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8.襲撃前日

「では本当なのだな…隠れながらも魔物の群れが王都に向かっているのは?」

 王はため息を吐いた。2週間前に比べて、体も痩せて髪の毛も減った。


「は!複数の偵察班が確認したので間違いはございません。」


 王はシルヴァンの言葉に胃腸も痛くなる。最悪の事態だった。

「で…勇者候補達は大丈夫なのか?前回聞いた時は…」


「はい!無事にクロエがリーダーとして導いてくれました。

 アギトの進言があったからこそ出来たと、本人は謙遜していましたが…


 レベル20には少し足りない者もいますが、対策は完璧かと!」

 シルヴァンは自信満々に王に報告した。


 王はその報告を聞いてパァっと明るい表情になった。

「おお…そうか…良かった。」


 しかし再び暗い表情に戻る。

「しかし……一番の心残りはアギトの件じゃな…


 重要な情報をこちらに提供してくれながらも、彼をレベル1のまま牢獄に入れてしまっていた…

 有能な彼を真っ先に勇者候補からはずしてしまった。


 恐らく彼は……」

 王はアギトの事を思い浮かべ、再びため息をついた。


「アギト…魔物側の作戦を知った彼が、何者かの罠にかかってしまった…ですか?」

 シルヴァンも王と同じ考えだった。


 その考えが途中から浮かびつつも、確証が得られないために前日まで王には言えなかった。


 しかし2週間前のアギトの報告のお陰で対策は完璧だと彼に感謝をしていた。


「恐らく…

 だからこそ明日の襲撃から王都を守る事が出来たら、ワシは彼に謝りたい。

 彼に償いたい。


 彼は…ワシの頭ひとつで許してくれるかの?」


「許してくれるまで、全力で謝り続けましょう!


 俺も一緒に土下座しますから。」


 王とシルヴァンは魔物の襲撃が終わるまで、アギトを牢獄に入れたままにすることにした。

 それがレベル1の弱い人間に対して唯一の安全策だと信じて…


◇◆◇


 一方そのころ牢獄では、アギトは襲撃を前日に控えて最後のお祈りをしていた。


「頼んだぞ、チュー太とネズ子達…


 世界の命運はお前達家族に託された…」


 アギトの元に20匹以上のネズミが集まる。そのアイテムの中で一番欲しい物を探す。

 前日まで結局手に入らなかったアイテムを…


 結局、前日まで彼は脱獄を行えなかった。

 それどころか、完全に祈らなければこの場から抜け出せない状況だった。


「あった…『折れた鍵』。良くやったチュー太、ネズ子!」


 チュー太とネズ子が大家族を形成してくれたお陰で、アイテムの収集効率が上がった。

 効率が上がったのは良いのだが、ネズミが拾って来るのは相変わらずゴミアイテムばかりだった。


 それでも低確率の錬成専用アイテムを手に入れる事が出来た。


「とりあえずスキルポイントを上げるアイテムは、その後一つしか手に入らなかった…」

 それでもアギトはスキルポイントが15ある。


 10日間の間、アギトはスキルポイントをどう使うかをしっかりと考えていた。


 アギトの所持アイテム

・腐った食材 ×21

・枯れた花  ×36

・鉄屑    ×98

・湿った火薬 ×12

・砂鉄    ×92

・木の屑   ×85

・虫の死骸  ×128

・折れた鍵  ×1


「俺が上げるスキルは『知識』…このゴミアイテムで錬成を行う。」


『知識』のスキルポイントを上げるメリット…

 それは『錬金術』が行えるようになる。ゴミの素材でも通常アイテムに錬成できる。


『知識』にスキルポイントを振る。

 これにより5、15ポイント目に錬成成功確率及び錬成速度アップ

 10ポイント目で手動錬成を行う事が出来るようになる。


 今の彼に必要な物。武器と鍵、そして補助アイテム。

 特に武器と鍵は必ず必要になる為に、ここで失敗すれば全てがパーになる。


 ここまで繋いできた全てを無駄にしたくはなかった。


 例え本来であれば絶対にしないスキルポイントの割り振りも成功するために行う。


「さて…これで早朝には脱獄が出来る。」

 失敗などは考えていなかった。


彼が一番欲しい鍵の錬成成功率が60%、武器(鉄のナイフ)の錬成成功率が70%、回復アイテムの成功率が80%…


こうして夜の間、自身の知識を思い出しながら道具の錬成に明け暮れた。



 そして最後の朝が来る。

「朝だ!起きろ…」


 看守が囚人達を起こして、いつも通り大広間に連れて行こうとする。


「おい、いつまで寝ているつもりだ!」

 看守は一度で目覚めないアギトに苛立ちを覚えているようだ…


 本来ならば蹴りをいれるのだが、王からの伝達の為に彼を丁重に扱えと指示を受けていた。


「起きろ。」


「え…あっ…すいません。爆睡していました。」

 アギトは起き上がった。そしていつも通り、手錠を外してもらい大広間に向かう。


 看守はその日まで毎日アギトの顔を見てきた。いつも通りの朝のはずだ。

 それでも今日のアギトはどこか様子が違った気がしていた。


 アギトはいつも通り大広間まで歩いていく。普段に比べて彼の足取りは軽かった。


 いつも通り囚人達が抜け出していないかを看守は確認し、朝食を囚人達に与える。

 そして朝食を終わらせて、自身の牢獄に戻る。



「2週間の間、世話になったな!


 チュー太、ネズ子!大家族と一緒に幸せに暮らせよ!」

 アギトはネズミの大家族に別れを告げる。ネズミはどこか悲しそうな表情を浮かべている。


 ネズミはアギトが別れを告げると、餞別のつもりかアイテムを渡してくれた。


「最後までありがとうな!」

 アギトは少し涙ぐみながらも、餞別の品を受けとる。


「…………チュー太君?ネズ子ちゃん?これはどういうことかな?」

 受け取ったアイテムを見て驚きを隠せなかった。


 アギトが受け取ったアイテム…それは『スキルポイントの果実』『監獄の鍵』


「監獄の鍵…


 ねぇ…それもっと早く手に入れて欲しかったなぁ!」


 アギトはネズミの大家族に向かって、無言の圧力をかける。

 ネズミ達は少し怯えているようだった。


「それでもありがとうな!お前達のお陰で、この世界を救うことが出来る。」


<ガチャ>

 アギトは両足の拘束具を外して、監獄の鍵を開ける。


<ガチャ>

 牢獄の扉が開く。


「さて…それじゃあこの世界を救う冒険を始めますか!」



 アギト・ノアール

 ステータス

HP 10

MP 5


攻撃力6

魔力5

防御力5

素早さ6


 スキル

・友情5

・知識15


 レベル2

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