違う種類
午後7時、城内。
調印式も無事終わり、その関係者も集まり、さらにパーティーは、盛り上がりを見せる。
「ハク何か聞こえるか?」
目を閉じ耳を澄ませるが、音楽隊のせいで何も聞こえない。
「バイオリンぐらいしか、聞こえん」
イアは鼻を抑えている。
「おぉぉお」
「イア何かあったか?」
「香水がやばい」
確かに普通の嗅覚でも普通に匂ってくる。
「イア、えーと……。我慢しろ」
「おおおぉぉ」
リンはまともや、踊っている。
「いち、にの、さんと」
以外とノリノリだ。
カーゴが尽かさず無線を入れる。
「リン、あまりはしゃぎすぎるなよ」
こちらから、リンの顔がみるみる赤くなっていくのが、わかる。
「ハク、念のため二階の観覧廊下から看視を頼む」
「了解」
右の扉に入って、レットカーペットがかかっている階段を上がり、廊下から下の会場を見渡す。
「ずいぶん場違いな所に来たな……」
中央の踊り場では、貴族たちがダンスを踊り、その周りには、大きなテーブルが置いてあり、豪華な料理が並んでおり、その周りで食事と会話を楽しんだりしている。ワインやシャンパンを配るウェイター、新しい料理や空き皿を持つシェフが、絶えず厨房室から出入りをしている。そんな中に、見慣れた少女が食事をしている。
「あ、マール発見」
マールに無線を入れてみる。
「マール、上向いて」
マールが上を向き目が合うと手を振る。マールは笑顔で手を振りかえしてくれる。
舞台では、オーケストラが演奏している。入口には、護衛の兵隊と、受付係が仕事をしている。
そっと目を閉じる。
貴族他愛のない会話。オーケストラによる無数の楽器による豪華な演奏。食器やワイングラス当たる音。厨房から聞こえてくる、シェフの指示声。
肩に何か当たる感触がする。
「―――――!」
瞬時に後ろを向き、胸ポケットに手を入れ、銃を手にしょうとする。
「すみません。驚かせましたか?」
そこには、純白のドレスを着たエリゼ姫が立っていた。
「す、すいませんでした姫様!」
慌てて頭を下げる。
やってしまった。
心臓の鼓動が速くなり、変な汗をかく。
「大丈夫です、護衛さん。こちらこそ急に申し訳ありません。」
姫は一礼する。
「あの少しお話しませんか?」
なんとか危機を回避したと思ったが、話すとなると緊張する。なんせ相手はこの国のトップになるかもしれない存在だ。
「はい、大丈夫です。」
「あまり畏まらないでください。お名前と年齢を聞いてもいい?」
畏まらないで、言われるがどうする?
「あ、はい。私の名前は、ハク・カイリです。17歳です」
エリゼ姫は、手を口にあてる。
「やはり、私と同じ年齢でしたか」
年は同じなのになぜか姫のほうが、大人っぽく見える。
「今日のパーティーはどうですか?」
エリゼ姫は、俺の横に来て、下の会場を見渡す。
同年だし、畏まるなと言われたんだ。いつもの感じで良いのだろうと思い、体の向き変え、下を見渡す。
「正直、あまりこうゆう場所に来たことがないから、よくわからない。だけどたまには、悪くないかな」
「そうですか。ならよかったです。ハクの仲間も皆同じ年なの?」
「あぁそうだ。一人遅生まれがいて、まだ16歳の子がいるけどな」
「それは、ぜひお友達なりたいです」
「そうか……」
……。
会場の音で話さなくても、特に気まずくなったりはしない。
エリゼ姫は、口を開く。
「ハクは、なんで軍人になったのですが?」
ハクは、淡々と過去の事を話した。
「苦労なさったのですね……」
エリゼ姫はショックだったのか、下を向く。
確かに姫から見れば、大変そうだったかもしれない。
「確かにそうかもしれない。それでも姫さんだって、苦労はしているだろう。社交辞令の挨拶に、大人たちのプレッシャー。今日だって笑顔を絶えず話していただろう」
エリゼ姫は、少し驚く。
「この仕事おかげいろいろな人に出会えたわけですし、殺した相手を含めて……」
「やはり人を殺したことは、あるのですか?」
「それが俺らの仕事みたいなものですから」
「そう、悲しいわね」
すると羊らしき人物が下で慌ててるのが見える。
「私そろそろ行くね、またお話聞かせてね。ハク、あと姫じゃなくてエリゼ、エリゼ・バートリーだから!」
手を振りながら、行ってしまった。
「何を話していたんだ?」
カーゴから無線が入る。
「見てたら何かしてくれよ」
カーゴはこちらを見ると、少し笑顔になる。
「いや、お邪魔かなと」
イア無線から無線が入る。
「おぉ? ナンパか?」
こいつ
「エリゼ姫の方がイアより性格は、良いとわかったよ」
「んなお前! うぉ臭」
無線を無視する。
貴族なんて、金持ちで人を見下しているという偏見があったが、将来、人の上に立つかもしれない人間は、俺たちよりどこか、陵駕していると思った。