#15 制限時間
「よく聞け、アリーヤ。人は生まれながらに、戦う生き物だ」
雲一つ無い青空に、オレンジ色の砂漠。アリーヤは望遠鏡で空を眺めている。
「ねえパパ、冥王星から何か来るよ?」
「とうとう来たか……冥王星からの侵略者め!」
「冥王星からの侵略者……怖いよう……」
「起きろ、アリーヤ」
「え?」
「起きろ、アリーヤ!」
アリーヤは目を覚ました。そこはアリーヤの部屋だった。
「あれ……夢か」
アリーヤはベッドから起き上がる。
部屋の外から通信で話しかけるマイク。
「朝食の時間だぞ」
宇宙を航行する宇宙船。ピンク色の光をらんらんと輝かせ、惑星ブルームへと向かう途中だ。
宇宙船内のリビングに向かうと、テーブルに朝食のパンが置かれていた。
「こわい夢でもみたか?アリーヤ」
「あはは、最近は見るかも。何の夢だっけ……」
食事を済ませると、アリーヤは首にカメラをさげた。
アリーヤが通路を歩いていると、先日捕まえた宇宙海賊への朝食を、ケレヴィが届けようとしていた。
「まって、ケレヴィ。私が届けるよ」
アリーヤはケレヴィからパンの入ったカゴを受け取ると、宇宙海賊たちの部屋の方角へ歩いていく。
「物騒な宇宙だなぁ……」
アリーヤがそう言うと、背後に大きな影が横切る。
「誰?」
振り向くアリーヤ。誰もいない。
アリーヤが正面に向き直すと、そこに紺色のヘルメットを着けた何者かがいた。身長はマイクやアリーヤより高い。その人物の顔は、横長の黒いゴーグルの付いたヘルメットのせいで、一切わからない。アリーヤは後ずさりをした。
「油断は大敵だぞ」
その人物は言う。アリーヤがカメラを構えると、カメラのレンズはピンク色に光る。
「侵入者ね。どこから入ったの?」
アリーヤの問いを無視して、その人物は言う。
「デッド・オリオンに関わるな」
「あなたは誰?」
「誰でもない。ネイビー・ピューマだ」
ネイビー・ピューマと名乗る人物は、アリーヤと一定の距離を保ちながら、小型の光線銃を構えた。
「カメラを捨てろ」
「何ですって?」
アリーヤの声と共に、アリーヤの体はカメラによってピンク色の炎のような、オーラのような光に包まれた。僅かに怒りの表情を浮かべるアリーヤ。
「忠告します。私の船から出ていきなさい!」
ピューマはアリーヤの忠告に意にも介さない様子で、カメラに向かって光線を発射した。アリーヤは瞬時にそれをよける。光線はアリーヤが運んでいたパンに命中し、パンはその場から消滅してしまった。
すると目にも止まらぬ速さで、アリーヤはピューマのみぞおちに飛び蹴りをくらわせた。ピューマは吹き飛ばされ、後ろの壁に激突した。壁に大きなヒビが入る。
「それがお前の戦闘形態か」
「過剰な防衛ですよ。帰ってください」
アリーヤの炎のような、オーラのような光は、その勢いを強くする。
「カメラの発する力だな……」
ピューマは起き上がると、また光線銃を構える。
「カメラを捨てろ」
「狙いはカメラですか?」
「忠告だ。カメラを捨てなければ、お前は後戻りできない」
「どういう意味です?」
ふと、アリーヤはピューマのヘルメットについている、小さな装飾のような印が気になった。ゴーグルの下に、小さな涙のような印がついていた。
「……カメラを捨てろ」
アリーヤは高速でピューマの目の前に行き、怒り任せに自らの手刀でピューマの光線銃をたたき割った。バラバラになった光線銃の部品が、床に散らばった。互いににらみ合う両者。
突如、爆発音が鳴り響く。アリーヤのいる場所に、通信が入る。マイクからだ。
「宇宙海賊の乗っていた宇宙船が、オーバーヒートを起こした。こっちには影響ない。」
マイクの通信に、アリーヤは返信する。
「こちらアリーヤ。侵入者が一人いる。応援はいらない」
アリーヤが通信を切ると、目の前にいるはずのピューマが消えていた。あたりを見回すアリーヤ。マイクが駆け付ける。
「どうしたんだ、アリーヤ」
「確かにここに……侵入者が……」
首にさげたカメラの光が消える。すると、アリーヤは力が抜けたように倒れこんでしまった。
「しっかりしろ、アリーヤ!おい!」
マイクの呼び声が、次第に遠ざかっていく。
「2分30秒だ」
雲一つ無い青空に、オレンジ色の砂漠。仰向けに倒れていたアリーヤに、その人物は言う。
「お前の戦える時間はそれだけだ。カメラの力は万能じゃない。今すぐ捨てろ」
「この力は何なの……?」
アリーヤはカメラを持った手をかざして、その人物に訊ねる。
「お前を破滅に導く力だ」
そう言って、その人物は立ち去った。
「おい、アリーヤ!」
気が付くと、アリーヤは操縦室のイスに座っていた。マイクが必死に呼びかけていた。
「どうしたの?マイク」
「気が付いたか。きみは廊下で倒れてたんだぞ」
ふと、右腕を逆の手で押さえるアリーヤ。
「どうしたんだ?」
マイクのその問いに、アリーヤは数秒経ってから返事をした。
「腕が痛いの……」
宇宙空間。宇宙船の外から、アリーヤの船を見つめるネイビー・ピューマがいる。そのゴーグルが、ほのかに赤く光った。
つづく
©2023MizushibaRoku




