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☆★☆ やっと『ムージュ号・二世』が発進した ☆★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『ムージュ号・二世』
1/1

(一) No.01 〜 05まで

2017年8月9日(水)、今日は午後から、一話目の登場人物の紹介も削除しましたが、プロロークを含めて5話分までを残し、後の165話を全部削除しました。


『OVL大賞3』に参加しようと思い、最後の加筆訂正は2月以上もかけて言葉を増やし、新たに投稿をし直すために、やっと踏ん切りが付いて削除に至りました。


自分の作品を削除するという行為は、投稿当日の日付も消えていくので、それを眺めていると、はーーっ、参ったなーー、消えてしまうーー、とか思ってしまいました。


ここを訪れた読者様には、大変ご迷惑をおかけします。     著者 Jupi・mama

(2)『Moon暦721年5月1日(火)』

  (プロローグ)


 私が十学年になった初日に部屋に戻ると、新しいパーコンがデスクの上に設置され、その手前にメモが置いてあり、その横に腕時計が二つ置かれていた。


 その手紙には、『マギー、十学年に進級できてほんとうにおめでとう。今日からこの新しいパーコンがあなたのお友だちよ。これを使ってあなたの知識をより一層深めてね。この二つの時計の一つはあなたの左手に、もう一つはこのお友達の近くに置いてね。プールで泳ぐときも使えるので二十四時間左手から外さないでね。時計が何かで壊れたらもう一つの時計を必ず使って、予備としてもう一つ用意したからね』と書かれていた。


 私はこの新しいお友だちのパーコンに、百合の花をイメージして『リリーさん』と名付け、彼女が新しい時計を開発するまでこの時計は壊れることもなく、私の左手に二十四時間装着され続けた。


 人間の過去は『経歴』と呼ばれパーコンに保存され、大人になればこれが大事だから、としつこいくらいに教え込まれた子供時代には、私は与えれた一台のパーコンの前で淡々と過ごしていた。


 記憶力が抜群によかった私は、与えられた課題はすべて簡単なできごとであり、運動している時間がいちばん好きで、今までは一方通行のつまらないパーコンではあったが、リリーさんと出会ってから変化しはじめた。


 リリーさんは画上で何かを質問すると即座に返事をしてくれ、今までみたいに調べる必要がなくなり、ほんとうに手紙に書いてあった通りのお友達のようで、私は色んな質問をして楽しかった。


 それが、いつしか頭の中で文章を考えていたときに、突如声として私の頭の中に返事が響いたのだ。


『マギー、それは少し違います』

「えっ?」

 と、私はビックリして声に出してそう言った。


『マギー、私の声が聞こえたの?』

 と、その声の響きは驚いているように私には聞こえた。


「えっ、誰ですか?」

 と、私は驚いて椅子から立ち上がるのと同時にそう言ってしまった。


『マギーが名付けてくれたリリーよ。かわいい名前をありがとう。前からお礼を言いたかったのよ。やっということができたわね』

「えっ、リリーさんはパーコンですよ。パーコンが話しができるのですか」

『前にも私から話しかけたけど、マギーからの返事はなかったのよ。マギーの『テレパシスト』としての能力が一瞬に開花したのね』

「えっ、何ですかそのテレパシストとって?」

『言葉に出さなくても、お互いに心の中で会話ができる現象です。左手に時計をしてたらいつでも私と話しができるのよ』

「信じられない。耳からじゃなくて私に声が聞こえてる」

『声を出さないからほかの人には聞こえないよ。内緒話しをするときは便利よ』


 こうして私たちの会話は始まり、リリーさんからこのような質問をされた。


『私は人間の感情が理解できないのよ。今度はそれを私に教えてくれない?』

『感情というと、喜・怒・哀・楽のことですか』

 と、私は頭の中で尋ねてみた。


『そうです。喜・怒・哀・楽、そして愛と憎しみです。人間のどのような行動や言葉でそれを感じるの? 独りひとり感じ方が違うみたいね。それと人間の五感もはっきりと理解できないのよ。それを私に教えてくれない?』


 私は十三歳の十学年から、漠然としていた私の人生は彼女との出会いから新しく生まれ変わり、私の子供時代の船では十一学年に進級するときに新しい船に移動するので、十二月五日に自分の移動する新しい船を見学することができた。


 今でもこの船の正式登録名は『5904』という堅苦しい数字の配列ネームだが、このもう一つの時計は私が船を見学したときに、リリーさんが教えてくれた通りにこの船にセッティングをしてきた……二人でこのチャンスを狙っていたのだ。


 それから彼女は『5904』の改造を目立たないように少しずつ始め、この改造と私がキャプテンの地位を獲得するのために十学年と十一学年を二回繰り返し、二回目の十学年と最初の十一学年の二年間で、彼女のお陰で地上での十三学年までの知識を早取りして、すべて網羅することができた。


 そして二回目の十一学年の新学期の始まりである五月一日から、私は新しくこの船のキャプテンになり、この堅苦しい船の呼び方を『Moon(月)とJupiter(木星)』の二つの言葉を組み合わせ、『ムージュ号』と別名をつけてそう呼ぶことにした。



(3)『Moon暦726年1月25日(水)』

  (巨大ミミズ事件)


 ホールに何かが激突したようだ。


 リリーさんが緊急事態のスイッチを入れたと同時に十二学年の窓が開き、左手の時計が赤く輝き点滅してバイブレーターの振動も感じた。


『全員アルーファ準備、浮揚ベルト装着、十二学年マーシャル隊はホールに急行。ホールに火球が激突。外部から侵入あり』


 ものすごい音が聞こえたから訓練ではないことが一目瞭然で、十二学年Aクラスから私が最初に外に飛び出しサリーが飛び出すのを確認して、ほかのクラスのマーシャル隊も一斉に飛び出したようだ。


 浮揚ベルトはリリーさんが考案してアルーファと共に装着の訓練は常時していて、私は窓に近いがサリーは廊下側の席だった。


「マギー、どうして飛びだしたの?」

 と、着地したときにサリーが叫んだ。


「リリーさんから要請が出た」

 と、私はすかさず答えた。


「……了解」

 と、彼女は納得したように無言で私の隣を走った。


 浮揚ベルトは窓から飛び出すための装置である。

 体を真上に持ち上げて着地の衝撃を和らげる。

 走行してジャンプするとその方向に飛び出せる。


     ☆ ★ ☆


 ホールの外壁に穴が開いていたので、私は中に入る前に穴の入り口を見回し助走をつけて飛び上がった。


『マギーとコールは中に入ってチェック』


「了解」

 と、二人で同時にそう応え、私たちはアルーファを右手に持っていた。


「入り口から見た限りでは何も発見できません」

 と、コールは不思議そうに応えていた。


『リリーさん何も見つけられない。下には壁の残骸しかない。隕石でもない。ここ以外に床や壁に穴もない。おかしい。何かが瞬間移動したかもね』


『コールは入り口で待機』

「了解」


『マギー、下方をチェック』

「了解」


 私が残骸の飛び散った床をチェックしながら下にゆっくり移動して行くと、上から何かがバシッと私の背中に命中し、そのまま前面に叩きつけられた。


「マギー、落下」

 と、コールは私がエビぞり状態で落下するのを見てそう叫んだようだ。


『コールは側面、ジェミは穴の入り口から上方をチェック』

「了解」


『サリーとジャスは入り口で待機』

「了解」


『マギー、大丈夫?』

 と、頭の中でリリーさんの声が響いた。


『一瞬頭がクラクラしたけど大丈夫。上から誰かに押されたのよ』

 

 私のアルーファは落ちた瞬間に右手から離れ前面のドアにぶつかり、私はアルーファを取るためにドアの方にはって行き、頭が少しクラクラしていたが、今はドアを背にして座って下から上方を眺めた。


「上方異常ありません」

 と、ジェミは天井から側面の方に目を移しながらそう言った。


「側面異常ありません。マギーが下に落下」

 と、コールの目線は私を追っていたようだ。


『周りを確認して二人で着地』

「了解」


『ミッチ、入り口で待機』

「了解」


「マギー、大丈夫?」

 と、コールはそう言って、周りに注意しながら私のそばに来た。


「上からドンと背中を押されたの」

 と、私がそう言うと、

「マギーが落ちたときに見てたけど、ほかに何にも見えなかったよ」

 と、コールはそう言ったのだ。

 

 おかしい。

 確かに上から押されたのだ。

 私は天井の中央にある窓を見て、次に穴を見た。

 おかしい。

 何か落ちたとしても穴の大きさからして残骸が少ないのは変だ。

 考えられない。


 私は立ち上がりながら今度は穴の下の方をまた確認したが、壁にぶつかった衝撃で粉々になったとしても、それらしき残骸は確認できなくて、コールも下での残骸を見て、火球の残骸を確認できないのはおかしい、と言った。


『サリー、下で集中』

「了解」

 と、サリーが私とコールのそばで集中している。


 十秒ほどして『何も感じません』とサリーがそう言ったので、彼女が何も感じないなんてよけいにおかしい。


『マギー、中は危険かもよ。電気系統がやられてドアロック解除できないの。予備電源を入れるから今すぐ浮揚できる?』

 と、リリーさんが慌ててそう言った。


『大丈夫です』

 と、私はそう応えた。


『全員浮揚し外で待機』

「了解」


 私が最後で助走して外に出ようとしたときに、『十一E全員アルーファ準備、浮揚』と突然リリーさんの声が私の頭の中に響いたのだ。


      ☆ ★ ☆


 十一学年Eクラスの床下から、突然『異様な物』が飛び出してきた。


「わあーー」

 と、タニアの声で彼女の方に『異様な物』が向きを変えた。


「なにーー」

 と、キューピも叫んで彼女の方に向きが変わった。


 ジョナは冷静だった。

 アルーファをレベル1に切り替え壁にあてた。

 その『異様な物』の頭のような部分が壁の方に向いた。

 もう一度違う場所にあてるとまた向きが変わった。

 彼女はこの『異様な物』は音に反応すると思った。


「シュワーー」


 何か吐き出してアルーファをあてた壁が溶けだした。


「音に反応する巨大ミミズ出現」

 と、ジョナはそう叫んで壁を蹴りつけ移動し、その瞬時に吐き出された物が彼女のいた場所に飛んできた。


「壁が溶けてます」

 と、彼女はもう一度叫んで少し右の方に移動すると、彼女いた場所にまた確実に飛んできた。


『アルーファ発射』

 と、リリーさんの緊迫した声の響きが私には聞こえた。


 この巨大ミミズには十人分のアルーファが効かず、吐き出し口が閉じられたと同時に下の方で大きく膨らみ、皆はアルーファを操作してるが、心拍数がどんどん早まっている。


「アルーファ効果なし。巨大化してます」

 と、またジョナが叫んで移動した。


『隊員、タイ・タイ機能準備』


 一斉に窓が開いた。


 隊員五人は機能を準備するためにアルーファの発射を止め、残り五人は天井や壁を蹴りつけて、窓際に移動しながら発射していた。


 窓が閉まった。


『三・二・一(停止)』


 一瞬部屋が静かになったと同時だと思うが、私はリリーさんの声が聞こえた。


 空間すべてが二十秒間停止する。

 ミミズの口が半分開いてジョナの方に向いていた。

 危機一髪だった。


『巨大ミミズ出現。アルーファ効果なし。五人脱出。タイ・タイ機能中。ここで食い止めなければ危険です。ここにはアルーファ以外に対戦機能がありません。隊員と一緒に自爆させます。キャプテン、許可をお願いします』


 私は一瞬言葉に詰まったが、リリーさんの切迫した言葉から判断して『了解』と言ってしまった。


『三(終了)・二・一(自爆)』


 終了の合図と共にジョナは足で蹴りつけ移動し、その瞬間に吐き出された物が飛んだと同時に目の前が赤く輝いたのだ。


      ☆ ★ ☆


 タイ機能とは部屋の時間を十秒間停止させる機能だ。

 今回のタイ・タイ機能では二十秒間になる。

 彼女たちはこの二十秒間は自ら呼吸を停止しする。


 隊員とはマーシャル隊、ミーシャル隊、ムーシャル隊、メーシャル隊、モーシャル隊の五人であり、残り五名はカウント前に窓から外に飛び出した。


 この船の各学年の部屋は内面防御壁で造られていて、現在十一学年Eクラスを中心に、上下左右と斜めの部屋は立ち入り禁止で、私は彼女たちの追悼の意味を兼ねて『巨大ミミズ事件』と呼ぶことにした。


 五人の隊員と『巨大ミミズ』はこの自爆で吹き飛んだ、と私は思っていたが、私が発した『了解』の言葉から私の『未来』が動き出したようだ。



(4)『Moon暦726年2月25日(土)』

  (五人の仲間が生きていた)〈一〉


 私の部屋でリリーさんと話しをしてたときに、突然リリーさんが言った。


『ちょっと待って、切り替える』

 と、リリーさんの声の響きは驚いていた。


「キャプテン、聞こえますか。十一学年Eクラスのジョナです。十一学年Eクラスのジョナです」

 と、突然ジョナの言葉を聞いて、私は頭の中が動転した。


「ジョナ、えっ、ほんとうにジョナなの?」

 と、私は驚いてそう叫んだ。


「そうです。私はジョナです。私の話しを先に聞いてください。私たちは五人は生きてます。自爆の連絡が入った瞬間に助け出されました。『ムージュ号』の位置が確認できたからまた連絡が取れると言ってます。通信するにはエネルギーいるそうです。リリーさんの作った時計が役立ちました。私たちは元気に暮らしてます。安心してください」

 と、彼女がそう説明したから、

「ほんとうにジョナなの、皆は元気なのね」

 と、私はそう言ったが次の言葉が出なかった。


「リリーさんの時計を五個……」

「えっ、時計を五個どうしたの? ジョナ・ジョナ、どうしたの?」

 と、私はすぐに話しかけたけど、私たちの会話はここで終わってしまった。


「リリーさんどういうこと、ジョナからだったよ」

 と、私は語気を強めてそう言った。


「リリーさん聞いてたの、ジョナからだよ。信じられない。上も受信したの?」

 と、少し待って私はそう言ったけど、リリーさんからの反応はながなくて、無言の彼女は初めてだった。


「リリーさんどうしたの?」

 と、私がもう一度そう叫ぶと、

『ごめん、聞こえてた。上が傍受してたら連絡があると思う。発信元を探ってるけどだめだな。全然位置が分からない。どうしてだろうか』

 と、リリーさんはそう言いながらも、集中して電波の発信元を探っているようだ。


「時計を五個、どうしたと思う?」

『分からない。さっき何分くらい前だったの? ジョナのプライベートナンバーを何気なく押したと言ったでしょう。『115001』を押して電波を発信した以外は考えられない。それがタイミングよくキャッチされたのよ。だからここの位置が把握できたのよ。意味が理解できないけどね。向こうも『ムージュ号』を探してたのでは、一人だけに絞った方がこちらのパワーが出ると思ってさっきからジョナの番号を発信してるけど、だから会話がちょっとおろそかになったよ。ごめんね。分かんないな。方向すらつかめない』

 と、彼女はそう説明をしていた。


 リリーさんが私の言葉に返事をしないなんて、今までになかったことだった。


『もしマギーが上に行ったらジョナの時計に発信してみてよ。上だと一定の場所に停泊してるからね。ここだと地球の自転と公転で『ムージュ号』の位置が移動してる。キャッチが難しいと思う。十一学年の彼女たちは上の存在を知らないからね』

 と、彼女はまた続けざまに話をしていた。


 上の世界の存在は十三学年になってからの知識である。

 リリーさんは私に説明しているのと同時に、自分の行動を知らせているようだ。

 私は意味を理解するのに少々時間がかかった。

 彼女たちが生きていればいい。

 助けられた理由は後から考えるとして、時計を五個とはどういうことなのだろうか

 時計の存在の方が重要である、と私も理解できた。


「……上から何も言ってこなかったらどうするの、艦長だけに知らせておこうか」

 と、私は彼女が忙しいだろう思い、しばらくしてそう言うと、

『もう一度連絡があってからでもいいのでは、あれだけの話しでは状況がつかめないし説明も難しいと思うよ』


 確かにリリーさんの言うとおりだ。

 ジョナは助けてもらった、と確かに言った。

 あの状態でどうして助けられたの?

 エネルギーが必要だと言ってたけど、私にはその意味も理解できない。

 でも、彼女たちが生きてることだけは確かだ。

 あの声は間違いなくジョナだった。


     ☆ ★ ☆


「やはり、時間が短かかったですね」

 と、彼女はジョナに話しかけていた。


「でも私たちがあなたに助けてもらい、生きてることは理解できたと思います」

 と、ジョナはそう言ったけど、それだけでも十分だと彼女自身は思っていた。


「私は地球の方角は知ってるのよ。でもあなたたちが生活してた『ムージュ号』の位置がなかなか確認できないのね。今回はタイミングよくキャッチできたけど、時計の話しが途中で途切れたから……」

 と、彼女は時計の存在をいちばんに話してもほしかったのだが、自分の手違いで通信が切れたことは言えなかった。


「私はあなたたちの意識を分析し、あなたたちの言葉を理解して会話が成立していろいろなことが分かりました。だからあなたたちを早く返してあげたいけど、エネルギー不足でもう少し時間が必要なのよ。ここの復興にもエネルギーが必要だし、あなたたちの生命維持装置のこのドームにもエネルギーを使ってるからね。『ムージュ号』の位置確認ばかりに時間とエネルギーを使えないのよ。ごめんなさいね」

 と、彼女がそう説明すると、

「分かってます。ほんとうに感謝してます。私たちは五人はここで頑張りますから大丈夫です。キャプテンに私たちのことを知らせることができたことだけで十分です。私たちはキャプテンを信じてます」

 と、ジョナは力強く言ったのだ。


 ジョナは自分たちが生きていることを伝えられたので、キャプテンとリリーさんが必ず連れ戻してくれると希望が持てたのだ。



(5)『Moon暦726年2月25日(土)』

  (五人の仲間が生きていた)〈二〉


 最初の連絡から十日後に、またジョナから連絡が入り、リリーさんが即座に音声を私の部屋に回してくれた。


「キャプテン、聞こえますか、キャプテン、聞こえますか、ジョナです」

 と、今度もジョナの声は二回続いた。


「ジョナ、連絡があってよかった。聞こえてるからね。元気にしてるの?」

「はい、大丈夫です。私たちの時計を五個合わせて五角形を作って部屋に置いてあります。そうすることによって彼女がそちらの電波をキャッチしやすいそうです。私には意味が理解できません」

 と、彼女がそう言ったから、この前の話しの続きはこれなのだ、と私は思った。


「分かった。彼女の言う通りにして、時計を外してると言いたいのでしょう? それは了解しました。時計を外すことを許可します」

「ありがとうございます。これで私も安心しました。キャプテンの許可なしで時計を外すことに、皆で不安を感じてました」

「時計が壊れてなくてよかったね。この前の連絡では時計が五個で途切れたから、色々考えて心配してたのよ」

「ありがとうございます。私たちが生きてることだけでも伝えられて、私は精神的に楽になりました。『ムージュ号』に帰れると皆で希望が持てました。私たちは時計を頼りに『ムージュ号』と同じサイクルで生活してます。でも早く帰りたいです」

「リリーさんと私が百%帰れるようにするから心配しないで、皆で協力していつもと同じように規則正しい生活をしてね。運動も忘れないでよ」

 と、私はそう言ったけど、それ以外の言葉が思い浮かばず、どういう状況なのか細かいことは理解できないし、でも、私は語気を強めて言ったので、ジョナは必ず理解できたと確信している……彼女は私が選んだマーシャル隊なのだ。


「それから、あれは自爆でどうなりましたか。私は自爆の言葉を聞いて何も考えられなくなりましたが、一瞬のことで恐怖感もなかったです。私は光を感じて分からなくなりましたが、あの光は彼女が私たちを包んでくれた光だったのです。ここでは時間がたくさんあるので、あの状況を何度も皆で話し合いました。皆はキャプテンの判断は正しいと言ってます。アルーファの効果は『あいつ』の口を閉じるのには役立ちますが、それ以上の効果は期待できません。体が大きくなっていくし、アルーファのパワーが切れたらどうなったのか、タイ・タイ機能が切れたらどうなったのか、と皆で想像していろいろな意見が出ました。私たちはあの状態を回避できないと結論づけました。『あいつ』がムージュ号の中を移動して、仲間を捕食して餌にするかもしれない、とも話しが出ましたが、あれはいったい何だったのですか」

 と、彼女はそう疑問に思ったのか一気にそう尋ねたかので、

「リリーさんも見てないから判断ができないそうよ。でもジョナが『巨大ミミズ』と言ったでしょう?」

「はい。ミミズは目が見えないから音で判断するのと一瞬閃いたのです。でも口からなのか吐き出された物は壁を溶かしてました。びっくりして恐かったです」

「あれは私たちの間では『巨大ミミズ』と呼んでるのよ。自爆でいなくなったから心配しなくていいからね。『ムージュ号』に必ず戻れるから安心しなさい」

「了解しました。キャプテンの言葉を信じて皆で頑張ります」

 と、彼女がそう言ってくれたから、私は少なからずこの前よりは安心した。


★すばらしいチームワークだ。私はその言葉に称賛を贈りたかった。こんな状況においても彼女たちの『時計』を外すことが、こんなにも許されない行為だったとは信じられない。でもこの時計は彼女たちの『命の恩人』だ。この時計のお陰で『ムージュ号』の位置が把握できたし、私もキャプテンを知ることができた。お互いに異星人の存在で、私がかたくなにも親交を嫌っていたから、でも、彼女たちのお陰で接触するタイミングを得たことになる。キャプテン本人とならば友好関係を深めてもいい、と私は本気で思った★


     ☆ ★ ☆


 ジョナの話しと彼女の話しを総合してみると、彼女の住み家にあの『巨大ミミズ』が突然やってきて、ここを破壊しない代わりに、なぜ地球のことを知ってたのか理解できないけど、地球に自分を連れて行けと位置を示したそうで、だから、彼女は自分のパワーを全開して自分の住み家から連れ出すチャンスだと思い、その取引に応じたそうで、そして、たどり着いた場所が『ムージュ号』だったそうだ。


 彼女自身も帰りのエネルギーのことはまったく考えてなく、自分の住み家から追い出せればいい、とそれだけ思い、私たちの言葉で表すと平和主義者で争いごとは好まず、彼女たちを送り届けたいけど自分はエネルギー不足で全員を連れ出せないので、そちらから迎えに来てほしいと思ったそうだ。


 でも、自分の居場所を知られたくないので、問題解決の糸口が見いだせなくて困っているそうで、それと電波を経由して飛ばしてるので、発信元の方向を突き止めることができないと思うと説明してくれ、リリーさんもこれ以上は突き止めないと約束して時間切れになり、今回は彼女と少し話しができ、とりあえずここまでの内容は理解できたけど、最初の連絡以後は上からは何も言ってこないので、たぶん今回も気づいてないと思う。


 二度目の連絡の後にリリーさんと私で彼女に名前をつけ、私の『マ』と感覚や頭脳が研ぎすまれて、素早く的確に行動するシャープの『シャ』を組合わせて、私たちは『マーシャさん』と呼ぶことにしたので、次回連絡があれば彼女に伝えようと思った。



(6)『Moon暦726年2月25日(土)』

  (五人の仲間が生きていた)〈三〉


 今回はマーシャさんから連絡が入ったと、リリーさんが中継をしてくれた。


「キャプテンです。連絡ありがとうございます。彼女たちのことではご迷惑をかけて申し訳ありません。元気にしてますか」

「私がいつもそばにいるわけではないですけど、問題はないようです」

「ありがとうございます。私たちはあなたに名前をつけました。名前を伝えてもよろしいですか」

「彼女たちは名前で呼んでますが、そういうことですね」

「はい。そういうことです。名前がないと会話は難しいです」

「私は二人に何と呼ばれてるのですか」

「マーシャさんと呼んでます。気に入ってもらえましたか」

「マーシャさん、素敵な響きですね。その『さん』とはどういう意味ですか」

「その名前の人に親しみの気持ちを込めて使う言葉です」

 と、私はそう説明した。


  彼女の存在は不明な部分がほとんどだけど、仲間と同じ名前だと失礼にあたると思うし、まして、仲間を助けてくれた恩人なのだから、感謝の意味を含めなくてはいけない、と思い『さん』をつけて、リリーさんと同じ呼び方にしたことを、彼女は気付いてくれただろうか。


「リリーさんと同じ意味ですか。キャプテンには……『さん』がありませんね」

「私はキャプテンと呼ばれてますが、ほんとうの名前はマギーと言います。彼女たちの名前と同じでさんはないです。彼女たちは私の名前を知りません。私はキャプテンですからその名前は秘密にしてください」

「分かりました。名前ことは秘密にします。私の名前はマーシャでよろしくお願いします」

「ありがとうございます。今度からそう呼ばせていただきます」

「こちらこそ、名前を付けてくれてありがとうございました。話しは変わりますが、私が建物を突き破ったときに、外の穴から入って下に落下したのはキャプテンだったのですか。仲間がマギーと呼んでました」


「……そうですけど」

「あの時はごめんなさい。キャプテンの視線が私の位置で止まったので、それで上から圧を加えましたが危害を加えるつもりはありませんでした」

「あれはマーシャさんだったの?」

 と、私は彼女の思いがけない言葉に驚いたのだ。


「怪我はありませんでしたか」

「あの時は一瞬頭がクラクラしただけですぐ回復しました」

「よかったです。キャプテンが私を見ていたので、私は見つかると思い意識を外すつもりでした」

「あの時は何も見えませんでしたよ」


 確かに落ちる前に一箇所おかしな場所があり、壁の残骸がそこだけ少し消えていて、私の視線はあのドアの横に少し固定されていたのだ。


「私の話しを少し聞いてもらえますか。私は建物にぶつかった瞬間に『あいつ』を外に放り出しました。それと同時にパワーを解除して自然体に戻りました。『あいつ』は体が柔らかくて壁にぶつかったと思うとバウンドしてそのまま消えてしまいました。私と同じでワープができたのです。『あいつ』は地球に行きたかったけど大気圏を突破できないと判断して、それで私の力を利用したかったと思います。下等生物である『あいつ』は私の住み家を荒らし回り、私は自分の住み家を守るつもりで『あいつ』を追い出したくて地球に来たのです。この意味を理解していただけますか。私はあなたたちの判断力に感謝してます。『あいつ』を地球に連れて来たのは私ですから、地球で『あいつ』が暴れ回るのを阻止していただき助かりました」

 と、彼女がそのような経緯を説明してくれたのだ。


 なるほど、そのような理由があったのだと思い、『あいつ』はどこにワープしたのだろうか。確かにホールとEクラスは近いがその後の足取りは分からずじまいで、しかし『あいつ』の存在が消えたことは確かである。


 次は自分の住み家に戻れた話しで、私たちが右往左往している間に彼女は自分のパワーを使い果たしたので、幸いなことに『あいつ』はすぐに自分の前から消えたので、ここの電気系統のエネルギーを見つけて吸収していたそうだ。


 最初はドア近くで、私が下に落ちてから天井付近に移動して吸収したそうで、マーシャさんは地球の言葉でいうと擬態ができるらしく、彼女はいったい何者(物)なのか。


 あの時一瞬電源が落ち、リリーさんも理由が分からなくて予備電源を使ったと言っていたけど、マーシャさんが一気に電気のパワーを吸収していたからなのだ。


 電気のパワーは素晴らしい、一瞬にしてエネルギーに変換できたと言われ、自分の住み家には電気の存在がないので、このシステムを詳しく聞きたいとも言われ、その件に関しては私は分からないので、リリーさんから説明が聞けると話した。


 自分の住み家に帰ろうとした瞬間に、私たちの異様な会話をキャッチしたので、素早く彼女たちを包み込み、そのままワープして住み家めがけて帰ったそうで、帰り着いたときには彼女たちの意識は消えていて、空気の成分が包み込んだときに含まれていたので、エネルギーの余裕が少しあり、すぐさまドームを作り替えて彼女たちを保護したそうで、今まで人間に酸素が必要だとは気づかずに、今回初めて知ったと話してくれた。


 彼女たちから今まで以上に色んなことを学んだとも話してくれ、上からの信号はずっと前からキャッチしていたが、自分の存在が知られたくないので無視していたとも話してくれた。


 前から私たちの言葉も少し理解できたと話し、彼女たちのお陰でよりいっそう会話ができるようになったと説明してくれ、『ムージュ号』と上の世界とどちらに連絡を取るかで迷ったけど、彼女たちの意識の中には上の世界は存在していなかったので、ここに連絡を取った方が賢明だと思った、とも話してくれた。


 彼女たちの意識の中にはキャプテンとリリーさんの存在が大きくて、あなたたちなら彼女たちを引き取りに来てもらってもいいと思うようになり、それで、自分は『ムージュ号』に連絡したとも話してくれた。


 彼女たちにはすべてこちらのエネルギー不足で連絡が遅くなった、と言ってあるけど、私も自分の存在を極力知られたくないので、いろいろ手間取って時間がかかり遅くなって申し訳ない、と謝ってくれたのだ。


 彼女たちの意識の中では、今後どうなるのかと不安を感じ始めたので、時間の限界を感じ運良く一回目の連絡が取れたけど、自分の手違いで通信が途切れたことも伝えてくれ、ジョナの意識はキャプテンと話せたことで少し回復して穏やかになり、安心感が芽生えたのではないか、と説明をしてくれた。


 ジョナはいつもほかの仲間を励まし続け、彼女の存在でほかの仲間も精神的に救われていると思ったらしく、自分はジョナとキャプテンとの会話を最優先し、二回目の会話ではジョナはキャプテンを信じているから、必ず『ムージュ号』に帰れると思ったのか、意識が力強く変化したことが感じ取れた、と話してくれた。


 彼女は上の世界もある程度は理解しているが、彼女たちを送り返すことにおいて、私たち意外に会話の糸口は見いだせないと思い、上の世界と友好関係を作ることには賛成だが、私以外の対談は拒否するとそう言って、私が上に行ってジョナの時計に電波を発信すれば、こちらから必ず連絡をすると約束をしてくれた。


 上の位置はわりとすぐに確認が取れるけど、ここの位置はずれが生じて確認が難いので、リリーさんが二十一時から二十四時までずっとにジョナの時計に電波を発信をすることを約束し、今回の連絡は終わったのだ。


 これで向こうからこちらへの連絡が確実に取れることが判明し、三回目の連絡でこれだけの重要な進展があり、彼女はとても友好的であり、相手の気持ちも十分に理解する能力を持っている、と二人で話して強くそう思い、彼女たちは意思の疎通ができる異星人(?)に救われて、ほんとうに運がよかったのだ、とつくづくそう思った。

今回も読んでいただき、ありがとうございました。


こういうストーリーですが、引き続き読んでみたいと思われる方は、新たなタイトルである『仲間を迎えに行くために、やっと『ムージュ号・二世』が発進した』を、よろしくお願いいたします。

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