仕官騒動
サラの故郷の村から伯爵領都に戻る途中でサラの12歳の誕生日が来た。今回は定例のパーティーメンバ全員の装備向上の誕生日プレゼントは出来なかったが、ちょうど泊まった宿で豪勢な食事をするにとどまった。
伯爵領都に戻ったサラは師匠エミリーの店舗兼住宅に帰ろうとすると店舗前に多くの行列ができていた。
「サラ・ドラセム様にお取次ぎを」
などの声が聞こえて、エミリーが
「サラは不在です」
と言っても
「こちらをお渡しください」
などの騒ぎになっている。
サラは怖くなって住宅側の裏口からこっそり入り部屋で隠れていると、エミリーがやってきて
「準貴族とはいえ貴族の当主になったでしょ。仕官の希望や、準男爵や騎士爵の次男以下を婿にどうかという話がたくさん来ているのよ」
と説明してくれた。
「人を雇ってもして貰うこともないし、結婚なんてまだまだ分からない」
と困った顔をするサラにエミリーは助言をする。
「雇用や婚姻はまだ望んでいないのでご承知おきください、必要となったときには、良識ある行動をとられる方から選びます、の意味の署名・紋章入りの張り紙をしましょう。あと、寄親の伯爵に結婚斡旋を牽制するようにお願いに行きましょう」
さっそく張り紙を作成し、エミリーの店頭に貼る。次に伯爵へのお願いの手紙を書いて紋章で封印したものをエミリーが渡しに行ってくれた。エミリーは執事にでも渡すつもりであったが、領都に居る金級冒険者を大事にしたい伯爵は直接対面し、
「ドラセム家の婚姻については、寄親の私がしかるときに対応する旨を広めることにする。今は冒険者や学生など自由に成長するが良い」
と返事を貰った。
その返事を伝えたエミリーにサラは迷惑をかけたお詫びと感謝をする。




