#9 突然の出来事(3)
13歳の頃に、親友と出会った。
突然の出来事が、地球にいた、一人の少女の人生を、変えた。
リゾルと共に採掘現場へ忍び込んだアリーヤは、デッド・オリオンに過酷な労働を強いられるクラリクス星人たちの姿を目撃した。 岩山を掘り起こし、何かを探しているようだ。オリオン兵の監視のもと、クラリクス星人もロッソ星人も表向きは従順に、働いていた。リゾルとアリーヤは、カメラの光に従い、採掘現場の中央へ行くことにした。そこに、アリーヤの宇宙船があるのだ。
「デッド・オリオンの懐をいやすためだけに、どれだけの民が惑星ロッソで犠牲になったかわかるか?そこで私は、外部の惑星の民の助けを借り、この支配から逃れようと決意したのだ……」
クラリクス星人リゾルは、アリーヤにそう言い、採掘現場の中へと飛び込んで行った。オリオンの監視役が光線銃を向ける。リゾルは、先ほどのとは別の丸い物体を地面に置き、スイッチを押した。するとオリオンの監視役も、採掘現場のクラリクス星人たちも、うとうとと眠ってしまった。
「今だ、アリーヤ!」
アリーヤとリゾルはマスクを着けていた。採掘現場の中央へと駆け足で向かうアリーヤ。
敵の小型ドローン軍団が上空から攻めてくる。地上には大型のクモ型ロボットがたくさん現れ、光線をうってくる。その向こうに、アリーヤの宇宙船の姿があった。アリーヤのカメラがピンク色に光ると、宇宙船のライトもピンク色に輝いた。宇宙船の表面に張り付いている、オリオンの小型ロボットが電磁波を放つ。宇宙船は離陸できずにいる。アリーヤはオリオン兵の落とした光線銃を手に取り、クモ型ロボットのビームを避けると、岩の木陰に隠れた。 リゾルも光線銃を手に持ち、クモ型ロボットの攻撃に応戦する。
「当たれっ!!」
アリーヤは使い慣れない光線銃を、オリオンの小型ロボットに向ける。やはり手は震えている。
「震えるな、震えるな!私の手!!」
アリーヤはロボットに光線を発射した。が、的は外れ、光線はロボットのすぐ横の宇宙船の表面に命中した。上空のドローン軍が、アリーヤをターゲットにし、銃口を向ける。
「逃げるんだ、アリーヤ!」
リゾルの叫びと共に、アリーヤは光線銃をもう一度発射した。宇宙船に張り付いている小型ロボットに命中すると、ドローンとクモ型ロボットは機能停止し、ドローン本体が雨のように空から落ちてきた。
小型ロボットは宇宙船の表面から転げ落ちると、地面にぶつかり砕け散った。
「デッド・オリオンは、ここで何を探していたんだろう?」
採掘現場に置いてあるボロボロのカゴに、宝石のように輝く赤い石が入っていた。アリーヤはカゴにたくさん詰まった赤い石をにらみ、それを写真に撮った。
イトウ・マイクは、オリオン基地の地下室に閉じ込められていた。
「なんとかここを抜け出さないとな。生きてろよ、アリーヤ」
マイクはそう言って、あぐらをかいて座っていた。
地下室の扉が開く。
「食事だぞ、地球人」
オリオンの兵士が近づいてくると、マイクは兵士にとびかかり、兵士の光線銃を取った。兵士を気絶させ、自身の手錠を光線で破壊すると、マイクはオリオンの兵士の姿に着替えた。
マイクは油断しないように、兵士の姿で食事を運ぶふりをして、地下室の数ある牢屋らしき部屋の入り口を、光線銃で次々と破壊した。
「アリーヤ、どこだ?」
1999の個室。マイクの行動は、すぐに1999に知れ渡った。
「そいつを始末しろ、急げ!」
1999の机の上には、腕時計型の何かがあり、それが赤く点滅した。
「地球人の持ち物か。これは何だ?」
「赤い鉱石の説明も、していただきましょうか」
個室の入り口に、アリーヤが立っている。アリーヤは右手に持った、赤い鉱石を提示した。
アリーヤの周りには、リゾルをはじめとするクラリクス星人やロッソ星人たちが大勢いる。
「あなたの部下は、外で眠っています。デッド・オリオンは赤い鉱石を使って何をしようとしているんです?」
1999は光線銃を手に取ろうとするが、けたたましい怪獣の鳴き声を聞いて振り返る。部屋の窓から、アリーヤの宇宙船が見える。アリーヤは光線銃を取り上げると、1999に言った。
「私の船は自動操縦ができます。これ以上の非人道的行為は許しません」
追い詰められた1999は、耳に着けた通信機をさわろうとするが、通信機に光線が命中し、爆破された。その場に倒れこむ1999。アリーヤの隣に光線銃を構えたマイクが駆け付ける。
「ま、まってくれ!説明するから、乱暴は止めてくれ!」
司令官1999によると、赤い鉱石はオリオンにとって必要な資源であり、宇宙船を稼働させる燃料として、長年使用しているとのことだった。
デッド・オリオンの支配から解放された惑星ロッソは、アリーヤに名誉ある勲章を手渡した。
「ありがとう、アリーヤ。きみたちは旅立つようだが、困ったときには連絡してくれ。」
リゾルは、アリーヤに感謝の言葉を述べた。アリーヤはニッコリ微笑んだ。
「記念撮影するよ!」
アリーヤはそう言って、クラリクス星人とロッソ星人、マイクとアリーヤ自身の入った集合写真を撮った。
そして地球で言う2日後、ピンク色に光る宇宙船は、惑星ロッソから旅立った。
13歳の頃に、親友と出会った。
突然の出来事が、地球にいた、一人の少女の人生を、変えた。
つづく……
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