ワイバーン卵
ワイバーンは3頭とも死亡しているようであったが、巣の奥に卵が1つ残っていた。悪魔ストラデルに聞いても≪呪詛≫などがかかった気配は無いようであるし、少し大きいがロック鳥ガンのときのようにハリーが育てたいと希望するので、ハリーに預けることになった。
これ以上は山の上に居る必要もないし、別のワイバーンを刺激することも避けたいため、捕縛した帝国兵たちも歩ける程度には緩めた縛りに変えて、下山することにした。
徒歩の帝国兵が増えたことにより進行速度が遅いことは気になる。
ただ、水精霊シルビーによる伝言で、ロワイヤンの街近くの国境、ヴァーヴ伯爵領都、王都それぞれに龍の棲む山での顛末を報告すると共にそれぞれの状況を確認すると、問題は発生していないとの返事であり、安心する。
戦闘後の諸々も終え下山を開始した頃、山の上の方から恐ろしい気配が近づいてくるのに気づく。従魔たちも明らかにおびえている。
先ほどの戦闘でかなりな騒音を出したことが原因で、山でも上層に棲むドラゴンが見に来たのだと思われた。Aランクのワイバーンの気配とは全く異なるので、Sランクのドラゴン、もしくはさらに上位の存在であろう。とても戦うに気になれず皆で逃げ降りる。
翌日の夕方にはドレイクの死体もあったところの捕縛した帝国兵たちとも合流する。そこで野営をした後は、残った帝国兵も一般兵しか居ないことから、ここで解放することにする。帝国軍の兵糧は没収していたが、彼らが徒歩で東に下山して生活圏に戻れる程度は配布する。また魔物に遭遇したときに対応できる程度の最低限の武器も返却する。
その上で、サラは≪簡易契約≫で、家族が人質に取られる等でない限り、今後はサラたちに敵対しないと誓わせる。帝国兵たちも今回の命拾いは偶々であったことを認識しており、契約魔法が無くても敵対するつもりは無い。
サラたちは敵兵も魔物も居なくなった間道を西に戻る。いつ国境に危機が訪れるか不明なため、サラとティアーヌだけ先に≪飛翔≫で戻ることにし、残り4人はバトルホースへの騎乗でそれなりの速度でロワイヤンの街付近の国境を目指すことにした。
サラとティアーヌの2人は、龍の爪先村とエルフ村に状況を説明してから、ロワイヤンの街付近に向かう。その際、サラは父兄たちに、成人したのだから結婚と子供を、と言われて耳をふさぎながら飛び出す結果となった。




