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まるで、お前が主役

 頭の中では現実逃避の言葉が反響している。

 

 あーあ、飲んじゃった。

 

 一仕事やり終えた、爽快感を堪能していると、徐々に血液が沸騰していくのがわかる。


 体の奥底から倦怠感と相反する効用がせめぎ合う。


 ふと、不可解な音がお腹の方から聞こえてくる。

 音が大きくなるに連れ、お腹に激痛が走った。

 腹の中から何かが細胞の中を駆け巡り、お腹を食いやぶり、外に出ようとしているのがわかる。

 俺は恐る恐る自分の腹を撫でようとした。


 「がっああ、指が、あれ、あれの指が」

 

 腹から浮かび上がった幾多の口の一つが、自分自身の指を噛みちぎり、咀嚼している。 


 口が、俺の体、体に口が!

 

 そこには大小さまざまな口が腹を中心に広がろうとしていた。

 一つは大きな牙が口の外まで飛び出している。犬歯が何十にも折り重なっている口も、多様な口がお腹を起点とし体をゆっくりではあるが着実に侵食し始めている。

 

 なんなんだよ。


 俺は指の千切れた痛みなど気にも留めず、体を活性させ爪を伸ばし体を掻き毟る。

 指や腕に噛み付かれようとも、口の侵食を止めないと。 

 その一心で俺は体に爪を入れていく。

 

 自傷行為も虚しく、とうとう、口が顔や足の裏、体を口が覆った。


 (最悪だ、覚醒なんてしなければよかった)


 俺は傷ついた左腕を左目にあてた。 



 ブチチュ



 という音とともに左手に噛みつかれた俺は反射的に腕を引く。

 

 体の引っ掻き傷から流れる血を無数の口が舐めていく。


 「なんなんだよまじでっ!、、、」


 泣きそうな俺を尻目に部屋の中を歯ぎしりの音が支配する。

 その中に微かに、生物の足音のような音が聞こえた気がした。

 

 まだ僅かばかり感覚が残っているのか鼻が、むずってきた。


 「エッグしゅん!」


 くしゃみとともに鼻から一センチにも満たないドラゴンが鼻から出てきた。

 産まれたばかりなのか、はたまた鼻水なのか、体液のようなものが付着させながら頭の周りを旋回している。


 俺の前世は魔物製造機とかだったのか?

 俺は、俺の生活は、、、お終いだ、、、

 足が痒い!足が痒い! 足が痒い! 

 いやだ見たくない、もうやめて!


 両足がくすぐられているのを感じ視線をゆっくりと下げると、無数の昆虫型モンスターが口から這い出し列をなし、テーブルの足をつたって地面にも広っがっていく。


 「いやああぁっぁあ!!!」

 

 俺の叫びに連動したのか、身体中の口が開いたのがわかった。

 俺の口という口から、無数のモンスターが魔力とともに、体から飛び立った。

 

 右目に映るのは、俺の周りを囲み部屋に散らばる無数の小さなモンスターたち。


 そしてテーブルの上にたつパンイチの俺。

 俺は昆虫が大量に敷き詰められた部屋に一人入れられた気分だった。


 

 おい、あのドラゴン上に人が乗せてる!

 俺がドラゴンライダーじゃないのかよ!

 なんだよ、俺はどうなるんだよ。

 魔法そうだ、魔法で魔法で全部燃やしてやる。


 薫はあまりの出来事に頭の整理が追いついてはいなかった。

 ただ、恐怖だけがそこにあった。


 俺は体の中に僅かに残っていた魔力を右目に込めた。


 俺の魔力の変化に気がついたのかモンスターたちが俺を目掛けて、素早く攻撃を仕掛けてきた。


 薫はドラゴンライダーが魔法で出した火の粉を避けようとしたが、バランスを崩しテーブルに尻餅をついた。


 クチャ、ギュチャ 


 薫は振り返るとそこには、自分が踏み潰した無数の昆虫の死骸が紫の体液を流し散乱していた。


 なんなんだよもう!


 すぐさま冷静さを取り戻し俺は動けなっかた理由を探った。


 まるで足と机が一体になっているように感じた理由はなんだ。

 なぜ? なぜ? な、、、


 薫が視線を戻すと足には糸が張り巡らされていた。

 

 「い、痛い。あ、あっちちいいイィいいい」 


 考えている間も薫はチクチクとモンスターたちに攻撃されている。


 小さいから、針で刺された程度だけど、火はやばい。これが続けは流石に、、、

 

 「ん?」


  体の中から機械音が響き、産まれた時から授かった口が無理やりこじ開けられ、喉を棒状の物が這い上がってくる。

 

 嗚咽とともに口に違和感を感じた。


 突起物が薫の喉を通り口に出現したのだ。


 舌で確認するもそこには筒状のものが口の中に設置してあった。 

 舌の上を幾多の何かが歩き回り初めて、歯に何かをセットしている。

 

 鈍痛とともに口元から発射されたそれは、今まさに攻撃しようとしていたモンスターを、木っ端微塵にし壁にめり込んだ。

   


 壁にめり込んだそれを見て俺は驚愕した。


 あ、あ、あれは歯?

 ない、ない俺の犬歯が舌で確認できない。

 なんだ、何が起きてんだよ。

 

 薫はあまりの出来事に痛みなど忘れ呆然としていた。

 それは薫の体内より這い出してきたものも一緒であった。

 

 

 ウィィイイイン!!ウッィィイイイン!!



 突如薫の体より再び発せられたけたたましい機械音。

 それと同時に全ての口から突起物が姿を現した。


 薫は次に起こるであろうことを本能的に理解した。

 立ち上がり咄嗟に、両腕を前に突き出した瞬間、全身に走る激痛とともに大量の弾丸が打ち出された。


 四方八方に打ち出された弾丸は、近ずいてきたモンスターを歯の弾幕が形成した、徹底した面制圧により駆逐していく。


 空中で華麗に避けていた。モンスターたちも時間の経過とともに無残に散っていく。

 

 地上にいた虫たちの脅威はさり、空中に残った残存のモンスターはドラゴンライダーを中心に部隊を再編させる動きを見せていた。

 

 その間も薫の体から幾多の弾丸がモンスターを駆逐していく。


 気がつくと薫の前には一直線上に伸びたモンスターが並んでいた。

 

 大元の口から発射された弾丸は、最前列のモンスターに直撃したが、そこには密集陣形を取り薫の歯を受け止めたモンスターたちの姿があった。


 薫の弾丸をこの程度はとあざ笑うかのごとく、弾丸を放り投げた。


 おい、おい、受け止められるなんてありえないだろうが!

 アドレナリンが大量分泌してんのかな、痛みがないのに弾丸を打つたびに血が飛び散っているよ。

 口にはあと数本しか歯がないし。


 薫は落ち着きを取り戻していた。

 

 空中のモンスターが密集陣形を築いたまま、自らの羽をはためかせ突撃を繰り出してきた。

 

 時間が静止する中

 

 突如腹パンされた感覚とともに、残っていた魔力が放出された。



 ダーン!!!


 

 呼吸ができなくなり、空気を求めて息をしようとする中、俺は確かこの目で見たんだ。


 モンスターたちが一丸になり業火の弾丸を止めようとする。

 燃え尽き落ちていく仲間を見送ることなく、奥から別のモンスターが弾の軌道をずらそうと、一列に並んでいく。

 その目に悔いはなくただ次に繋げようとする意思が瞳に宿っていた。



 眼前には壁に刺さった巨大な牙。

 

 業火に焼かれたモンスターの合間を縫い、雄叫びをあげ満身創痍のドラゴンライダーが薫の前に迫ってきた。


 炎を突っ切ってくるなんて!

 

 まるで、


 まるで俺が悪役じゃんかよ!

 



 

 

遅くなりましたが、ブックマークされた方々ありがとうございました。 


皆様のおかげで、私の作品が誰かに読まれている実感が湧いてきます。


いつかランキングにと思ってしまいます。


読まれた方への礼儀として、最後まで書き続ける事をお約束致します。



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