マウロ島被害3
「ドラセム侯爵、申し訳ありません」
救援物資と一緒についてきた文官達に混ざって来たのは第1王子アナトリオであった。王子3人ともがこの魔物との最前線の島に来てしまっているのである。サラの表情を見たアナトリオがまず謝罪してくる。
「海軍閥のジラルド、陸軍閥のダニエーレの2人が衝突して問題を起こす可能性を考えました。ドラセム侯爵の邪魔をしないよう、長兄の私が必ず制止します。そのために参りました」
「お願いしますね・・・」
「サラ、気にせず俺たちはやることをやろう」
一緒に来たハリーが慰めてくれる。
今は海軍達も喧嘩する余力もない状況であったので、治療が終わった者から炊き出しの食事を受け取り、仮設テントで睡眠をとっている。応援に来た陸軍達もその状態の海軍を攻めるようなことはしないようで揉めなかったが、睡眠から起きて来た後が心配である。
「ダニエーレ、お前達はこの港以外からの魔物の接近を警戒しろ。石壁の内側に野営設備を構築して、石壁の上から見張りを行うように。ジラルド、お前達は一息ついた後、崩れた建物や船から回収出来るものを探してこい。そして助けられなかった仲間達を埋葬しろ。現地を知る者しかできないことだ。互いに干渉せず、決してドラセム侯爵の手を煩わせることが無いようにな。お前達どころか国中が束になっても勝てない相手なのはわかっただろう?」
「分かっているよ、アナトリオ兄上」
「あぁ」
特に第2王子のジラルドは、王太子争いを第1王子と行っていたので素直に指示に従うのは感情的に抵抗があり口数は少ないながらも了承する。




