オレオレ詐欺
それはある昼間老人が手洗い場から出て来た時だった。
電話が鳴る。老人は電話を取った。
「もしもし?」
「あ、もしもし俺だよ俺」
「俺ってもしかして孫の正幸か?」
「あ、そうそうお爺ちゃん正幸正幸」
読んでいる人ならもう分かるだろうがこれは詐欺の電話である。
「あの俺会社の出張で丁度近くにいるんだよね」
「ふむふむそれで家に寄るのか?」
「あ、いや俺今その余裕無いんだ」
「なら良かった。それで何か用かね?」
「実はその時持つはずだった金を駅に置いてきちゃったんだよね」
「それは大変だな。それで金を工面して欲しいのか?」
「まぁ後で取り戻せばその分利子付きで負担するからさ。今すぐ俺の同僚が取りに行くから待っててよ」
「待て待てそれなら正幸も来ればいいだろう」
「と、とにかく今すぐ同僚が行くから」
しばらくして同僚と思わしきスーツを着た女詐欺師が出て来た。
「ごめんください」
女性は真面目そうな顔で訪問してくる。
「全く綺麗な人だねぇ。正幸のこれかい?」
老人は小指を出す仕草をする。
「いえいえそんな大したものでは」
女性はそう苦笑して否定する。
「まぁとりあえず金を渡す前にとりあえず上がってよ」
正幸の振りをした男は困惑していた。いつになっても女が出てこないのだ。
「おいおいまさかパクられたんじゃあるまいな」
男は困惑する。そう言えばあの老人妙にはきはきした言動だった気がする。もしかしてかかった振りをしたおとり捜査だったのではないか。
そんな不安が頭をよぎる。
気づいたら家の近くに来ていた。
「どうかしましたか?」
老婆が声をかけてくる。
「あ、あぁ大したことでは。あそこの家のお爺さんのお孫さんの友人ですよ」
詐欺師は取り繕うのもうまい。そう当然のように受け答えをする。しかし老婆の反応は違った。
「え?あそこの家のご主人もう亡くなったはずで今は奥さんが一人暮らしのはずよ?」
男はそれを聞いて居ても立ってもいられなくなった。
そんな時悪魔の声が……
「将司?こっち来なさい」
そのまま腕を掴まれる。年を取っているのに馬鹿力だ。
そのまま引きずられる。
「君も運が悪いねぇ。俺が来た時に詐欺を仕掛けてくるなんて。そして向こうのババアもだ。詐欺と強盗同時に入られるとはねぇ」
「あっあっ……」
家に入れられた男が目にしたのは……服に紅い染みを作った例の女。そしてその奥には小さな肉の塊が……
「ア、アンタまさか……」
「君も口封じだよ?」
男の意識はそこで途切れた。




