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巡視船かみしまを預けてきました

 ドッグ入りしたかみしまは、数ヶ月は石垣には戻ってこない。船頭のへこみは鯨だとはとうてい思えないほど、損傷がひどかった。

 今回の修理は長崎の造船所で行うことになり、マスコミからも完全にシャットアウトした形だ。

 このたび伊佐と歌川は、かみしまの修理の手続きに訪れたのだ。


「かみしまも来て早々に大怪我しちゃいましたね。もしかして伊佐さん、なにかに取り憑かれていませんよね」

「雷男の歌川に言われたくないな」

「痛いところを突いてきますね。それはさておき、結局は誤魔化せたんですかね。かみしまのあの破損」

「技術屋を騙すことはできないよ。表向きは鯨だと口裏を合わせてくれたのが幸いだった」

「しつこかったですよね。護衛艦と衝突したのかとか、お隣さんとやりあったのかとか。ま、誰も人造人間だなんて言いませんでしたがね」

「久しぶりに、こっぴどく叱られたな」

「ええ。本当に、酷い言われようでした」


 何年もかけて心を込めて製造した船。日本最大級の最先端技術を注いだあの船を、最初の任務であんな姿にしてしまったのだ。理由はどうあれ、生みの親からしたらたまったものではない。我が子を痛めつけられたのと同じなのだから。


「しばらくは、かみしま乗務員は他の船に乗ることになりますね。勤務内容の見直しと、予算更新とあとは……ああ、もうっ。僕はなんて忙しいんだ。給料上げてください」

「はいはい」

「伊佐さん! なんとかなりませんか、この給与システム!」

「おい、もうすぐ着くぞ」


 かみしまを預けた伊佐と歌川は、仲良く民間機で石垣島に帰ってきたのだ。

 伊佐は着陸のためファイナルアプローチに入った航空機の窓から外を見ていた。


「空から見ても、この国の海は美しいよな」

「とくに南国の海は、仕事なんてしたくなくなるくらいに美しいですよ」

「まったくだ」


 大きな揺れもなく、穏やかに機体は滑走路に降りた。

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