ですし。サラ様たちのお子様のご学友が側近になってくれる期待もありますね」
「ローデット、それは気が早いわよ」
「いえ、早くありません。皆がお待ちしていますから、私からはっきりとお伝えします」
最近はサラとハリーの子供、嫡子についての期待の声が増えてきて、まだまだ魔法のことなど色々したいサラには逃げ出したい状況になってきた。




