帝国訪問準備2
帝国に向かうにあたり、サラたちは立場的に自身の紋章がついている貴族用の馬車を使うように指示される。御者はアルベールに任せて、馬車にはサラとリリーが乗り、ハリーとミーナとリリアナが騎乗であるが、馬車を引くのはアルベール用のソンとリリー用のセンであり、サラ用のハンは乗り手が居ないまま馬車の近くを並走することになった。
サラたちはローブや革鎧のまま、王城で他の外交官たちと合流する。
「今回の正使であるテオドナ・モンブリー法衣伯爵である」
「副使であるクリミーユ・タンプ法衣子爵である。我々は外交官である文官であるので、ドラセム殿、武官としての働きを期待する」
「エドガール・ユニオール騎士爵です。護衛隊長を務めます。よろしくお願いします」
「サラ・ドラセム法衣子爵です。経験もない未熟者ですのでどうぞよろしくお願いいたします」
「今回の戦争ではドラセム殿が大活躍であったと聞いている。ただ、戦後処理については外交官の我々に任せて貰おう」
「もちろんです。よろしくお願いいたします」
その後、今回の護送相手である帝国軍の元司令官と副官のもとに移動する。
身分を踏まえて捕虜ではあっても、それなりの馬車であった。武器はもちろん取り上げているが、かなり自由に行動できる程度の足かせだけである。
「ふむ。今日は仮面をしていないのだな、魔女よ。意外と若く綺麗な顔をしていたのだな」
「ベンタイン伯爵、仮にも子爵とのことですよ、この我々を捕縛した強い銀髪魔女は。あまり失礼なことをしないように気をつけましょう」
「はい、サラ・ドラセム子爵です。帝都まで同行させて頂きますのでよろしくお願いいたします」
「ふん!」
「はい、よろしくお願いいたしますね」
と、司令官であったベンタイン伯爵と、副官であったトリアン子爵との顔合わせも終える。
サラの馬車以外に、正使、副使それぞれの馬車、捕虜の馬車、食料などの馬車、事務官の馬車がそれぞれ2台、正使、副使の従士以外にもそして護衛隊の騎馬が十数人というそれなりの規模の旅団になった。




