子供冒険者
小さな剣士と小さな弓士に近づかれて戸惑うサラ。
それを感じた女の子は
「ごめんね。私はリリー。こっちは兄のハリーよ」
と自己紹介を始める。
「そう、俺はハリー。見ての通り剣士を目指している」
と剣を抜いて見せる。
ますます引いてしまうサラ。
「またそんな怖がらせて。剣をしまって。私は見習い弓士ね。あなたの名前は?」
「サラ」
と、ボソッと答える。
「私たち、兄妹で木級冒険者だけど、訓練のために来たの。あなたは?」
と問われ、さきほど採取した薬草の葉を見せる。
「こんな葉っぱ、何だよ?」
「薬草採取だったのね」
「え、じゃあ俺の怪我、治せるのか?」
と小さく怪我している右腕を見せてくる。
サラは小さくうなずき、しゃがんで足元の岩場で1枚の葉を小石ですり潰し、湖の水を混ぜたものを別の葉にのせて、ハリーの怪我のところに当てる。その上で、足元の細長い草の茎を使って腕に結ぶ。
「おお、ありがとう!」
とハリーは喜ぶが、サラは魔法回復薬でもないので直ぐに治るわけでもないのにと内心思う。
回復魔法ではなく薬草を使用したので、
「やっぱり、さっきは魔法じゃなかったのね」
「えー、空中に水が見えた気がしたのだけどなー」
と言うので、サラは
「まだ見習い」
と言い、親指ほどの大きさの水を空中に浮かべて見せた。