第1話「決意の朝」
早番の朝は早い。まだ空が薄暗いうちに家を出て、電動自転車で職場へ向かう。
ガタガタと段差を越えるたびに、私の背中にズシリと疲れが響く。介護士として働き始めて、もう10年になる。
「ケアマネか……」
昨夜、長谷川さん――うちの事業所のケアマネージャー――に言われた言葉が頭をよぎる。
『真由美さん、そろそろケアマネ、目指してみたら?』
私は30代後半。転職や資格のことも、少しずつ真剣に考えるようになってきた。現場のことはある程度わかってきたけど、このままでいいのか、不安もある。
ケアマネージャーは、介護保険制度の中で重要な役割を担う。利用者さんのケアプランを作り、各事業所と連携し、本人と家族の希望をすり合わせて支援していく。
つまり、現場の知識だけじゃなく、制度やサービスの知識、調整力も問われる仕事だ。
「でも、私にできるのかな……」
不安はある。でも、挑戦したいという気持ちもあった。
そうだ、まずは情報収集から始めよう。帰ったら公式サイトで試験概要を調べてみよう。
【今回の学びポイント】
介護支援専門員とは?
介護が必要な人に適切なサービスが提供されるよう「ケアプラン」を作成する専門職。
主に居宅介護支援事業所や施設で働く。国家資格ではないが、都道府県が実施する試験に合格し、研修を受けることで資格取得となる。
試験日程や条件:
毎年1回(10月頃)実施。受験資格には実務経験が必要(介護福祉士として5年以上など)。