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『第14話 裏金庫は重かった』/7・女の恥じらい

 ウブの東南東、第4繁華街の一角にある3階建ての建物。1階が「ファウロ・ベーカリー」というパン屋になっているこの建物の3階は衛士隊の女子寮であり、ルーラ、クイン、スノーレの3人が住んでいる。

 夜、そろそろ店が閉店の準備を始める頃、ルーラ達3人が裏にある外階段脇の出入り口から店内に顔を出す。

「ただいまぁ。パン残っている?」

 契約により、朝夕は店のパンをある程度タダでもらえることになっている。もっとも、どのパンをどれだけにするかは店側が決めることになっている。朝は焼きたてが食べられるが、夜はどれになるかは売れ行き次第だ。

 店の主人で売り子のリムル・ファウロが

「あるよ。どれにする」

 言いつつ顔をしかめる。

「ちょっとあんたら、何か匂うよ」

「ああ。今日の捕り物は地下水道だったから」

 言いつつ3人とも自分の腕を嗅ぐ。3人とも私服に着替えているが、戦いで髪や体に地下水道の汚水を浴びている。

「そんなに匂うかな」

「匂う」

 厨房からパン職人でここの婿養子であるルーベント・ファウロが姿を出す。イントルス以上に愛想のない男だが、彼の焼くパンは評判が良い。彼がいなかったらとっくにこの店は潰れているだろう。

「ここは食い物を扱っているんだからね。汚水まみれの女はお断りだよ。部屋で体を綺麗にしな。パンは後であたしが持って行ってからさ」

 仁王立ちするように腕を組み、3人を睨みつける。こうなっては3人に勝ち目は無い。仕方ないと出入り口に戻る彼女たちに

「ちょい待ち」

 リムルが厨房に戻り、すぐに出てくる。

「ほら、年頃の娘なんだから身だしなみぐらい気にかけな。下水の匂いのする女なんか、誰も相手にしてくれないよ」

 石鹸を放り投げてよこす。食べ物を扱っているだけに3人が普段使っているものに比べなかなかの上物だ。

 そこへ仕事帰りらしき疲れ顔の男が1人入ってきた。

「いらっしゃいませ。あいにく今日の焼きは終わりまして、ここに並んでいるものだけになるのですが」

 愛想のいい顔で出迎えるリムルに、3人は邪魔をしないようそそくさと出て行った。


 30分ほど経ってリムルがパンの袋とシチューの入った小鍋を手に3階に上がる。

「お待たせ。シチューも持ってきてあげたわよ」

 寮の扉を開ける。そこは簡単に言えば3LDK。扉を開け、物置の横を通ると簡単なキッチン。その奥に共有空間であるリビング。そこからそれぞれの個室になる3つの部屋につながっている。トイレは共有のが1階にあり、シャワーはない。

「助かったぁ。お腹空いた」

 リビングの3人が顔を向ける。

「あんた達、なんて格好だい。年頃の娘がそろってはしたない」

 3人はテーブルに石鹸を入れた湯の入ったバケツを置き、それを浸したタオルで体を拭いていた。当然ながら3人とも裸。スノーレは上半身だけ脱いでいるが、クインとルーラは下も脱ぎ全裸である。しかも夏の暑さのせいか窓を開けっぱなしだ。

「すみません。暑くて」

 申し訳なそうなルーラと違ってクインは悪ぶりもせず

「せめて風通しぐらいよくしないと。スノーレは魔力ケチって冷気魔導使ってくれないし。暑さ寒さを快適にする研究しているくせして」

 リムルが女性だからでもあるが、クインは全裸のまま、堂々と仁王立ちして体を拭いている。

 スノーレは衛士ではあるが魔導師として研究を続けている。彼女の研究は屋内の冷暖気を安定させそこに住む人達の命と健康を守ること。私たちの世界で言えばエアコンの実用化研究である。特に彼女は幼い頃、肉親が暖炉の火が絶えて凍死したことから暖房の実用化を目指している。彼女が炎や冷気の魔導に精通しているのはそのせいでもある。

「いっそのこと、リビングだけでも壁を凍らせてくれれば涼しくなるのに」

「風邪引くわよ。急激な温度変化は体に悪いわ」

 スノーレは石鹸水で濡れたタオルで拭き終わると、今度は乾いたタオルで体をから拭きする。裸なのは上半身だけだからまだ他の2人に比べて露出は低いが、それでも揺れる乳房を隠すこともせず体を拭いている。

「これだもん。リムルさんも何とか言ってくださいよ」

 クインが全裸のまま足を開いて股間にタオルを何度も打ち付ける。やってることはただのオッサンだ。

 あきれ顔のリムルは無言のまま、熱々のシチューが入った鍋を、クインの頭に置いた。

 じゅっ!


(第14話 終わり)


 13話で1度区切って仕切り直しの14話。最近のアニメで言えばシーズン2になるのでしょうか。もっとも私はテレビアニメと言えば半年から1年がほとんどという時代で育ったので、本作も全50~52話ぐらいいければと考えています。もともと本作は「ベルダネウスの裏帳簿」の前日談「ルーラが衛士を勤めた1年間」の物語ですし。

 仕切り直しの理由は13話のあとがきでも書きましたが、50話前後を1作にまとめると長くなりすぎるからです。ただでさえ1~11話は1話1章「長さよりもキリの良いところで」と考え、投稿した結果ですが、次第に隙間時間に読み進めるのは不適切と考えるようになりました。

 それで12話から1話を数回に分けて投稿するようにしました。しかしこれはこれで章数が多くなります。自分が読むときも、何か面白そうなのはと探したとき、いきなり完結に200章も300章もある作品だとつい尻込みしてしまいますし。文字数を見れば1章1章はそれほど長くないと見当が付くのですが。

 この辺は私自身まだまだ「1作品(1章)あたりどれぐらいの長さが良いのか」の迷いがあります。とりあえず今回の14~26話(予定)はこのやり方で投稿していくつもりです。


 仕切り直しだからと言うわけではありませんが、第1話から引き継いだものが2つ。クインと対戦した「名乗る前に退場する剣士」最初は度々登場しては名乗りを上げる直前に不幸な事故(作者のいぢわるとも言う)が起こってリタイヤする間抜け役として考えたのですが、結局だしそびれてしまいました。

 そしてもう一人が今回の敵ショーセ・ツ・カニナロ。第1話の敵ショーセッカ・ニ・ナロウに続く「小説家になろう」のもじりネームです。私はこういう駄洒落ネームが大好きです。並行して進めている「未亡人魔王ボンキュボンの城」などは登場人物のほとんどが駄洒落ネームですし。

 キャラも今まで出番が全くなかった衛士隊総隊長ミコシが登場。かつがれる奴は頭の中身が軽い方が良いの言葉通り、かなりのお調子者で手柄大好き、にっこり笑って部下の手柄を横取りするがそれといっしょに余計なことも押しつけられます。ノリの良いお気楽社長みたいな感じでしょうか。

 ラストは単なるお遊びです。主人公3人が女性で時期が夏なので読者サービスとばかりに。もっとも、クインが全裸で股間にタオルパンパンは悪乗りしすぎたかとも思いますが。ちなみにこれは昭和のオッサンが銭湯で風呂上がりによくやっていました。

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