転移陣
婚約騒ぎについては最低限の対応をまずは終わらせたところで、本題に戻すために龍の爪先村に再び戻る。
「でね、帝国の皇弟派から狙われているのよ。こうなるとお義姉さん達まで危険になるかもしれないのが心配よ」
「うーん、それは困る。俺たちだけなら何とかなるかと思っていたが」
「本当に王都に来ない?」
「いや、彼女たちの実家もこちらの方だしますます難しいかな」
仕方ないので、サラは実家近くに作っていた祠などのための小屋の床に王都の本宅向けの転移陣を作っておく。魔力が少ない家族でも使えるように、必要な魔力がある魔石も近くに置いておき、転移陣を使うときにはその魔石を魔法陣に押し当てるように、と使い方の見本を見せる。
「ほぉ、これはすごい。俺達でも使えるのだな」
「お義姉さん達にも教えておいてね。数人程度ならば転移できると思うから」
「ところで、お義姉さん達とこの村で暮らすということ?」
「俺たちはそのつもりだったよ。狩人しかできることがないからな。またしっかり話し合っておくよ」
いつまでも村に残っていると、娯楽が少ない村ということで今夜も酒の肴にされた飲み会になることから逃げるため早々に王都の本宅に戻る。
しかし、こちらはこちらで代官地からも多くの家臣団や、寄子貴族それぞれが祝辞のために来てくれていて、結局は今夜も飲み会になってしまった。
日が明けると早速、結婚パーティーの段取りをどうするかと貴族や関係者への対応の関係としてはローデットが中心に、女の子の憧れの実現という観点ではリリーやミーナたちがそれぞれ色々な思惑で話を進める。
住居が変わるわけでもないし、そんな大したことを、とはとても言える気配ではなかった。
 




