侯爵領赴任行脚3
着任してのあいさつ回りを兼ねた、街や村への≪転移≫による行脚も、似た感じになった。
まずは怪我人や病人への治療、すぐ取り掛かれる外堀の整備や井戸掘りなどの土木工事、魔物狩りなどである。
街の代官や村長も同行して貰い、残った住民要望を整理して貰い、利益相反の事例ではどちらがあるべきかの判断や優先順位付け等を頼むことにした。
街の代官館や村長宅の近くには祠を設置し、水精霊シルビーの祠での緊急伝達手段をここでも確保することにした。もちろんシルビーには領民皆からの感謝、祈りだけでなく他精霊たちより多めの魔力、魔石の奉納をサラたちが約束することにはなった。
基本的に村には貧民街ができたり孤児が生活できたりするほどの余力はないので、貧民街がある5つの街でも孤児院の設立などをすることにした。いきなりでは運営する人手が足らないため、各神殿の孤児院への補助金による収容孤児数の増加を頼むなど臨機応変にしている。
また特に村に行脚する際には、上空から近くの森などを散策してオークやゴブリンの村、盗賊拠点の有無を確認し、もし発見した場合には領軍を連れてくることにした。
元々のドラセム家の従士団なら簡単に殲滅できるのであるが、領軍の訓練やハリーによる新たな部下への指揮練習のためでもある。もちろん万が一にも死亡しないように怪我人へ対処できるように魔術師団員は必ず随行させている。
盗賊の場合には可能な限り生け捕りにして犯罪奴隷にして、不足しがちな孤児院運営や裏部隊の組織化に充当していく。
これら行脚に従士団員の全員は同行しないため、≪飛翔≫ができるメンバを分散して街や村の近く以外の領地に対する地図製作を並行して実施している。
これにより川や池の正確な把握による治水計画、魔物の生息状況の把握をする。以前、サラたちは侯爵領の北部の魔の森についてはダンジョンを含めて把握していたが、残りの広大な領地の把握には時間がかかるので、少しずつ、人の生息域に近いところから優先順位をつけて、ということになる。
領都自体が海に面しているため、以前にサラが代官地と海を船で行き来したいと考えた気持ちは減ったはずであるが、正確な水路把握は内陸部への船の移動に貢献できると皆からの忖度でもある。




