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仲間がいるこの世界で 5

頭がぼーっとして、腹部に少しだけ痛みを感じる。

俺は、いつの間にか寝ていたのか気絶していたのか分からないが、どこか知らない場所で目を覚ました。


本日は晴天の用で、空には雲ひとつなく、太陽が眩しい様子がこの目で感じ取れる。

怠くてこのまま起き上がるのが億劫だ。

でも、服がものすごく臭いから速い所起き上がって脱いでどこかで洗っていしまいたい。


…………ッッ!!!

そういえば、あのゴリラはどうなった。俺は最後の一撃を放ったことはぼんやりと覚えてはいるのだが、正直どうなったのか……。


いや、俺がこうして生きているんだから、きっと倒したんだろうな。…生きててよかった。

今頃緋谷さんはどうしているんだろうか。


途中別れてから、どこかに隠れているのだろうか、俺を探してくれているのか、はたまた最悪の展開が訪れたのか…。

こうしてはいられない。速く助けに行かないと


「あっ、春瀬さん、起きたんですか!!!!!」


ヱっ?


俺が右の方向へと目をやると、ぱたぱたと走ってくる緋谷さんが居た。

なぜ、ここに居るのだろうか。いつ合流したのか、はたまた俺の居る所に駆けつけてきてくれたのか、話を聞かないと全然分からない。


俺のそばへと寄ってきたので、痛む身体を腕で支えながら起こす。

何時間寝ていたのか知らないが、肩も背中も凝って痛む。

ギシギシと俺の身体の内部で嫌な音が鳴って、骨でも折れてるんじゃなないだろうかという不安が走る。


「春瀬さん、無理せずに寝転がってて下さいよ!」

「いや、起きないと肩と背中が凄く痛いんです」


首を二、三度左右へ傾けると、ゴキンと骨が音がして気持ちがいい。身体に良くないのは聞いたことがあるが、ついついやってしまうんだ。


「で、緋谷さん。今の状況を説明してもらえると嬉しいんですが」

「そうですね。……簡潔に伝えますと、一度距離を開けて逃げんですが、春瀬さんを助けに戻って、倒れてる春瀬さんをここまで運んできました」


簡潔でよろしい。

緋谷さんは俺の所まで戻ってきてくれたのか。あんなに怖がっていたのに、その勇気は本当にすごい。


「戻ってきてくれたんですね。ありがとうございます」


と、俺が謝辞の言葉を述べると、腹から盛大にご飯コールの音が鳴った。

でも、非常食などがはいっているリュックがない。戦闘時にその辺りに置いてしまっていたんだろう。


「緋谷さん。俺、リュック探してきます」

「…あのですね、その、一面春瀬さんの炎っぽいので黒焦げになってまして、何も残っていなかったんですよ」


まじか……。これは、本格的にやばくなってきた。

本格的な食糧難に陥ってきたぞ。これは危険を犯してでも、食料をとってくるべきだろうか。


俺は手に菊門をつかんでみる。持った瞬間になんだか、前よりも炎の強さ調節ができそうな気がした。


「あっつい!!春瀬さん、熱いの出すのなら事前にいってくださいよ!!」

「すみません…。どうしても菊門を試してみたくて。

ちなみに聞きたいんですが、この炎くらいの熱さって、どれくらいに感じます?」

「えーっと、よくわからないんですが、ガスコンロの強火くらいですか?」


俺は、だいたいこのくらいかなという感じで、炎の熱さとか強さとか感覚的にちょうせつしてみたところ、それとだいたい同じくらいの答えが返ってきた。


さて、そろそろ行ってきましょうかね。俺はすっくと立ち上がると、服に着いた草を払おうとした。

腹部に少し痛みが走り、前につんのめってしまい、緋谷さんに支えてもらってしまった。


「すみません。ちょっとまだ痛くて。でも、もう大丈夫です。ちょっと、ご飯とってきますね」

「春瀬さん大丈夫です。…ほら!鶏肉が手に入りましたから。」


ヱっ?

本日二回目の驚きだ。まさか緋谷さんから、食材の提供があるとは考えもよらなかった。

……いや、それは失礼か。俺は、俺の中でどこか彼女が全く戦えない人物だと、確定していた。


俺と同じで、この世界にきて何日も過ごし生きてきた人なんだ。

それにしても大きな鶏肉だ。どうやってこれを獲ったんだろうか。


「緋谷さん。これをどうやって」

「それは、クロエをこう構えてですね、……ドーンって」


緋谷さんは武器のクロスを片手で上空にかまえて、何かを拘束で発砲した。

ドン!という重低音は、俺の空腹のお腹に響きそうだった。


「ね?」


ね?じゃねーよ。振り向かれて、可愛く「ね?」と言われても、俺は開いた口がふさがらない。まあ、たしかに俺の炎を見た時の緋谷さんの反応も驚いていたが、俺もそんな感じだ。


「緋谷さん。それ、どんな能力なんですか?」

「春瀬さんと別れたあと、かくかくしかじかでして」

「分かりません」

「わわっ、怒らないで下さい〜。少しふざけただけじゃないですかー。えーっとですね、あの後、あと角が生えたトカゲと交戦して、なんとかしてる内に、クロエの先から銃弾が発射できるようになりました」


なるほど。それで、こんな鶏肉を…。

銃弾とは凄い。遠距離攻撃ができるのは強い。

俺が色々考えていると、俺のお腹から再度飯コールが二回も合図した。


たしかにご飯はある。それも申し分ない量が。ただ、水分が足りない。

でも、すぐ近くに川はあるんだ。俺はサバイバルの知識はないから、川の水は飲んでも良いのかわからないが、でも、この状況。飲むしか無いだろう。


「緋谷さん。水分ってとりました?」

「いいえ……実はというと、喉がカラカラで…」


俺はどうしたものかと、足りない頭をフル回転させた。

……何も思い浮かばない。まあいい。とりあえず俺が犠牲になろう。


菊門を手に取り、俺はその辺にあった木を切断した。高さを手のひら大くらいの大きさに切り落とし、底を残して中身を繰り抜いてみた。


くり抜く行為にちょっと時間がかかってしまい、木材の表面が俺の炎で少し焦げ付いてしまったが、まあ焦げが少し会ったほうが、頑丈にはなっただろう。


俺はそれを持って、川の水を掬った。地面に置いて、菊門の先っぽだけ水に浸け、火力を今よりも少し強めにし、中に入っている水を沸騰させた。


俺が川を見た時、人差し指ほどの小さな魚の群れを発見した。

どこで見たのか覚えていないのだが、魚が泳いでいる川の水は一応綺麗らしい。上流の水が良いのだが、ここがどの辺りかも分からないし、正直いま飲まないと脱水症状に陥りそうだ。


少ししたあと、川の水が冷めてきたので、俺は意を決して飲んでみる。

味は悪くない。


「春瀬さん。私にももらえますか…?」

「それはいいんですが、正直川の水って怖くて、俺が飲んで夜まで何もなかったら差し出そうと思ってたんですが」

「なるほど。分かりました。何かあったらすぐに言ってくださいね」


チラチラと俺の持っている、木の器を見てくる彼女には、少し悪いことをしたという気持ちになる。

今すぐにでも水を飲ませてあげたいけど、我慢してもらうしかない。


とりあえず、俺は鶏肉の首をおそるおそる切り落とした。胴体など、血が集まってそうなところにも一応切り込みを入れていく。

そして、冷めてきた川の水で洗いながら、内蔵をごっそり出していく。

その辺に群生していた頑丈そうなツルを一つちぎり、肉を逆さまにして吊るした。


首からだらだらと血が流れていく光景は、見ていて気分の良いものではない。

緋谷さんとそっちの方向を見ないようにして、川の近くにあった大きな岩へと二人して腰をかけた。


「こんなこともできるんですね。さすが春瀬さんです」

「いや、たまたま何かで見ただけです。正直、あまりやり方も分からないんですが、まあ見よう見まねでやってみただけなんですよね…」


正直、生物の解体なんてやったことがない。

一応この世界にきてあの黒い奴の肉をブロック状にしたはいいものの、あの時は恐怖感、高揚感、肉という味への飢餓感、全てが襲いかかってきて、血抜きやらそんなことは一つも考えてはいなかった。


さてどのくらい血抜きがかかるんだろう。夜くらいには終わるかな。俺の腹のリミッターはもうすぐそこだ。


横を見てみると、緋谷さんが喉を鳴らしながら、唾を飲み込んでいる様子が見て取れる。

喉が乾いているんだろう。せめて見てない所で飲むんだった。悪いことをした。


「春瀬さん。ちょっと、休ませてもらってもいいですか?」


緋谷さんは、その大きい岩の上でころりと横になった。もしかして、俺が寝ていたから見張りをしていて疲れてたんだろうか。

まあ、今は休ませてあげよう。



本当にこうしてゆっくりしてる時、この景色は綺麗だ。

たしかに周りに荒廃している建物や道路はあるが、草原で見たられた地面、見晴らしの良い空、心地良い温度がちょうどいい風。


都会に住んでいる人が、田舎暮らしに憧れるのも分かる。

まあ俺は田舎の出だから、そういう風景に対して憧れたりはしないが、綺麗なものは綺麗なんだ。


それに今は仕事をしていないし、心にゆとりがあるのかもしれない。


俺はこの世界にきてもう何日も経つのか。俺も岩の上で仰向けになっていると、ふとそんなことを思う。

黒い奴といいゴリラといい、この世界は俺を本気で殺しにかかってる。


そういえば、あの馬鹿でかい鹿はどこに向かっていったんだろうか。

頭がおかしいサイズだ。あいつは一体何を食べて過ごしているんだろうか。木とか葉っぱか?

歩く所が全部ハゲ山になりそうだ。


あの鹿が、俺に対しての敵意がなくて本当に良かった。

いや、俺の存在にそもそも気がついてないのかもしれない。


あの時。あいつから感じた……なんて言えばいいのか。存在感?

なんか、異様だったんだ。俺とはなにか違うような、そこに居るだけで気圧されるような、そんな感じを放っていた。


ああ、考えれば考えるだけ疲れてきそうだ。

今はこの話は考えないようにしよう。

肺いっぱいに空気を送り溜め込んで、思い切り口から吐き出した。


太陽が真上まで登ってきた。もうすぐ正午だろうか。俺のお腹のビートがどんどんと増えていく。


ちらっと鶏肉の方向を見てみると、まだたらたらと真っ赤なトマトジュースを吐き出していた。

早く血抜きが終わらないだろうか。まだこれから、羽をむしる作業と肉を切っていく作業が待っているのだから。


こういう肉って、燻製とかにできるんだろうか。

むかし燻製肉を作ろうとしたことがあったが、結局やらずに終わった記憶がある。


なんか塩漬けにするとかなんだろうか、今の俺には塩も調味料なにもない。

ほら、木を焼いて煙で燻して、天日干しでもすればいい感じになるんじゃあないだろうか。

まあ、ものは試しだ。肉が余ったらやってみよう。


なんか、横のですぅすぅと寝息を立てている緋谷さんを見ると、俺も眠たく…なってきた…ぞ。……おいおいおいおい!!寝たらだめだろう!?


さっき起きたばかりなのにまだ俺は眠るつもりか!?

俺は目をゴシゴシこすって、川の水を頭からぶっかけて無理やり目をさまして見張りを続けた。

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