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プロローグ
長いトンネルを抜けると田園が広がる。
5月の初めの陽気の暖かさは、電車の中にも時折その香りを運んでくる。
家から駅まで15分、県境のトンネルまで揺られて30分、さらにそこから30分の駅が学校の最寄りだった。
きちんと遅刻せずに学校に着くためには早起きしなければならないので、電車の中では常に微睡んでいた。
地元から逃げるようにして隣県の高校に入学して、早々に移動時間は夢の世界に逃げてしまうのがお決まりだった。
思えばいつも自分は逃げてばかりだった。
そのためか、新学期が始まって1ヶ月の間ではなあなあな友達ばかりを作って、休日は他人と遊びに行くようなこともなく一人で過ごしている有様だった。
いつか自分にも劇的な出会いがあるんだろうか。
そう微睡の中で思いながら、ちょっと虫が良すぎるかなと一人で決断を下して、また夢に逃げ込むことにした。
駅に着いて開く電車の扉から、初夏の匂いを孕んだ風が吹き抜ける。
学校の最寄りに着くまではまだ20分あった。




