#21 フロルの心配事
惑星ジェリス。巨大な都市が並び、車が空を飛ぶこの惑星は、1万年前から平和な日々が続く、中立惑星。色んな惑星から地球人含む種族が共存しているにも関わらず、戦争とは無縁のこの惑星に、ピンク・スコーピオンの小型シャトルが一隻舞い降りた。フロル・ベレゾフスキー隊員は、惑星ジェリスのとある飲食店に入った。
「いらっしゃいませ、予約客が来るなんて珍しいわ」
「元気か?トム」
「久しぶりね、フロル。あたしは元気よ。そっちは?」
「まぁまぁだな。レベッカともうまくやってるよ」
「あの子もまだ居るのね。懐かしいわ」
「トム、お前もいつでも戻ってきて良いんだぜ」
「宇宙戦争は終わったのよ。ジェリス星でそういう勧誘持ちかけるの、止めてちょうだい」
「冗談だよ。店長が居なくなったらこの店が困るからな。それに、おれたちは救助隊だ。宇宙を平和にする為に働いてる」
「知ってるわよ。あたしもそこに居たんだから。団体客も歓迎よ。今度、アリーヤ達も連れてみんなで来なさいよ。注文票はそこにあるから、適当に選んでちょうだい」
フロルがこの店に来たのは訳があった。彼が店を出て、トムがシャッターを閉める時間。
「フロル、まだ居たの」
「ちょっと話がしたくてね、トム」
「あたしを口説こうったってそうはいかないわよ」
「まじめに聞いてくれ。レベッカの話だ」
そう聞いて、トムは真顔になる。
「あの子に何かあったの?」
「いや、そうじゃない」
「ちょっとそこの店で話しましょ。良い店、知ってるの」
場所を移動して、トムとフロルは話を再開した。
「あの子を救助したのはフロル。あなたよ」
「おれたち2人で救出したんだ。あの頃のレベッカはマクア星の奴隷商人に売られる直前だった。いつも通り会場ごとぶっ壊して、売られる寸前の全員を救出した。レベッカはピンク・スコーピオンの仲間になりたいって言って、おれとお前が面倒を見た」
「そうね」
トムはそれだけ言った。フロルは話を続けた。
「あいつの性格、知ってるだろ?喧嘩っ早くて一人で行動して勝手に捕まって、それをおれらかマイクかアリーヤが助けて……の繰り返し」
「あの子の将来が心配なの?」
「いや、最近のあいつ、ちょっと変なんだよ。前はさ、よくイトウ・マイクに喧嘩ふっかけてモメてたのに、今は静かなんだよ。大人しいのは別に良いんだが、ちょっと心配でな。どう思う?」
トムは笑って言った。
「恋ね」
フロルが顔をしかめる。
「は、恋?」
「相変わらず鈍感ね。あの子はイトウ・マイクに恋をしてるのよ。何かキッカケがあって、恋におちたに違いないわ。あたしの勘よ」
「ふーん、勘ねぇ」
「心配しないでいいわ。ザークが消えてガルグイユも大人しくなったし、今は平和そのもの。その恋は実るわ。レベッカを応援してあげて!フロル!」
「了解だ、トム。ピンク・スコーピオンは別に恋愛は禁止されてない。マイク側が拒否らなかったら大丈夫だろ」
「あんなにカワイイ娘をマイクが逃がすわけないわ!大丈夫よ」
フロルはトムに礼を言った後、惑星ジェリスをあとにした。スコーピオン号に帰るとレベッカが、機関主任のマヤ隊員と一緒に待っていた。フロルはぶっきらぼうに言う。
「あんまりマヤの邪魔するんじゃねーぞ、レベッカ」
そう言われてレベッカは怒り出した。
「なんだよ、別に普通に話してただけじゃん!」
「いつも俺の邪魔してくるからそう思っただけだよ」
「フロルは可愛くないんだからさぁ!」
「お前もな。マイクとうまくやれよ」
レベッカは目を見開いて、あたふたする。
「アリーヤが言ったの?」
「ん、アリーヤ?おれはトムの店に行ってたんだぞ?」
2人の様子を見て、マヤ隊員はくすっと笑った。
「お似合いの部下と上司だね。フロル!あんまりレベッカをいじめちゃやーよ!」
フロルはきょとんとした。3人の隊員は、仲良く雑談しながらスコーピオン号内の食堂へ向かった。
つづく




