#8 突然の出来事(2)
12歳の頃を、よく覚えてる。悪い事が起きると前向きになれない自分がいた。みんなそうかもしれないけど、自分一人が不幸で、希望が無いと、そう思い込んでいた。
惑星ロッソ。砂漠と岩山が目立つ星。デッド・オリオン司令官・ナンバー1999は、アリーヤ・カルティエを自身の城の個室に招いた。
「座りたまえ」
アリーヤは席についた。
「私はナンバー1999。惑星ロッソの最高責任者だ。デッド・オリオンの所有する惑星に、きみたちは無断で入った」
「入っていません。惑星の近くまで来たら、撃ち落とされたんです」
アリーヤはすかさず反論をした。1999は話題を変えた。
「きみの持っている光を出す箱には、治癒能力があるそうだね。きみの仲間の傷が治っている事を、私の部下が確認した。」
「そんな能力があるなんて、私は知りませんでした。マイクはどこにいるんですか?」
アリーヤの質問に、1999はムッとした。
「質問をするのは私だ」
部屋に彼の部下が入ってくる。
「労働階級の一部が反乱を起こしました!」
「すぐ対処しろ」
そう言われ、部下は退出した。
「秩序を乱されては困るんだよ。きみの宇宙船のせいだ。クラリクス星人が暴れている」
「クラリクス星人?ここはロッソ星じゃないの?」
アリーヤは聞き返す。
「知らずに来たのか?ここはロッソ星。我らがデッド・オリオンの植民惑星だ。」
アリーヤは驚いた。
「別の星から連れてきてるの?」
「そうとも言えるな。普段は従順に働いてくれるんだよ。逃げ出せると思い込まない限りはね」
ロッソ星はデッド・オリオンに制圧され、住民は重労働を強いられた。やがて、ロッソ星人が数を減らすと、一番近い惑星クラリクスから、クラリクス星人を新たな労働力として連れて来たのだと言う。
「非人道的な行為は今すぐやめてください!」
「地球人ごときが何を言う?」
1999は、部下に命じてアリーヤを牢屋に入れろという。部下二人がアリーヤを連れ去ろうという時、一人がカメラを取り上げた。すると、カメラがピンク色に発光し、1999の部下は思わず、カメラとアリーヤの腕を手放した。カメラを手でキャッチし、部屋から逃げるアリーヤ。長い廊下を走っていく。
「追え!あいつを追うんだ!」
アリーヤはカメラの光の指し示す方角を走る。行く手を阻む兵士たち。カメラを持ったアリーヤは、敵の光線銃のビームをすべて避け、その場で高くジャンプした。
ピンク色の光のバリアに包まれたアリーヤは、頑丈な城の天井を突き破り、そのまま外の空へ飛び上がり、惑星ロッソの成層圏にまで達した。
カメラの光が消えると、アリーヤはハッと我に返る。
「ちょっと、ここどこ?いっ、息が……!!」
アリーヤはそのまま急降下し、岩山のふもとにゆっくりと着地した。地面にしゃがみ込むアリーヤ。
「くるしい……」
アリーヤは息を吸い込んだ。
「マイクを助けなきゃ」
すると、アリーヤをそっと木陰で見ている宇宙人が目に入った。宇宙人はひどくおどろいているように見えた。アリーヤは息をととのえた。
「Hi,私はアリーヤ。ここはどこ?」
アリーヤは声をかけた。相手は小さな子どもくらいの大きさで、毛のない水色の頭部に黒い目をしている。
「ロッソ……」
「あなたの名前は?」
「リゾル……」
「リゾルね。よろしく」
リゾルは空を見上げ、そしてアリーヤの顔を見た。
アリーヤのカメラがピンクに光り、光はリゾルの方角を指し示す。アリーヤはハッとする。
「もしかして、救難信号を出してくれたのはリゾルなの?」
リゾルはそれを聞いて、首をかしげるようなそぶりを見せて、岩山の方角へ走っていく。
「まって!」
アリーヤは駆け足で追いかけた。
リゾルは岩山の影に潜んでいる仲間に声をかけた。アリーヤを見たリゾルの仲間の宇宙人は、リゾルに対してある機械を手渡した。
丸いカプセル型のヘンテコな機械。リゾルがしゃべるとその機械から、言葉が聞こえてきた。
「私はリゾル。クラリクス星人リゾル。我々はデッド・オリオンに対抗する。クラリクスとロッソは団結する」
アリーヤは驚いたが、手にカメラを握り、返答した。
「デッド・オリオンの非人道的な行いは、必ず止めさせましょう。私は地球人の、アリーヤ・カルティエです!」
12歳の頃、自分一人が不幸のどん底にいると、アリーヤは思い込んでいた。アリーヤはその頃を思い返すと、リゾルたちを救おうと、心に決めたのだった。今のアリーヤは、12歳のその頃に比べると、少しだけ、前向きになれたのかもしれない。
アリーヤはリゾルたちに、自分の宇宙船の事を言った。
「あの宇宙船を取り戻せれば、デッド・オリオンたちをこらしめて、クラリクス星もロッソ星も取り戻せる気がするの。」
アリーヤのカメラの光は、地球でいう東の方角を指し示した。リゾルたちはアリーヤの意見に賛成した。
一方その頃、惑星ロッソのデッド・オリオン基地。司令官である1999は部下に対して激怒した。
「地球人ごときも捕まえられんとは!デッド・オリオンの恥さらしめ!」
1999は一通り怒ると、こういった。
「まあいい……地球人はまだ、赤い鉱石の事を知らん。知らないうちに捕らえるのだ!」
つづく……
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