魔法発動基礎
2日目の朝、サラのところには話に来るクラスメイトが増えた。もともとリリーやフェルール、フェルールの取り巻きと話していたぐらいであったので、侯爵?令嬢の取り巻きなどは苦々しく見ている。ただ、その侯爵?令嬢本人はそんなつもりはないようで、
「私はクレマリア。あなたすごいわね。師匠に習ったと言っていたけど、いい師匠についたのね」
と話しかけてくるぐらいであった。
授業は
「昨日の実技でも詠唱する者としない者がいましたように、詠唱は必須ではありません」
という話から、魔法発動の基礎の話が始まる。
魔法の発動は極論すると感覚、センスのみで行うことができる。ただ、それを人に指導したり毎回同じように発動したりするためには、発動の工程を言語化、定型化する必要がある。その言語化に魔術語が使用され、それを言葉として声に出すのが詠唱。
ただ、例えば歩くときに右足を上げて前に出して下ろして、右足が地面についたら今度は左足を上げて前に出して下ろして、と声に出したり考えたりしなくても多くの人は普通に歩いている。病気や怪我のリハビリのとき等には改めて意識するのだろうが。
同じように魔法の発動も、声にまで出すと一番確実に手順を確認しながら進めることができるが、一部を省略した簡易化や、声にせずに思考するだけ、さらには工程を意識せずに発動することも可能になる。魔物や敵兵との戦闘などでは当然、意識もせずに発動する方が優位である。慣れるまでは効果が減るなど不安定になったり魔力を多く消費したりするが、習熟出来ればその問題はなくなる。
魔術語の詠唱以外に魔術語を書きだした魔法陣も、発動の補佐になる。魔術語と幾何学模様で出来た魔法陣を描くことで魔力操作の補助をさせることになり、詠唱と併用することもできるが、これも省略することができる。
ある魔法を発動するときの魔法陣には2種類あり、1つは詠唱するのと同様に発動時に中空に魔力で魔法陣を描くものであり、もう1つは事前にスクロールなどに描いておくものである。後者の場合には魔力を込めるために、砕いた魔石を混ぜたインクで記述する。
前者は上級者で無いと逆に難しいとされ、高位魔法の際に使われると言われている。実際にAクラスのなかでも詠唱する者は居たが、魔法陣を浮かべる者は居なかった。




